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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第237話 新たな刺客

教授はゆっくりと銃を下ろした。崩れた通路に静寂が戻る。ジーナもギラードも言葉を発しなかった。若松基地の指揮系統は、今この瞬間に消滅したのだ。その時だった。通路の奥から足音が響く。


「終わったか」(ネイマン)


姿を現したのはリッチ班だった。ルッテンとマッキーも続いて現れる。


教授は短く頷いた。


「ええ、終わりました」(教授)


ネイマンは倒れたフォンボスへ視線を向ける。


「そうか」とだけ呟いた。勝利を喜ぶ者はいない。この戦いでまた、仲間を失った。


教授は無線機を手に取る。


「こちら、タイガー01」


僅かなノイズの後、応答が返る。


「聞こえる」(モンソン)


教授は一度だけ深呼吸した。そして告げる。


「若松基地司令部を制圧した。代理司令官は死亡した」


「了解。皆に伝える」(モンソン)


教授は空を見上げる。夜明けが近付いていた。長かった若松基地攻略戦も、ようやく終わりを迎えようとしていた。




「皆に合流しよう。本来なら、ここからは掃討戦だが、こちらも消耗している。退却だ」(教授)


「そうだな。それがいい」(ネイマン)


「総員、F地点にて合流。このまま退却する」(教授)




F地点では、別行動をとっていた琴子濵、崔の姿もあった。


「E地点に合流できなくてすまない。」(琴子濵)


「いえ、無事なら何よりです。ですが、子津の姿がありませんが…」(教授)


「子津とは合流出来たが、その後、俺を庇って死んだ。俺達は、合流出来ないと判断し、付近の敵を掃討していた。」(崔)


崔が答える。目を真っ赤に腫らしていた。彼らの奮闘が、フォンボスへの援軍を遅らせていた。


「死者は4名か…。喜べない数字だ。だが、彼らの頑張りもまた、基地制圧に貢献した。彼らを弔う事はできない。せめて、黙とうを捧げよう」(ネイマン)




―門司―


フォンボスを討伐した事は、門司で戦っている部隊にも影響を及ぼした。


「敵の援軍が止まった?」(柄垣(えがき) 獅導(しど):二等陸佐)

※第一空挺団・第3普通科大隊長


「ええ、明らかに敵が減っています。」(出村(でむら) 舜玖(しゅんく):二等陸曹)

※第一空挺団・第3普通科大隊所属


フォンボスは、司令官代理となった際に、1つ大きなミスを犯していた。彼女は、エウクリッズ率いる第41市街地警戒連隊長を若松基地へ派兵してしまった。41市街地警戒連隊の担当区は、門司と小倉だった。41市街地軽微連隊が若松へ向かったことで、門司への援軍が滞った。若松では、第40市街地警戒連隊や第14歩兵科連隊といった部隊が健在だった。もっとも、通信障害で連絡が途絶えていたのだが。


「隊長! 敵の陸軍基地、海軍基地をそれぞれ制圧した模様!」


「成程そうか。皆、これはチャンスだ。敵を殲滅し、我々も進軍する!」(柄垣)


「了解!」




装備の確認をした後、ネイマンや教授等は、次の進軍先を見据えていた。


「おそらく、別部隊が墜とした海軍基地と若松の陸軍基地は、連動して北九州を統治していた。この2つを墜としたのであれば、本州侵攻を遅せる。そこで、次に狙うは博多だ。ここに軍が配置されていれば、本州侵攻に繋がる。ここを偵察し、新たな脅威を排除しよう」(教授)


「しかし、この人数で大丈夫でしょうか?」(米華(べいか) 翔舞(しょうま):三等陸曹)

※第47普通科連隊第1中隊所属


「援軍が必要なのは承知している。だが、時間をかける程、相手が優位になる。まずは、リッチ班に偵察をしてもらいたい。その間に援軍を要請する。」(教授)


その時だった。


パンッ――


乾いた銃声が響いた。誰も反応できなかった。ティムールの身体が倒れる。こめかみから出血していた。


「……え?」(米華)


「ティムール!」(チェール)


「即死だ…」(チェール)


全員が伏せる。


ネイマンは即座に周囲を見回した。


「狙撃だ」


冷静な声だった。しかし敵の位置が分からない。距離が遠い。しかも一発でティムールを仕留めている。ただの狙撃手ではない。


「方向は!?」(ギラード)


「不明!」(ルッテン)


ルッテンが叫ぶ。


距離がありすぎる。銃声の反響で方向すら掴めない。ネイマンだけが僅かに目を細めた。


「最低でも1キロ以上先だな」


「分かるんですか?」(マッキー)


「風向きと反響だ。少なくとも近くにはいない」


ネイマンは警戒を解かない。この距離から一発でティムールを仕留めた。相手もまた、只者ではない。




――数キロ離れた高台。


アイキキ・ダストクラウドは静かにスコープから目を離した。


「命中だ」


隣にいた観測手が頷く。


「頭部命中を確認。目標は即死と思われます」


ダストクラウドは再び遠方を見つめた。若松基地方面には未だ黒煙が上がっている。本来なら間に合うはずだった。


ヒアカッペも、フォンボスも……しかし全て終わっていた。


「遅かったか」


その声に怒りは無い。ただ事実を受け入れていた。


「大佐、どうしますか?」


部下が問う。ダストクラウドは小さく笑った。


「決まっている」


そしてスコープ越しにGASTを見据える。


「生存兵を回収し、後退する。ここで兵を失う意味は無い。だが――」


黄金色の瞳が細まった。


「あの連中の顔だけは覚えておこう。次に会う時は、こちらが狩る側だ」


登場人物紹介

柄垣えがき 獅導しど

生年月日:1980年8月9日 / 出身:千葉県

階級:二等陸佐 / 役職:第一空挺団第3大隊長


出村でむら 舜玖しゅんく

生年月日:1992年9月10日 / 出身:福島県

階級:二等陸曹 / 所属:第一空挺団第3大隊


米華べいか 翔舞しょうま

生年月日:1998年7月20日 / 出身:新潟

階級:三等陸曹 / 所属:47普連1中隊


アイキキ・ダストクラウド

種族・性別:獅子型獣人族

所属・階級:陸軍大佐で、マコンベリムト北部方面軍の副軍長


教授……GASTタイガー班の班長

ジーナ……GASTタイガー班所属

ギラード……GASTタイガー班所属

チェール……GASTタイガー班の副班長

ネイマン……GASTリッチ班の班長

ルッテン……GASTリッチ班所属

マッキー……GASTリッチ班所属

モンソン……GASTファルコン班所属

琴小濱ことこはま 大成たいせい……47普連1中隊の中隊長代理

さい 勇太ゆうた……47普連1中隊所属


戦死したGAST隊員

ティムール:本名:鬼目おにめ 悠良ゆうら

生年月日:1994年11月13日 / 出身:埼玉県

階級:二等陸曹 / 所属:GASTタイガー班

享年:27歳

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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