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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第236話 軍人の務め

無線機から流れていた雑音が途絶えた。その静寂が意味するものを、ステッラ・フォンボスは理解していた。地下通信指令室は陥落した。オリィ・カペラー少佐も、第13電子戦大隊第1小隊も、もはや戦闘継続不能だろう。


監視網は失われた。通信網も失われた。若松基地に残されていた最後の優位性が消えたのだ。フォンボスは静かに息を吐く。


「どうやら、そちらも仕事を終えたらしいな」


教授は答えなかった。代わりに銃口を僅かに上げる。互いに理解していた。この戦いに交渉は存在しない。どちらかが倒れるまで終わらない。


「降伏を勧めるつもりはないのか?」(フォンボス)


「勧めたところで、君は従わないだろう?」(教授)


「当然だ」


フォンボスは小さく笑った。不思議なことに恐怖はなかった。あるのは責任だけだった。


ヒアカッペは死んだ。エウクリッズも死んだ。カペラー達も戦った末に倒れた。ならば、自分だけが生き残るわけにはいかない。


「第8北九州統治軍は敗れた」


その言葉にジーナとギラードが顔を上げる。


だがフォンボスは続けた。


「しかし、帝国はまだ敗北していない」


天使族の白い翼がゆっくりと広がる。煤と血に汚れていても、その姿には不思議な威圧感があった。


「軍人には務めがある。勝つことも務めだが、敗北を受け入れることもまた務めだ」


フォンボスは自動小銃を構え直した。


「私はここで戦う」


教授も銃を構える。


「なら、こちらも全力で応じよう」


次の瞬間、両者は同時に引き金を引いた。銃声が崩壊しつつある若松基地に響き渡る。




その頃――地下通信指令室では、ネイマン達が最後の掃討を行っていた。


倒れた端末から火花が散る。壁際には第13電子戦大隊の兵士達が倒れていた。ルッテンは周囲を警戒しながら口を開く。


「終わったな」


「まだだ」(ネイマン)


短く答える。ネイマンは床に転がる無線機を拾い上げた。そこから微かに銃声が聞こえる。地上だった。教授達はまだ戦っている。


ネイマンは数秒だけ耳を澄ませる。そして無線機を放り捨てた。


「行くぞ」


「どこへです?」(マッキー)


「決まってる」


ネイマンは出口へ向かって歩き出した。


「教授の加勢だ」


その声はいつも通り平坦だった。だがマッキーには分かった。班長もまた、この戦いを終わらせるつもりなのだと。




フォンボスが引き金を引く。教授も同時に発砲した。銃声が狭い通路へ反響する。互いに遮蔽物へ飛び込み、次弾を装填する。


「ギラード、右から回れ。ジーナは援護」(教授)


「了解!」(ギラード)


「了解です!」(ジーナ)


2人が散開する。


フォンボスはそれを見逃さなかった。彼女は崩れた壁を蹴り、素早く位置を変える。


タタタタン!


放たれた銃弾がギラードの足元を穿った。


「速い……!」(ギラード)


「気を付けろ。あれは副軍長だ。ただの参謀じゃない」(教授)


フォンボスは薄く笑った。


「光栄だな」


そう言いながらも、彼女の視線は常に教授を捉えている。この場で最も危険なのは誰か。それを正確に理解していた。


教授もまた同じだった。フォンボスを倒せば、この基地に残る組織的抵抗は終わる。だからこそ互いに目を逸らさない。


数秒の沈黙後、動いたのはフォンボスだった。彼女は遮蔽物から飛び出し、一気に距離を詰める。


タタン!


教授が撃つ。フォンボスは身体を捻りながら回避した。完全には避け切れず、脇腹から血が散る。それでも止まらない。


「っ!」


教授も驚きを隠せなかった。被弾を承知で前へ出たのだ。フォンボスは至近距離まで接近し、銃床を振り抜く。


教授は腕で受けた。鈍い衝撃が走る。


「ここまで来れば射撃の腕は関係ない」(フォンボス)


「そうかな?」(教授)


教授は距離を取ろうとしない。むしろ前へ出る。フォンボスの瞳が僅かに細まった。


「なるほど」


その瞬間だった。側面からジーナの銃撃が飛ぶ。フォンボスは反射的に回避した。しかし、その一瞬で教授が体勢を立て直していた。


タタン!


フォンボスの肩が大きく揺れる。銃が手から離れ、床を滑った。教授の銃口はフォンボスへ向けられていた。フォンボスはゆっくりと立ち上がる。


逃げる様子はない。降伏する様子もない。


「終わりか」(フォンボス)


「終わりだ」(教授)


フォンボスは小さく頷いた。そして崩れた天井の向こうを見上げる。遠くで爆発音が続いている。基地は燃えていた。


「ヒアカッペ准将には申し訳ないな」


静かな声だった。


「あの方まら最後まで戦う。私は、それに応えられただろうか」


「だが、出来ることはやった」


教授は何も言わない。敗者への侮辱は不要だった。フォンボスは再び教授を見る。


「勝者の責任は重いぞ」


「知っている」(教授)


「ならいい」


フォンボスは微かに笑った。


「帝国はまだ終わらない」


「だろうな」(教授)


「だが、帝国にはまだまだ優秀な軍人がいる。次はもっと厄介だぞ」


短いやり取りだった。だが互いに理解していた。戦争はまだ続く。ここは終着点ではなく、一つの通過点に過ぎない。教授は静かに引き金を引いた。


ステッラ・フォンボスは、その場へ静かに倒れ込んだ。


登場人物紹介

教授……GASTタイガー班の班長

ジーナ……GASTタイガー班所属

ギラード……GASTタイガー班所属

ステッラ・フォンボス……第8北九州統治軍の副軍長

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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