表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
252/261

第250話 包囲網を潜り抜け

スパイダー班は、知らぬ間に袋の鼠になりつつあった。


パシュッ――


再び水弾が飛来する。着弾したコンクリートが砕け、破片が飛び散った。


「右側にも展開しています!」(サカラ)


サカラが叫ぶ。カバナーは双眼鏡を覗いた。


岸壁沿いに進んでいた水棲種兵達が、少しずつ陣形を広げている。こちらを攻撃するだけではない。逃げ道そのものを潰そうとしていた。


敵司令官は無能ではなかった。基地機能の維持は諦めている。その代わり、自分達をここで仕留めることに全力を注いでいる。それは正しい判断だった。


「班長、このままでは包囲されます」(テレル)


「分かっている」


カバナーは短く答えた。燃料施設は炎上中。港湾設備も破壊された。艦艇も次々と戦闘不能になっている。作戦自体は成功している。だが、成功したからといって生きて帰れる保証はどこにもなかった。


司令部棟の屋上では重機関銃が火を吹いている。港側では新手の敵部隊が前進を続けている。このまま挟撃されれば、いずれ押し潰される。カバナーは地図を思い浮かべた。


敵は包囲を完成させようとしている。ならば、その前に突破するしかない。


「司令部へ突っ込む」


一瞬だけ沈黙が流れる。


だが誰も反対しなかった。ここまで来て引き返す道は残されていない。


「敵が包囲を完成させる前に司令部を潰す」


カバナーは小銃を構えた。


「突破するぞ」




別の場所、弾薬庫付近では、特戦群第2中隊が、残敵の掃討を行っていた。


弾薬庫の爆発によって周囲の建物は半壊している。帝国兵達の抵抗も散発的なものになっていた。


タタタン――


最後の1人が倒れる。


「周辺制圧完了」(パリジャン)


コーカーは双眼鏡を下ろした。


「被害状況は?」


「燃料施設炎上継続中。弾薬庫は完全に機能停止です」(パリジャン)


「港湾側も順調らしい」(ダコタ)


遠方では黒煙が幾筋も立ち上っていた。作戦目的の大半は達成されたと言っていい。


その時だった。無線機から激しい銃声が聞こえてきた。


『こちらスパイダー班!』


雑音混じりの通信だった。


『敵増援を確認! 包囲されつつある!』


コーカーの表情が変わる。


『司令部周辺の敵戦力が予想以上です!』


カバナーの声ではない。テレルだ。それだけで状況の悪さが分かった。強硬突破を狙っていたが、敵の射線を潜り抜けることが出来ないでいた。


コーカーは即座に地図を広げた。司令部、海中部隊、そして港湾地区。頭の中で敵味方の配置が組み上がる。


「なるほど。敵は基地を捨てた」


コーカーは断言した。


「隊長?」(ダコタ)


「司令部へ兵力を集中している。燃料施設も港湾設備も守っていない。つまり敵は施設防衛を諦め、スパイダー班の撃滅に全力を注いでいる。」


「面白くないな」


コーカーは立ち上がった。


「スパイダー班が潰されれば、敵は司令部を盾に持久戦へ移る。そうなれば無駄な損害が増える。今の内に潰すぞ」


小銃を肩へ掛ける。周囲の隊員達が顔を上げた。


「全隊移動。目標、司令部」


「スパイダー班を支援する」




ルゲティは岸壁の陰から前方を見た。敵は確実に押し込まれている。司令部方向からの射撃と海中警備大隊による側面攻撃。二方向から挟まれた敵は、徐々に移動範囲を狭められていた。


「包囲できそうです!」(ルゲティ)


思わず声が弾む。ナイティコも双眼鏡を覗きながら頷いた。


「このまま前進する。司令部守備隊と合流できれば勝てる」(ナイティコ)


少なくとも彼女にはそう見えた。敵は少数だ。どれだけ精強でも数10倍の兵力差は覆せない。


その時だった。


ドォンッ――


突如として後方で爆発が起きた。ルゲティは思わず振り返る。黒煙が上がっている。場所は自分達の左後方だった。


「な、何だ!?」


直後。


タタタタタタッ!


激しい銃声が響いた。悲鳴が聞こえる。味方の悲鳴だった。


「敵襲!」


「左側面だ!」


「違う、後方だ!」


無線が一気に騒がしくなる。ナイティコの顔色が変わった。


「後方に敵!?」(ナイティコ)


「馬鹿な!」(バリアブル)


バリアブルが怒鳴る。しかし次の瞬間、その顔も険しくなった。瓦礫の向こうから迷彩服姿の集団が飛び出してきた。正確な射撃だった。先頭を走っていた兵士が一発で撃ち倒される。さらに2人、3人と倒れた。


「奴等は!」(バリアブル)


ようやく正体に気付いた。燃料施設を破壊した連中だった。彼らは任務を終え、そのままこちらの側面へ回り込んできたのである。


「分隊を左へ回せ!」(ナイティコ)


「遅い!」(バリアブル)


バリアブルは即座に周囲へ命令を飛ばした。そして、自分だけは前へ出て射撃を始めていた。


「伏せろ!」


「遮蔽物へ移れ!」


しかし既に遅かった。海中警備大隊の陣形は前進を前提として広がっている。横から攻撃を受けることは想定していなかった。その隙を特戦群は容赦なく突いた。


ドドドドドッ――


軽機関銃が火を吹く。兵士達が次々と倒れる。包囲網の左翼が大きく後退した。


「後退するな!」(バリアブル)


軍曹は怒鳴りながら自ら射撃する。だが混乱は止まらない。


前方にはスパイダー班。左側には特戦群。どちらへ向いて戦うべきか分からなくなっていた。


ルゲティも思わず足を止めた。目の前で同僚が倒れる。血飛沫が飛ぶ。さっきまでは勝てると思っていた。だが今は違う。




その頃、瓦礫の陰でカバナーは状況の変化を察していた。左側面から激しい銃声が聞こえる。敵の射撃が明らかに減った。


テレルが無線へ耳を当てる。やがて小さく笑った。


「班長、特戦群第2中隊です」


カバナーも頷く。敵が混乱している今しかない。


「全員前進」


小銃を構え直す。


「包囲は崩れた」


その視線の先にある司令部棟にようやく辿り着けそうだ。


登場人物紹介

GASTスパイダー班

カバナー(班長)

テレル(副班長)

ユノラフ

サカラ

ナルクン


特戦群2中隊

コーカー(隊長)

ダコタ(副隊長)

パリジャン


第23海中警備大隊

ガッキー・ナイティコ……若き小隊長。半漁族

コール・バリアブル……経験豊富な鬼軍曹。ワニ族

シェイボ・ルゲティ……人魚族の一等兵

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ