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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第244話 葛藤

大規模戦闘が予想される中、スパイダー班は唐津湾にある海軍基地を攻めることになった。装備の手入れをしていたタックは、大きくため息をついた。


手入れを終えた小銃を脇に置き、水筒を手に取る。その時、窓ガラスに映った自分の姿が目に入った。183cmの長身。短く切った髪。鍛えられた肩幅。学生の頃から、女らしいと言われた記憶はほとんどない。


バレー部に所属していた頃も、男子と間違えられることは珍しくなかった。自衛隊に入れば尚更だった。


「お前、本当に女だったのか」


そんな言葉は何度も聞いてきた。だが、1人だけは違った。


GASTへ同期入隊したプラングリーこと、帳坪(ちょうつぼ) (ひらく)は、そんな彼女を男扱いすることはなかった。彼は優しかった。


プラングリーは、タックの体格や容姿をからかうことがなかった。むしろ長身であることも、鍛えられた身体も、当たり前のように肯定してくれた。


「自分がコンプレックスと思っていても、人が見たら魅力に映ることもあるんだよ」


酒の席でそう言われたことがある。あの時の表情を、タックは今でも覚えていた。


気付けば、訓練の休憩時間に彼を探していた。任務で別行動になれば落ち着かなかった。いつから好きになったのかは分からない。だが気付いた時には、その存在が当たり前になっていた。想いを伝えるつもりはなかった。ただ、傍で一緒に戦う事に幸福を感じていた。


しかし、それは長く続かなかった。プラングリーは死んだ。九州上陸の際、敵の銃弾からタックを庇い、そのまま海へ転落した。プラングリーは、海中で水棲種から攻撃を受け戦死した。


それからタックは自責の念にかられた。


もしあの時、自分が撃たれていれば……。そんな考えが頭から離れなくなった。


あいつの分まで――班長にはそう伝えたが、心に負った傷は簡単には塞がらない。任務は卒なくこなしていたが、彼女の精神は消耗していった。


「はぁ…」


溜息が止まらない。心臓の鼓動も早くなった。


唐津湾攻略は危険な任務になる。海軍基地そのものの規模は大きくない。しかし海中には水棲種が潜み、沿岸部には砲台も確認されている。上陸戦になれば、こちらも無傷では済まないだろう。


本来なら緊張する場面だった。だが、不思議と恐怖は薄かった。死に慣れたわけではない。ただ、自分の中の何かが欠けてしまったような感覚があった。プラングリーが死んだあの日から、自分は以前の自分ではなくなってしまった。


生きなければならない理由は分かっている。任務もある。仲間もいる。それでも時折、考えてしまう。もし次に死ぬのが自分だったら――その先に、あいつがいるのだろうかと。


「タック」


不意に声を掛けられた。


振り向くと、テレルが立っていた。


「出撃準備だ。班長が呼んでる」


「了解」


タックは立ち上がった。小銃を肩に掛け、最後にもう一度だけ窓ガラスを見る。そこに映るのは、長身のWAC隊員だった。プラングリーが綺麗だと言ってくれた、その姿だった。


「……馬鹿だな」


誰に向けた言葉なのか、自分でも分からなかった。タックは踵を返し、仲間達の待つ場所へ向かった。


登場人物紹介

タック……GASTスパイダー班所属。長身と男のような見た目がコンプレックスのWAC隊員

テレル……GASTスパイダー班の副班長

プラングリー……GASTスパイダー班でタックを庇って戦死した

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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