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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第228話 泣いてもいい

「佐賀関の方は落ち着いたようだな」(ピート)


「……はい」(シシリア)


私は、シシリアこと綾瀬彩乃です。これが私にとって初めての実戦でした。電子戦隊なので前線へ出る訳ではありません。それでも戦場は戦場です。


正直に言うと。もう帰りたい。出来ることなら全部投げ出して逃げたい。


そんな事ばかり考えていました。


壇之浦で、門司で、多くの戦死者が出ました。そのほとんどが、名前も知らない人達です。


それでも胸が苦しい。もし私が失敗していたら、もっと多くの人が死んでいたかもしれない。そう考えるだけで吐き気がしました。


だから休みたい。逃げたい。端末の電源を落としてしまいたい。


でも――そんな事は出来ません。


今までずっとそうでした。高校でも、防大でも防大でも……GASTに来た時もそうでした。私はいつも流されてきました。嫌だと思っても、怖いと思っても……結局その場に残ってしまうのです。


「辛そうだな。少し休め」(ピート)


「……帰りたいです」(シシリア)


思わず口に出てしまいました。言った瞬間、しまったと思った。


こんな事を言ったら怒られる。


甘えるなと言われる。


役立たずだと叱責される。


そう身構えた。だが――


「そうか」(ピート)


返ってきたのは、予想していた言葉ではありませんでした。


「班長は帰りたくならないんですか?」(シシリア)


「なるぞ」(ピート)


「え?」(シシリア)


私は思わず顔を上げた。


「毎回なる」(ピート)


「戦場なんて好きな奴の方が少ない」(ピート)


「怖いし、疲れるし、死にたくない」(ピート)


「だから帰りたいと思うのは普通だ」(ピート)


ピート班長は当たり前の事のように言いました。私は返事が出来なかった。


普通。


その言葉が妙に引っ掛かった。


高校でも、防大でも、幹部候補学校でも、私は怒られている記憶の方が多かった。


足りないと言われた。


遅いと言われた。


要領が悪いと言われた。


だから、弱音を吐く事も駄目なのだと思っていた。


「だから気にするな」(ピート)


「ここには私達しかいない。辛い時は吐き出していい」(ピート)


その瞬間だった。視界が滲んだ。慌てて拭おうとしたが間に合わない。ポタポタと、涙がキーボードへ落ちた。


「お、おい。そこまで泣くな」(ピート)


「す、すみません……」(シシリア)


「謝るな。泣くのは別に規則違反じゃない」(ピート)


私は何も言えなかった。ただ涙だけが止まらなかった。


「ああそうだ、郡長がいる時は我慢しろよ? あの人には冗談が通じない」(ピート)


「は、はい…」(シシリア)


「間違っても『帰りたいです』なんて言うなよ?」(ピート)


「……死にます?」(シシリア)


「死にはしない」(ピート)


「半殺しにはされるかもしれん」(ピート)


「は、ははははは…」(シシリア)


やっぱり、帰りたい。


登場人物紹介

シシリア……GASTファルコン班所属。自己肯定感が低く、流されやすい性格

ピート……GASTファルコン班の班長。面倒見の姉貴分

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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