第242話 反攻の兆し
カラーノです。私達は今、博多に偵察へ行っていたリッチ班の報告を聞いています。
「博多に軍事施設はなかったが、グーリエ星人の住民がいた。あと、巡回中の兵士もいた。」(ネイマン)
「戦闘は?」(シルビア)
「何体かはこっそり仕留めておきました。」(ネイマン)
「(……またこの男は…)」(シルビア)
シルビアは呆れていた。この男は何もしないわけがないと思っていたものの、やっぱりじっとしていられなかったようだ。
「どのみち、グーリエ星人は殲滅させないと、この戦いは終わらない。殺せる時には殺すのは間違ってない」(BJ)
「(…お前もか…私の気も知らないで…)」(シルビア)
GASTの2エースはどうして、こうも戦闘狂なのか。シルビアは頭を抱える。ふと、ローレライと目が合う。ローレライは、同情的な目をシルビアに向けた。
「博多に軍事基地はなかったが、その先、唐津湾に海軍基地があった。規模は小さいので、雑兵は仕留めておいたが、司令官とは遭遇していない。位置的に潰さないと、壇之浦に向かうかもしれない」(ネイマン)
「それと…」(ネイマン)
ここまで淡々と報告していたネイマン班長の声色が、僅かに低くなりました。
「筑紫野あたりに軍が集結していた。街の奪還を狙っていると推測されるが、軍の規模は最低1個師団と見ていい」(ネイマン)
会議室の空気が変わります。
1個師団――
それは基地一つを攻略した程度では無視できない規模です。
「北九州に残っていた戦力だけで、その規模にはならないな」(浪城)
「俺もそう思う」(ネイマン)
ネイマン班長は筑紫野周辺を指差しました。
「若松や門司から逃げた敗残兵だけじゃない。最初から配置されていた部隊か、別方面から移動してきた部隊だ」(ネイマン)
シルビアが腕を組む。
「敵は再編に成功した可能性が高いな」(シルビア)
その時です。会議室の後方にいた布袋班の隊員が口を開きます。
「中隊長、大分方面の偵察情報です」(弁慶)
全員の視線が向く。
「大分市周辺でも敵の活動が確認されています」
室内が静まり返った。
「規模は?」(シルビア)
「不明です。ただし複数箇所で部隊移動を確認しています」(弁慶)
教授は地図を見る。筑紫野、そして大分。もし両地点にまとまった兵力が存在するなら話は変わる。
「最悪の想定をするなら……」(柄垣)
柄垣が低い声で言った。
「筑紫野から北上する部隊と、大分方面から北上する部隊が連携する可能性がある」(柄垣)
「挟撃か」(BJ)
北九州は確保した。しかし補給線は壇之浦海峡一本。もし敵に門司方面まで迫られれば、自衛隊側が逆に半包囲される危険があります。シルビア中隊長は、しばらく地図を見つめた後、静かに言います。
「我々は九州を奪還しに来た」
その声は落ち着いていました。
「だが敵もまた、九州を取り返そうとしている。次の戦いは攻略戦ではない。反攻を受ける側として戦うことになる」
シルビア中隊長は地図の前に立ったまま続けます。
「現時点で確認されている脅威は3つだ」
「第1に筑紫野の集結部隊、第2に唐津湾海軍基地、第3に大分方面の不明戦力だ」
会議室にいた全員が地図へ視線を向けます。
「敵の狙いはまだ分からない。しかし受け身で待つわけにもいかない」
教授が頷く。
「引き続き情報収集ですね」
「ああ」
シルビアも同意した。
「リッチ班には引き続き筑紫野方面の監視を依頼する」
ネイマンは特に驚いた様子もなく肩をすくめた。
「了解」(ネイマン)
「唐津湾についてはスパイダー班が動け。大分方面については布袋班が継続監視だ」
誰も異論はなかった。今必要なのは攻勢ではありません。敵がどこにいて、何を狙っているのかを知ることです。
会議が終わろうとした時でした。弁慶さんが一枚の報告書を差し出した。
「もう1つあります」
シルビア中隊長が目を通します。その表情が僅かに険しくなりました。
「どうした?」(BJ)
「関西方面からの連絡だ。増援部隊が門司へ到着する」
シルビア中隊長は、報告書を机へ置きます。室内の空気が少しだけ緩みますが、中隊長は変わりません。
「それでも足りるとは思うな」
北九州の奪還には成功しましたが、敵は新たに北九州を奪い返しに来ます。
登場人物紹介
ネイマン……GASTリッチ班の班長
BJ……GASTピットブル班の班長
シルビア……GASTの中隊長
教授……GASTタイガー班の班長
浪城 激……第一空退団第2普通科大隊長
柄垣 獅導……第一空挺団第3普通科大隊長
弁慶……GAST布袋班(指揮・通信担当)所属




