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外星戦記  作者: 無名の凡夫


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第23話 あの人達

― 2020年9月23日 未明 山梨県大月市近郊 ―


暗闇の山道を、前進部隊が静かに進んでいた。足音と装備の擦れる音だけが、夜の森に響く。誰もが理解していた。これは敵本隊との戦闘ではない。暗殺者を炙り出すための行軍だ。


「……本当にこれでいいんですかね?」(津曲祐樹(つまがり ゆうき)二等陸士)


「何がだ?」(大脇和夫(おおわき かずお)一等陸曹)


「戦力を分けて進んでるじゃないですか。敵本隊とぶつかったら……。」(津曲)


「この作戦の目的は何だ?」(大脇)


「暗殺者の排除です。」(津曲)


「そうだ。」(大脇)


「戦争はな、目の前の敵だけ見て戦うもんじゃない。」(大脇)


津曲は、大脇の言葉の重みに息をのんだ。自身は「戦争」という非日常に怯え、作戦の本質から目をそらそうとしていた。しかし、この戦いは自分たちのためだけのものではない。遠い場所で暮らす、自分たちと同じ国民の命もかかっているのだと、初めて腹の底から理解した。


急な作戦変更や敵兵に潜む暗殺者の存在に若手隊員は戸惑っていた。個人を特定されぬよう、隊員全てが覆面をして顔を隠しているが、裏を返せば敵も潜入しやすい。この隊の中に、暗殺者が紛れていると疑っている隊員も少なからずいたのだった。


「ここで一度、休憩を取る!」(桐谷)


桐谷率いる前進部隊は、小まめに休憩を取り、進軍を遅らせる。目的は敵本隊との戦闘ではなく、暗殺者の炙り出し。そして、隊員の無事を確認することにある。


「……」


「うむ、全員いるな。怪しい者もいない。進むぞ。」(桐谷)


「しかし、ゆっくり進むのも、これはこれで疲れますね。」(徳島陽平(とくしま ようへい)二等陸士)


「まあ、訓練では迅速に動くよう教わってるからな。」(吉森恵太(よしもり けいた)二等陸士)


「もう泣き言か? 最近の男どもは軟弱だな。」(原口(はらぐち):はらぐち:すず三等陸曹)


「そ、そんな疲れてませんよ。心外だなぁ、ははは。」(徳島)


「そこ!私語は慎め! ここは戦場だぞ!」(木原冬彦(きはら ふゆひこ)二等陸曹)


「すみません!」(吉森)


「まったく、気が緩みすぎだ。飛鳥三尉、あなたの班なのですから、しっかり指導してくださいよ。」(木原)


「それは失礼。でも、今はあなたの声の方が大きいわよ。」(飛鳥知子(あすか ともこ)三等陸尉)


飛鳥はふと立ち止まった。


「……ねえ。」


誰も気付いていない。だが彼女の鼻がわずかに動いた。


「ところで、あなたは誰?」 


「!?」(徳島)


「何を言ってるんですか? 31普連2中隊・木原冬彦二等陸曹ですよ、同僚の顔を忘れたのですか?」


「声も仕草もよく真似てる。」


飛鳥はゆっくり言った。


「でもね……匂いが違う。ゴブリンね。」


「!?」(木原?) 


「待ってください、捕えて情報を吐かせましょう。」(吉森)


偽木原の顔が歪んだ。次の瞬間、隣にいた吉森の首を腕で締め上げる。銃口がこめかみに突きつけられた。


「動くな!」


「帝国陸軍特殊作戦部隊、タウリー・ミントゥ上等兵だ!」


「動くな!動いたらこいつの命はない!」(ミントゥ)


飛鳥は一歩も動かなかった。そして、冷静に言い放つ。


「その人質、意味ないわよ。」


ミントゥが目を細める。


「何?」


「あなた、逃げるつもりでしょ?

「でも逃げられない。」


「すず!」(飛鳥)


「了解!」(原口)


原口の腕が動いた。足元に閃光弾が転がる白い光。その瞬間。


PANG! PANG!


2発の銃声が森に響いた。


「ひっ!」(徳島)


徳島が悲鳴を上げた。


「吉森ッ!」


吉森の体が崩れ落ちる。額の中央に小さな穴が開いていた。誰もが一瞬、言葉を失った。


「……くそっ。」


原口が低く吐き捨てる。徳島は震える手で吉森の肩を掴んだ。


「吉森……おい……!」


その時だった。吉森の頬に、細い“ひび”のようなものが走った。ひびはゆっくりと広がった。まるで乾いた泥が割れるように。


PAKI……PAKIッ……


「……?」


徳島が息を呑む。次の瞬間、吉森の顔の皮膚が剥がれ落ちた。


下から現れたのは、人間の肌ではなかった。緑色の、ざらついた皮膚。そして歪んだ口。ゴブリンだった。徳島の顔から血の気が引いた。


「う、そだろ……」


原口が静かに言った。


「……最初から吉森じゃなかったのよ。………本物の吉森は、どこで殺されたんだろうね。」


「こいつの班があと1人どこかにいる。」


「こいつでしょうか?」


そう言って、赤松(あかまつ)つらら一等陸士は、戦闘を避けるように横の茂みに隠れていた、もう一体のゴブリンの遺体を引きずって現れた。


「言われた通り、臭いに注意してたら、見つけました。」(赤松)


そこに12偵からの報告があった。


「村西三尉が、敵兵3体を発見。戦闘に入りました!」


「援護に行きますか?」(徳島)


「落ち着きなさい。私たちに命令は下ってない。それに…。」(飛鳥)




―数分後―


「村西三尉の班が戻ってきました!」(赤松)


村西の班が戻ってきた。その中に、西の姿があった。徳島は目を見開く。


「西さん……。」


その顔は昨日までの西とは違っていた。迷いのない、兵士の顔だった。


「若手も育っている。君も精進なさい。」(飛鳥)


「は、はい!」(徳島)


徳島は、ただ「はい!」と力強く答えることしかできなかった。


「(グーリエ星人、舐めるなよ。俺たちは、いつまでも2年前の亡霊に頼ってはいない。それを分からせてやる。)」(桐谷)

登場人物紹介

大脇おおわき 和夫かずお

生年月日:1980年8月23日 / 出身:東京都出身

階級:一等陸曹 / 所属:31普連隊1中隊

備考:2年前の道志山塊攻防戦で戦果を挙げる。


津曲つまがり 祐樹ゆうき

生年月日:2000年12月18日 / 出身:東京都

階級:二等陸士 / 所属:31普連1中隊

備考:真面目な新人隊員


飛鳥あすか 知子ともこ

生年月日:1984年7月31日 / 出身:大阪府

階級:三等陸尉 / 所属:31普連2中隊

備考:2年前の道志山塊攻防戦で戦果を挙げた。


徳島とくしま 陽平ようへい

生年月日:2001年5月21日 / 出身:静岡県出身

階級:二等陸士 / 所属:31普連2中隊所属の新人隊員


原口 すず(はらぐち すず)

生年月日:1997年4月20日 / 出身:兵庫県

階級:三等陸曹 / 所属:31普連2中隊

備考:飛鳥に鍛えられた成長株。女性


赤松 つらら(あかまつ)

生年月日:2001年3月3日 / 出身:奈良県

階級:一等陸士 / 所属:31普連隊2中隊

備考:自候生時代から優秀と言われていた期待の若手隊員。飛鳥の下で急成長。


木原きはら 冬彦ふゆひこ

生年月日:1992年12月8日 / 出身:茨城県

階級:二等陸曹 / 所属:31普連2中隊

備考:ミントゥによって殺され、潜入を許す。享年28歳。


吉森よしもり 恵太けいた

生年月日:2002年2月1日 / 出身:静岡県

階級:二等陸士 / 所属:31普連2中隊所属の新人隊員。

備考:クァードによって暗殺され、潜入を許す。享年18歳。


村西むらにし 孝治たかはる

生年月日:1984年7月28日 / 出身:静岡県

階級:三等陸尉 / 所属:第12偵察大隊2中隊

備考:2年前の道志山塊攻防戦で戦果を挙げた隊員。飛鳥とは防大の同期。


タウリー・ミントゥ

種族・性別:ゴブリン族の男性

所属・階級:陸軍上等兵、特殊作戦部隊

備考:木原を殺害し変装し、自衛隊内部に潜入するが、飛鳥に見破られる。


ダーク・クァード

種族・性別:ゴブリン族の男性

所属・階級:陸軍伍長、特殊作戦部隊

備考:吉森に扮していたが、原口によって討たれる。クァードの方が階級上なので、ミントゥが人質を取るフリをしていた際、内心苛立っていた。


グーリエ星に存在する種族

ゴブリン族……ファンタジー物で有名なモンスター。モンスターの中では知性があり、会話が可能。帝国内では市民権がある。手先が器用で、昔は森や洞窟での生活を好んだ。その特性から、自然を相手にする仕事をする者が多い。経験を積み、スキルを上げることで、ホブゴブリン(中位種)、ゴブリンキング(上位種)と進化をする。


※モンスター種の体臭は独特なので、ヒトの臭いとの違いに飛鳥は気付いていました。また、彼らが潜入した際、本物と遜色ない特殊メイクをしていました。


※帝国特殊作戦部隊…帝国陸軍により編成されている特殊部隊で、要人暗殺やスパイ行為等を行う。おそらく3人一組で動く。本物の皮膚と遜色ない特殊メイク技術で変装し、少ない情報で本人の声色や癖を真似ることができる。

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