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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第256話 宣戦布告

――門司区 自衛隊拠点地――


カラーノです。敵が攻めてくる気配は、今のところありません。現状は、お互いが睨みあっている状態です。警戒は解いていませんが、比較的穏やかな日が続いています。


私は今、哨戒任務中。周囲に敵の気配はありません。今日も、斥候に出ているリッチ班から、「敵の動きなし」と報告がありました。その時でした。


唐津湾の海軍基地を攻めていた部隊が戻ってきたのです。ですが、その顔は戦闘に勝利したとは到底思えません。戦死者も少なくなかったようで、特にスパイダー班は2人しか戻ってきていません。


「班長やサカラは戻っていないのか?」(テレル)


テレルさんの表情は悲壮感が頼っています。


「いえ、戻っていませんが…」(カラーノ)


「じゃあ、あの爆発は…くそっ」(テレル)


カバナー班長とサカラさんは、負傷したベリンゴンさんの搬送のため、先頭を走っていたようでした。ですが、博多で敵兵と遭遇した部隊は、散り散りになってこの拠点を目指していたようです。


カバナー班長とサカラさんへの連絡は、こちらでもしていましたが、応答がありませんでした。無線の故障はよくある事なので、様子を見ることになっていましたが、状況が変わりました。行方が分からないということで、正式に行方不明扱いとなりました。


「……」


会議室では、重い沈黙が支配しました。これまで、大きく貢献してきたスパイダー班が事実上、壊滅したのです。


「スパイダー班は本日付で戦闘継続不能と判断する」


中隊長は資料から目を離しませんでした。


「テレル、ナルクン。お前達はリッチ班へ編入だ」


中隊長は、淡々と伝えます。これから大きな戦いが控えている以上、冷静に対処していくしかありません。動揺している余裕などないのです。


テレル副班長の拳が震えます。反論しようと思えば出来たでしょう。ですが、班長もサカラさんもいない。ユノラフさんやタックさんも帰らぬ人となったのです。今さらスパイダー班を名乗る意味など残っていませんでした。


「陸将、我々は攻める準備が出来ています。邪魔な海軍基地も墜としました。こちらから仕掛けましょう」(浪城)


浪城大隊長が具申します。私もそう思います。受けに回ると、こちらが圧倒的に不利です。攻めるべきです。


「うむ、作戦を立案し、仕掛けよう。」(桂)


数日の間、上層部で作戦の立案がなされました。その間、私達は哨戒任務と装備の手入れや補給を行いました。近いうちに出撃する。緊張がピークにきます。


その時でした。基地の外で、何かが投げつけられた音がしました。


「何だ?」


塹壕の中に何かが投げ込まれたようです。それは、見覚えのないスーツケースでした。


「爆発物かもしれない。アイアン班を呼べ」(BJ)


「罠はなさそうだ。開けるぞ、皆は伏せていてくれ」(ガジ)


アイアン班・ガジ班長代理がスーツケールの鍵を開けます。


「!?」(ガジ)


「うっ……」(ガジ)


スーツケースを開けたガジ班長代理は、その場で嘔吐してしまいました。


「一体何が…」(カラーノ)


私は、スーツケースを覗くと…


スーツケースの中には、バラバラにされたカバナー班長の遺体が入っていたのです。


「う、うわあああああああ」(カラーノ)


私は思わず叫んでしまいました。もしかしたら生きている――そう信じていたカバナー班長が、亡くなっていたのです。しかも、遺体を切り刻むという死者への冒涜までされて……


「おい、何か付いてるぞ」(BJ)


BJ班長が手の取ったメモには、丁寧に日本語で書かれていました。


『飽きたから返す』


それは戦争の文言ではありませんでした。人間を玩具のように扱う者だけが書ける言葉です。


「性的暴行の跡もあるわね。犯された後に殺されたみたい…」(キャベージ)


キャベージ班長の報告は、不快感を更に高めるものでした。生きていても弄び、殺した後も弄び…私は、怒りと悲しみが込み上げてきました。喉の奥が焼けるように熱かったのを感じました。


「許せない…」(カラーノ)


「どれだけ辛かったことか……」(ローレライ)


ローレライ班長は、拳を強く握りしめます。力が入りすぎて、手から血が滲んでいました。


「ちょっといいかしら?」(フロリアン)


フロリアンさんが哨戒任務から戻ってきました。グーリエ星人を抱えて…


「そいつは?」(BJ)


「哨戒中に見つけたのよ。こいつが、スーツケースを持ってきたのね」(フロリアン)


そこには、両腕を切り落とされた狼型のグーリエ星人がいました。


「ああ、抵抗しないように腕は切り落としといたわ。足は自分で帰れなくなるから、折るだけにしといたけど」(フロリアン)


「丁度良い、そいつを貸せ」(BJ)


BJ班長は、狼男を受け取ると、別室へ連れていきます。悲鳴が聞こえてきたので、拷問をしているのでしょう。非人道的だと思いましたが、止める気にはなれませんでした。




――筑紫野市内――


「司令、全ての準備が整いました」


「そうか。よし、手筈通りにな。」(シガー・ラリグアン陸軍少将)


「はっ」


「司令!」


「どうした?」


「ファングが帰ってきました。しかし…」


ラリグアンが、ファングの下へ駆けつけると、そこには変わり果てた姿のハビ・ファング陸軍准尉がいた。両腕は切り落とされ、両足は有り得ない方向へ曲がっている。片目を繰り抜かれ、体毛を乱暴に毟り取られている。


ファングはかろうじて息をしていた。軍医達が駆け寄るが、その姿はあまりにも痛々しかった。ラリグアンは胸に貼られた紙を剥がした。


『宣戦布告だ、害虫共』


乱暴な字だった。だが、その内容は十分だった。


「全面衝突か。面白い」


ラリグアンは笑った。その笑みを見た参謀達は何も言わない。既に互いの後戻り出来る地点は過ぎていた。唐津湾分屯地は失われた。カバナーの遺体は送り返された。ファングもまた半死半生の状態で戻された。


血には血を。破壊には破壊を。それが双方の共通認識になりつつあった。


ラリグアンは門司区方面の地図を見つめながら静かに言った。


「次は我々が攻める番だ」


誰も異論を挟まなかった。戦争は、いよいよ次の決戦へ入ろうとしていた。


登場人物紹介

シガー・ラリグアン

種族・性別:獅子型獣人族の男性

所属・階級:陸軍少将、マコンベリムト北部方面軍長


ハビ・ファング

種族・性別:狼型獣人族の男性

所属・階級:陸軍准尉、マコンベリムト特殊作戦部隊の支隊長の1人

備考:博多に潜み、唐津湾を攻めた自衛隊部隊の偵察を行っていた


カラーノ……本作のヒロインで、GASTピットブル班所属

テレル……GASTスパイダー班の副班長、リッチ班へ編入した

ナルクン……テレルと同様、スパイダー班からリッチ班へ編入した

シルビア……GASTの中隊長

浪城なみしろ げき……第一空挺団第2普通科大隊長

かつら 蘭次郎らんじろう……九州奪還作戦の最高司令

BJ……GASTピットブル班の班長

ガジ……GASTアイアン班の班長代理

キャベージ……GASTスサノオ班の班長

ローレライ……GASTセイレーン班の班長

フロリアン……GASTピットブル班所属のオネエ


殉職したGATS隊員

カバナー:本名:神原じんばら こずえ

生年月日:1987年2月25日 / 出身:北海道

階級:三等陸尉 / 所属:GASTスパイダー班の班長

享年:35歳

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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