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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第1章 初陣~オペレーション・ギデオン~

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第25話 それぞれの絶望

―自衛隊 山梨方面隊・前衛部隊―


「ぐ…。」


帝国軍第3砲兵大隊からの砲撃により、前衛部隊も壊滅的な被害を受けていた。


「天売!」


大脇は、瓦礫の山から、無残な姿で横たわる天売の遺体を見つけた。


「くそ…。死んでる。」


「他の者はどうなった?」


あたりを見回す大脇。そこには、グーリエ星人の亡骸もあった。首が吹き飛んで誰なのか判別できない遺体が、敵味方問わずに散乱していた。かろうじて生きていた、ココ・プリケリマは、激痛により、声にならない声をあげている。


(あいつら、味方もろとも吹き飛ばしたのか…。なんて奴等だ…!)


怒りが湧き上がるが、大脇の体は言うことを聞かなかった。砲撃で吹き飛ばされた左腕からは、ドクドクと夥しい血が流れ続けている。至急、止血をしたが、もはやまともに戦える状態ではなかった。


(プリケリ(こいつ)マは、放っておいても死ぬ。ならば、他の敵兵を倒す…。)


(これでは小銃を扱えん。だが…。)


大脇は、倒れた天売の遺体から拳銃を抜き取り、自身のものと合わせて2丁を手に取った。


(この体じゃ、長くはもたん。だが……)


(天売、皆…お前の無念を晴らせるかは分からねぇ。だが、最期まであがいてみるよ。)


足下はふらついており、一歩進む毎に視界が霞む。それでも歩みだけは止めなかった。彼の目に、絶望はなかった。ただ、敵への憎悪と、最期まで任務を全うするという使命感が彼を突き動かした。




「総員、戦闘開始!」


武石の号令は、その場に響く隊員の断末魔の悲鳴と、空から降り注ぐ砲撃の轟音にかき消された。後方部隊の状況は、もはや絶望的だった。帝国軍の特殊作戦部隊による暗殺、そして、上空からの無慈悲な砲撃…。


(一発ごとの威力が大きすぎる……! それが何発も…!)


武石は、思考の混乱を抑えきれずにいた。


「うわあああああ!」

「ぎゃああああああ!」


どこからか聞こえる隊員の悲鳴が、武石の心を深くえぐる。


「今、12特科隊が、FH70を設置していますが…天使族に狙われ、作業が滞っています!」

古伝間 (こでんま)拓人(たくと)一等陸尉、第13普通科連隊本部管理中隊所属


「また、小林三佐が戦死! 第3中隊も壊滅的です!」


「ぐう…。これで13普連は、中隊長2人が戦死か…。」


「麻生と連絡を取れるか?」


「現在、交戦中。」


「そうか…。生存者をまとめろ。まだ戦える部隊を集めろ。通信が回復し次第、各部隊の所在を確認する。」


武石は歯を食いしばった。今は目の前の部隊を立て直すしかない。それでも、遠くで戦う麻生たちの無事を願わずにはいられなかった。




― 帝国軍 野戦本部 ―


「砲撃は共に成功。」

※シス・アル・ミルカー陸軍中佐、山梨攻略隊第1歩兵大隊所属


「よし! では、第1歩兵大隊も出撃だ!」


「虫けら共を踏み潰せ!」


第3砲兵大隊、そして上空哨戒部隊の砲撃を受け、壊滅的な被害を被った自衛隊・山梨方面部隊。さらに追い打ちをかけるように、新たな伏兵が進軍してきた。




― 自衛隊 山梨方面隊・前衛部隊 ―


「隊長! 前方から敵です!」(村西)


「おそらく、これが敵本隊…。」(桐谷)


「迎え撃つぞ! 総員、戦闘開始だ! ここを破られたら、大月を取られる! 絶対に死守する!」(別当)


「了解!!」


ベテランの隊員は、この状況でも最善を尽くそうとしていた。それはこれまでの経験から培ってきたものだ。では、経験の浅い新人だけで孤立した場合はどうなるのか…。




「も、もう駄目だ…。俺たちは死ぬんだ…。」

万代(ましろ) 佑大(ゆうだい)二等陸士、第31普通科連隊第2中隊所属


「いやあ…。誰か助けて…。死にたくないよぉ…。」

鍵島(かぎしま) 乃希(のき)二等陸士、同上


「何をやってるんだ、立て! 立って戦うぞ!」

津曲(つまがり) 祐樹(ゆうき)二等陸士、同 第1中隊所属


別の場所では、絶望に顔を歪ませる若手隊員が2人。その2人を鼓舞するもう一人の若手隊員の津曲だが、2人はもう心が折れている。一度、心が折れると、再び立ち上がるのは難しい。唯一、闘志を失っていない津曲も、こめかみ付近から出血しており、血が目に入って視界が悪くなっている。


「もう、無理だよ。さっきの爆撃でほとんど死んじまったんだぞ、自分達だけでどうやって勝つんだよ!」(万代)


「しかし、ここでじっとしてても何もならんぞ! 戦わないと死ぬ。俺たちだけじゃない、大月に残ってる市民も死なせてしまう!」


山梨や静岡は、占領された首都圏と近く、特に神奈川よりの自治体は、テリムトとの緩衝地帯となっている。そのため、多くの住民が避難を余儀なくされたが、それでも残っている住民もいる。実際、この砲撃により、命を落とした住民も少なくなかった。


「これ以上、犠牲者出さないためにも、戦うんだ!」


「もう無理だよ…。帰りたい…。ヒュッ…ヒュッ…」


鍵島の呼吸は浅く、過呼吸気味だった。


「おい、ここに3匹いるぞ!」


「女は殺すな、生け捕りにしろ!」


「くっ…。(鍵島も万代も戦えない。なら、俺がやるしかない。)」


津曲は銃を構えた。


乾いた銃声が響く。しかし次の瞬間――


敵兵の銃弾が津曲の胸を撃ち抜いた。津曲の体が崩れ落ちる。


「……あ……」


それが、彼の最後の声だった。


「ああ、津曲…。」(万代)


「ああああ…。」(鍵島)


「お願いです。命だけは取らないでください。」(万代)


「お願いします。助けてください、何でもしますから…。」(鍵島)


必死に命乞いをする2人。だが、グーリエ星人にとって、それは無意味な行為だった。その時…3発の銃声が聞こえた。


「ぎゃっ!」


「うわっ!」


「ぐっ!」


その銃声と共に、敵兵が次々と倒れる。


「敵と対峙したら、泣きながら命乞いしろと教わったのか?」


「お、大脇一曹…。」(万代)


「!?」(万代)


助かったと思った。だが、その姿を見た瞬間、その安堵は凍りついた。大脇の左腕は欠損していた。応急処置はしていたが、血が止まっていない。呼吸は荒く、顔色も悪い。長くは持たないと、万代にも分かった。


「まずは、生存者を探す。俺に着いてこい!」


万代は我に返った。大脇は、自分の命が尽きるまで、その使命を全うしようとしていた。最期まで戦う姿勢を崩さないその姿に、先程まで心が折れていたことを恥じ、この切望的な状況を打開すべく立ち上がった。


「……了解」


「さあ鍵島、行こう。」


「無理、もう歩けない…。」


鍵島はか弱い声で呟く。彼女の心はまだ折れたままだった。


「ここにいても何も出来ない。立たないと。」


「いやだ、もう戦いたくない…。死にたくない…。家に帰りたい…。」


「鍵島、生きるには自分の足で立たないとダメだ。ここはそういう場所だ」

(自分が言うのもなんだけど…。)


その時、遠くで銃声が聞こえた。誰かがまた、死んだ。時間がない――大脇は決断をする。


「……仕方ない。鍵島は置いていく。」


「!?」


「そんな…。お願いです、見捨てないで下さい…。」


「時間がない…。戦えないのなら、ここに置いていく…。」


大脇は歯を食いしばっていた。痛みへの我慢か、非情な決断をした故か。万代の背筋に、冷たいものが走った。


(自分もそうなってたかも…)


大脇には時間がない。ならば、動けるうちに1人でも多くの敵を倒すことが、この状況を切り抜ける最善の策だと信じていた。隻腕の大脇に鍵島を担ぐことは不可能である。


「なら、自分が鍵島を背負って…。」


「そうすればお前が身重になる。俺がこんな状態だ。お前の動きが重要になってくる。ここに残っても意味がない。進まないといけないんだ!」


「…くっ……。」


「そんな…あんまりです!」


ならば自分の足で立つしかない。しかし、鍵島にその意思がない。泣きながら懇願する鍵島をその場に残し、生存者を探しにいく大脇と万代。大脇は唇を噛みしめ、万代は涙を流す。


「お願い……置いて行かないで……」


それでも、2人は振り返らなかった。やがて、鍵島の泣き声が途絶えた。




生存者を探す大脇と万代だったが、見つかるのは味方の亡骸ばかりだった。


(大岩…。設楽…。玉城…。くそ………。)


万代の視界には、苦楽を共にした同期の遺体も見つかった。亡くなっていた同期と、厳しい訓練を共に乗り越えた日々や、休日に皆で外食をした、数々の思い出がよみがえり、涙が抑えきれない。


「大脇一曹、天売三曹、嶋三曹や長谷川陸士長は…。」


「俺が倒れていた傍に、天売も倒れてた。首や胴体が吹き飛んでいる仲間の遺体が2つあった。状況からして、それが嶋と長谷川だ。」


「…そんな…。」


「悲しむのは、戦いが終わった後だ…。今は、この状況を切り抜けることを考えろ。」


大脇が声に力がなくなり、呼吸も弱くなっていた。死期が確実に近づいていた。そして、前方に敵兵が4体。戦闘を避けられそうにはなかった。


「万代よ、お前みたいな青二才と一緒では、勝てる戦いも勝てん。お前は奴らの目を盗み、先へ進め。頼んだぞ。」


「えっ? 」


大脇は、そう言い残し、敵兵4体と戦闘を始めた。


拳銃の乾いた音が響く。万代は、その隙に大脇から離れ、その場を離脱する。


(大脇一曹は、自分を逃がすために…。)


(ちくしょう…。)


万代は振り返らなかった。振り返れば、大脇の最期を見てしまう気がしたからだ。


敵兵の銃剣が大脇の胸を貫いた。大脇の体がぐらりと揺れ、膝から崩れ落ちる。兵士の一人が歩み寄り、腰の剣を抜いた。次の瞬間、鈍い音がした。刃が首を断ち、大脇の体が地面に倒れる。


イ-04(イーゼロヨン)だ。」


「首を持て! 戦果として持ち帰るぞ!」


切り離された首を、敵兵は髪を掴んで持ち上げた。


背後で、敵兵の歓声が上がった。それが何を意味するのか、万代は理解していた。それでも、彼は前へ進んだ。

登場人物紹介

津曲つまがり 祐樹ゆうき

生年月日:2000年12月18日 / 出身:東京都

階級:二等陸士 / 所属:31普連1中隊

備考:真面目な新人隊員 / 享年20歳


万代ましろ 佑大ゆうだい

生年月日:2001年8月22日 / 出身:三重県

階級:二等陸士 / 所属:31普連所属の新人隊員。

備考:津曲とは同期。


鍵島かぎしま 乃希のき

生年月日:2001年5月30日 / 出身:栃木県

階級:二等陸士 / 所属:31普連隊所属の新人隊員

備考:津曲とは同期。戦場で心が折れる。女性


シス・アル・ミルカー

種族・性別:狐型獣人族の女性

所属・階級:陸軍中佐、第1歩兵大隊でアイトンダの副官。

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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