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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第238話 殿軍

門司区内――


帝国軍の抵抗は明らかに弱まっていた。


「押せ押せ!」


柄垣獅導三等陸佐の号令と共に、第一空挺団第3普通科大隊が前進する。


建物に立て籠もっていた帝国兵は次々と降伏し、あるいは撃破されていく。出村舜玖二等陸曹は銃を構えながら周囲を見回した。


「敵、後退しています」(出村)


「若松が落ちた影響だろうな」


柄垣が答える。司令部を失った軍隊は脆い。北九州の帝国軍も、いよいよ限界が近いように見えた。その時だった。後方へ撤退していた帝国兵達の動きが変わる。誰かの指示を受けたかのように、一斉に同じ方向へ移動を始めた。


「なんだ?」


柄垣が眉をひそめる。直後、遠方から銃声が響いた。


タタタタン! タタタタン!


今までとは明らかに違う、統率された射撃だった。


帝国兵達は慌てて逃げていない。援軍の後方へ整然と集まり、指示に従って後退を始めていた。


「新手か!」(壱岐)


前線の隊員が叫ぶ。交差点の向こうから現れたのは、今まで門司で戦っていた守備隊とは違う。前進も後退も無駄がなく、射撃の間隔まで揃っている。柄垣は一目で理解した。増援として現れたのは敗残兵ではない。戦うために送り込まれた精鋭だった。


「第1即応中隊第9小隊、展開!」


ボリス・ボウオウ陸軍大尉の声が響く。


「撤退部隊を護衛する! ここから先は我々が引き受ける!」(ボウオウ)


「了解!」


即応部隊の兵士達が素早く散開した。遮蔽物を利用しながら陣地を構築していく。その動きは今まで戦ってきた守備隊とは明らかに違った。


出村は即応部隊の動きを見ながら、小さく息を吐いた。


「精鋭です」


「ああ」


柄垣も頷く。即応部隊は無理に反撃を狙わず、遮蔽物を利用しながら組織的に後退と防御を繰り返している。敵を撃破することではなく、撤退する味方へ時間を与えることだけに集中していた。


「しかも時間稼ぎに徹している。相当訓練された部隊だ」


ボウオウは双眼鏡で撤退する味方を確認した。


負傷兵、通信兵、敗残兵…数百名規模の兵士達が北へ向かって離脱していく。それを確認すると、静かに命令を下した。


「全員、15分でいい」


ボウオウの命令に異論を唱える者はいなかった。即応連隊は、こうした緊急展開のために選抜された部隊である。撤退する主力へ時間を与えるためなら、自らが殿となることも任務の一つだった。


ボウオウは、自らも小銃を構えた。


「我々の役目は勝つことではない」


静かに言った。


「撤退部隊を鳥栖へ帰還させることだ」


双眼鏡の先では負傷兵達が北へ向かっている。


「一人でも多く生還させろ。ここは我々が支える」


即応部隊の抵抗は想像以上だった。交差点1つ進むだけで時間が掛かる。彼らは無理に勝負を挑まない。撃っては下がり、下がっては撃つ。完全に時間稼ぎへ徹していた。


「中隊長!」


通信兵が駆け寄る。


「撤退部隊の離脱完了を確認しました!」


ボウオウは双眼鏡を下ろした。遠方には鳥栖方面へ向かう車列が見える。


負傷兵も、敗残兵も。だが、全員ではない。それでも救えるだけ救った。


「十分だ」


ボウオウはそう言うと小銃を背負った。


「全隊後退」


即応部隊は一斉に動き出す。その撤収もまた見事だった。誰一人取り残されることなく、部隊は北へ消えていった。柄垣はその姿を見送る。


「逃がしたか」


悔しさはあった。しかし同時に理解していた。あれは敗走ではなく、組織的撤退だった。


登場人物紹介

ボリス・ボウオウ

種族・性別:鷹型鳥人族の男性

所属・階級:陸軍大尉で、マコンベリムト北部方面即応連隊、第1即応中隊長


柄垣えがき 獅導しど……第一空挺団第3普通科大隊長

出村でむら 舜玖しゅんく……第一空挺団第3普通科大隊所属

壱岐いき たつみ……第47普通科連隊第2中隊所属

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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