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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第258話 想定以上

大分市郊外――


集積所では夜明け前にもかかわらず作業が続いていた。


荷役兵達は接収したトラックへコンテナを積み込み、輸送隊の将校達は出発予定の車列を確認している。筑紫野方面へ送り続ける物資は膨大であり、この時間になっても休んでいる者はいなかった。


ここは前線ではない。敵襲を警戒する兵士はいても、実際に攻撃を受けると考えている者はほとんどいない。だからこそ、最初に空を裂く音を聞いた時も、それが何を自分達に向けられたものだとは理解していなかった。


ヒュゥゥゥゥ――


兵士の一人が顔を上げる。そして次の瞬間、集積所の中央で巨大な爆発が発生した。


「敵襲だ!」


誰かが叫んだ。しかし、その声は続く着弾音に掻き消された。




爆発の様子を目にしたエミッショ・コイン陸軍准将に焦る様子はない。兵站を狙うのは定石。彼女は淡々と部下に命令を下す。


「敵は、遠距離から狙っている。21歩兵科大隊は進軍し、敵の位置を見つけ報告せよ。302戦車大隊と連携して、敵の砲撃手を潰せ!」(コイン)


コインの命令は即座に実行された。


第21歩兵科大隊は集積所の外周へ展開し、砲撃の飛来方向を割り出そうとする。同時に、第302戦車大隊の車両が次々と始動した。兵站拠点とはいえ、最低限の機甲戦力は配置されている。戦車兵達は砲塔を旋回させながら出撃準備を進めた。


「砲撃地点を特定次第、直ちに反撃します」


302戦車大隊長の報告に、コインは頷いた。


「敵は我々を補給部隊と見ている」


そう言いながら地図へ視線を落とす。


「ならば好都合だ」


彼女は静かに笑った。


「補給部隊が弱いとは限らんぞ?」




「敵が動き始めました」


観測手が報告した。


浪城は双眼鏡を覗く。予想より早い。砲撃開始からまだ数分しか経っていない。それでも敵は混乱から立ち直りつつあった。


「対応が早いな」(浪城)


「補給部隊の動きじゃありません」(竹下)


隣の隊員が言う。浪城も同感だった。物資を運ぶだけの部隊なら、ここまで迅速に反撃準備はできない。


「敵は手練れだ。補給するだけの部隊ではないかもな」(浪城)




ここには、GATSスネーク班(火力支援)、第一空挺団第2普通科大隊、第7普連の1中隊・重迫撃砲中隊が控えていた


「浪城大隊長、敵がこちらに向かっています。砲撃地点を察知されたようです」(ハン)


浪城は双眼鏡を下ろした。


「出てくるのは想定内だ」


そう言った後で付け加える。


「だが、少し早いな」


「こちらも同じ感想です」(竹下)


「補給拠点なら、もう少し混乱していると思っていたんだがな。まあ、予定通り行くぞ。まずは、スネーク班と、7普-重が敵へ砲撃、撃ち漏らした敵を、俺達と7普-1が叩く」(浪城)


「了解」




第21歩兵科大隊は街道沿いを前進していた。砲撃地点を特定し、敵砲兵を排除する。それが与えられた任務だった。しかし先頭小隊が丘陵地帯へ差し掛かった瞬間だった。


パンッ――


乾いた銃声が響く。


先頭を走っていた兵士の頭部が弾け飛んだ。


「伏せろ!」


小隊長が叫ぶ。直後、左右の林から一斉射撃が始まった。第7普通科連隊第1中隊だった。


「撃て!」


自衛隊員達は準備していた陣地から射撃を浴びせる。前進していた第21歩兵科大隊は突然の待ち伏せに足を止められた。だが、その報告はすぐにコインの元へ届く。


「第21歩兵科大隊、敵と接触」


「予想通りだな」


コインは地図を見たまま答える。


「302戦車大隊を投入しろ」


「はっ」


「敵もこちらをただの補給部隊だと思っている」


コインは静かに笑った。


「ならば、その誤解を後悔させてやれ」




タタタタン! タタタタン! タタタタン!


浪城大隊と7普-1は、順調に敵を倒していた。


待ち伏せは完全に成功している。街道へ飛び出してきた帝国兵達は次々と撃ち倒され、生き残った者も道路脇の側溝や林へ飛び込むのが精一杯だった。


「右前方、敵小隊後退中!」


「追い込め!」


第21歩兵科大隊は大きな損害を受けていた。待ち伏せは成功している。このままなら敵反撃部隊を撃滅できるはずだった。


浪城は双眼鏡を覗いた。


「悪くない」


少なくとも敵の反撃部隊第一陣は封じ込めた。だが、その時だった。


ゴォォォォォ……


遠くから重低音が響いた。最初は誰も気付かなかった。しかし、その振動は徐々に大きくなる。地面が微かに震え始めた。


「……何だ?」


竹下が顔を上げる。その直後、観測手が叫んだ。


「戦車!」


浪城も双眼鏡を向ける。街道の向こう側。黒煙の向こうから数両の戦車が姿を現した。先頭車両の砲塔がゆっくりとこちらへ向く。


続いて2両目、3両目。さらに後方にも続いている。


先頭車両の砲塔上では、302戦車大隊長、オーサム・イッピアン少佐が双眼鏡を覗いていた。


「ようやく見つけた」


そう呟くと、自衛隊陣地へ向けて前進を命じる。


「なるほどな……」


浪城は小さく呟いた。


「補給拠点の警備戦力じゃないな」


浪城は双眼鏡を下ろした。


「最初から反撃を想定して戦車を置いていたんだろう。敵司令官は思った以上に慎重だ」


その瞬間だった。敵戦車の主砲が火を噴いた。轟音と共に砲弾が飛来し、第7普通科連隊第1中隊の陣地付近で炸裂する。土砂が吹き上がった。待ち伏せを受けていたはずの帝国軍が、今度は火力で押し返そうとしていた。


当初から、コインは補給拠点が狙われることを想定していた。だからこそ歩兵科大隊だけでなく、機甲戦力まで残していたのである。


「敵機甲部隊を確認! 複数両です!」


「やはりそう来たか」(浪城)


浪城は指示を飛ばす。


「重MATを前へ出せ。戦車戦になるぞ」(浪城)


無線が一斉に騒がしくなる。第7普通科連隊第1中隊は射撃を続けていたが、戦車相手に小銃は意味を持たない。


「重MAT班を前進させろ! 敵戦車を近付けるな!」(浪城)


「了解!」


自衛隊側も即座に対応へ移る。だが、その間にも302戦車大隊は速度を上げていた。主砲が次々と火を吹き、待ち伏せ陣地の周囲で爆発が連続する。土煙の向こうから現れた戦車の数を確認した竹下は、思わず息を呑んだ。


「思ったより多いですね……」


「ああ」


浪城は双眼鏡を握り直した。


「どうやら相手は、本当に補給部隊だけじゃなかったらしい」


大分方面攻略戦は、自衛隊の予想を超える戦いになろうとしていた。


登場人物紹介

エミッショ・コイン……ハイエルフの女性で、陸軍准将

オーサム・イッピアン……ヒト族男性で、第320戦車大隊長

浪城なみしり げき……第一空挺団第2普通科大隊長

竹下たけした 泰端たいたん……浪城の部下

ハン……GASTスネーク班所属

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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