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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第1章 初陣~オペレーション・ギデオン~

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第23話 主導権

血を引きずるようにして、森の中を歩く影があった。シーマ・アイフ陸軍曹長。帝国特殊作戦部隊の支隊長の一人。


「くそったれ……」


足を引きずりながら吐き捨てる。


「この俺が……下等生物ごときに……」


先ほどの戦闘で、五十嵐(いがらし) 嘉兆(かちょう)陸曹長の班を壊滅させた。だが代償は大きい。部下2人を失い、自分も重傷を負った。


「ちっ……」


視界が揺れる。


「敵1体発見!」


声が響いた。


「重傷だが意識あり! 撃破する!」


「ちっ…」


アイフは反射的に拳銃へ手を伸ばす。


しかし──


「畜生……」


銃弾がアイフの体を貫いた。アイフは膝をつき、そして崩れ落ちた。


「五十嵐曹長!」


アイフを仕留めた、海原(うなばら) 颯太(そうた)三等陸曹は、倒れている五十嵐の元へ駆け寄った。しかし返事はない。既に事切れていた。海原は周囲を見回す。敵の死体が3つ。


「……曹長、2体も道連れにしたんですね」


小さく呟く。海原は五十嵐と隊員の亡骸を並べた。


「……収容は後だ」


それだけ言い、再び警戒に戻った。




門唐の元に、新たな一報が入った。


「五十嵐曹長の班、全滅。敵支隊は海原三曹が撃破しました。」


「……うむ…。残りの敵は?」


「麻生三尉の班と、沼上三佐の班が戦闘していると報告があります。」


「そうか……。まだ敵兵が潜んでいるかもしれん。警戒は緩められんな。」




「そうか……アイフは死んだか。」


アスゲニフは、淡々と言った。フィアン・トロイカ大尉が報告する。


イ-08(イーゼロハチ)の部隊は壊滅。しかしアイフは重傷を負い、その後、別の敵兵に討たれました。」


「ふむ。」


アスゲニフは少し考えた。


「敵は混乱している。作戦の流れは悪くない。」


「残存部隊は?」


「ニッキー支隊が交戦中。ネウレイ支隊は潜伏しています。」


アスゲニフは頷いた。


「ならば流れは決まった。」


静かに言う。


「次はイ-02(イーゼロニ)。敵の指揮官だ」


アスゲニフは、隣の部下にこう告げる。


「キキ、お前は私に着いてこい。セルチュクは周りの雑兵を仕留めろ。無闇にイ-0を狙うのではなく、周りの雑草を刈ることも大事だ。」


「了解しました。」

※キキ・ディオンヌ一等兵


「よし、行くぞ!」


トロイカの足元には、沼上(ぬまがみ) 直樹(なおき)三等陸佐と部下たちが倒れていた。誰も武器を手放してはいない。最後の一人まで戦い抜いたことだけは、一目で分かった。


一方アスゲニフは、自ら討ち取った海原三曹の首を提げていた。その海原が、アイフを討った兵だとは知らない。互いの功績も名前も知らぬまま命を奪い合う。それが戦場だった。




通信士が報告した。


「門唐陸将補、沼上三佐の班が……」


言葉が詰まる。


「全滅です。」


門唐の表情が凍る。


「……沼上が?」


あの男が…。道志山塊を共に戦い抜いた戦友が…。


「やはり一筋縄ではいかんか……」


その時だった。


「その通りだ。」


背後から声がした。門唐が振り返る。そこに立っていたのは――ラランワ・アスゲニフ。その足元には副官と通信士の死体。まるで紙屑のように転がっていた。


「貴様……!」


門唐は反射的に拳銃を抜き、2発撃った。乾いた銃声が響く。だが、その弾丸は夜気を裂いただけだった。


「遅い。」


気付けばアスゲニフは背後にいた。銀の閃光。短剣が門唐の喉を裂いた。


「ぐ……っ」


門唐の視界が揺れる。山々が浮かぶ。道志山塊、部下たち、家族……何も伝えられないまま、視界が暗くなった。


「見ていたか、キキ。」


「はい、勉強になりました!」


アスゲニフは、最高指揮官の1人を倒した達成感に浸ることもなく、冷静に無線機を手に取った。


「こちらアスゲニフ、敵指揮官の討伐完了。これより、残りのイ-0を始末する。」


「キキよ、次へ行くぞ」


「了解です!」




麻生(あそう) 教之(のりゆき)三等陸尉は、荒い呼吸を繰り返していた。足元には相木と平野の亡骸。平野は銃を抱えたまま倒れ、相木の銃剣は敵の腹に深く突き刺さっていた。相木の胸は大きく裂かれている。相討ちだった。


麻生は、敵の顔を見る。


「強いな……」


思わず呟く。先ほどの敵とは格が違う。銃剣がぶつかる。「カキィン!」という金属音が辺りに響いた。


麻生は疲労していた。徐々に押される。


「とどめだ。」

※ニッキー・アドロフ曹長、テリムト特殊作戦部隊所属


アドロフが踏み込む。その瞬間。


「ぐあっ!」


背後から銃剣が突き刺さった。上条だった。


「麻生三尉、ご無事ですか?」


「上条、原崎に田之上!」


援軍にかけつけた上条らにより、アドロフを無事仕留め、辛くも切り抜けた麻生だったが…。


「三尉……」


上条の声は重かった。


「門唐陸将補が討たれました。」


麻生は凍り付く。


「……何?」


「沼上三佐も……五十嵐曹長も……」(上条)


麻生の顔から血の気が消えた。


「そんな……」


道志山塊を共に戦った仲間。そのほとんどが死んだ。麻生は拳を握る。声が震える。


「……何てことだ…」

登場人物紹介

フィアン・トロイカ

種族・性別:ヒョウ型獣人族の女性

所属・階級:陸軍大尉、帝国特殊作戦部隊支隊長の1人

備考:沼上を仕留める。


キキ・ディオンヌ

種族・性別:ハイエルフの女性

所属・階級:陸軍一等兵、特殊作戦部隊で、アスゲニフの支隊に所属

備考:期待の若手兵士


※故人

五十嵐いがらし 嘉兆かちょう

生年月日:1989年4月23日 / 出身:秋田県

階級:陸曹長 / 所属:13普連2中隊

備考:2年前の道志山塊攻防戦で戦果を挙げた1人。アイフに重傷を負わすが死亡。

享年:31歳


沼上ぬまがみ 直樹なおき

生年月日:1976年10月14日 / 出身:長野県

階級:三等陸佐 / 役職:13普連1中隊中隊長

備考:2年前の道志山塊攻防戦で戦果を挙げた1人だったが、トロイカに討たれる。

享年:44歳


※2)帝国軍の特殊作戦部隊に所属する兵は、隠密として過酷な訓練を行い、選抜される精鋭部隊なので、なかなか兵以下の者が選ばれることはありません。大抵は、下士官クラスが選ばれます。上等兵のミントゥ(第21話参照)や一等兵のディオンヌはそれだけ有望な兵士ということです。


※3)イ-0(イーゼロ)……帝国兵が、暗殺対象の敵兵をラベリングする時の符号。対象の人数に合わせて、イ-01、イ-02のように、0の後に番号を振っていく。

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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