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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第224話 生殺与奪

カラーノです。今、私達の目の前には拘束されたグーリエ星人が50体程。付近にそれ以上の数のグーリエ星人の遺体が転がっています。


「あの遺体の連中は、抵抗したから殺した」(ファス)


そう答えるのは、セイレーン班のファスさん。


「この50人は投降した奴等だ」(ファス)


「この50人は捕虜にするんですか?」(カラーノ)


「……」(ビービ)

「……」(浪城)


ビービ班長は何も答えません。同じく、浪城大隊長も。


「こいつ等は、ここで殺す」(BJ)


「!?」(カラーノ)


口を開いたのは、BJ班長でした。予想通りの答えでしたが、敵とはいえ、無抵抗の人達を殺す――人道的にもそれは許されない行為に感じます。


「待ってください! 彼らは自ら投降したのですよね? 中には非戦闘員らしき姿もあります。殺す必要があるのですか?」(カラーノ)


「害虫は駆除する。それだけだ。」(BJ)


私の視界に入った、怯える人魚族の女性。彼女は非戦闘員のようです。言葉は分かりませんが、「殺さないで」と懇願しているようです。


「班長、ジュネーブ諸条約を知らないわけじゃありませんよね? 首都圏でも、戦争犯罪に該当しかねない事件がありました。これ以上、事を大きくすると、世論が黙っていませんよ!」(カラーノ)


「馬鹿か。」(BJ)


BJ班長は呆れたといった様子で呟きます。


「こいつらに国際法は通じねぇ。襲ってきたとき、人道回廊を確保したか? 一般市民を逃がしたか? こいつらは老若男女問わず、ここで暮らす者達を虐殺してきた。非戦闘員とて、その片棒を担いできた。何故、こいつらを生かさないといけない?」(BJ)


「でも…」(カラーノ)


その時、キーラさんが私の肩を叩きます。


「グーリエ星人は、そもそも地球外生命体。国際法は通用しない。」(キーラ)


「そうだ。国際法に則る必要はない。」(BJ)


「でも……投降しているんですよ?」(カラーノ)


BJ班長は小さくため息を吐いた。


「科学者脱走事件は知ってるな」(BJ)


私は息を呑んだ。知らない話ではありません。捕虜として収容されていたグーリエ星人科学者が脱走。警備員や民間人を殺害し、多数の犠牲者を出した事件です。


「でも、あれは特殊な例では――」(カラーノ)


「特殊じゃねぇ」(BJ)


即座に否定された。


「あの事件で学んだのは一つだ」(BJ)


BJ班長は拘束された捕虜達へ視線を向ける。


「グーリエ星人を、人間と同じ感覚で扱うな」(BJ)


「俺も反対したよ」(浪城)


「え?」(カラーノ)


「当時はな」(浪城)


浪城大隊長は苦い顔をします。


「捕虜なんだから保護しろってな」(浪城)


「……」(カラーノ)


「結果はあの様だ」(浪城)


私は何も言えませんでした。


「護送部隊は半壊。避難民にも被害が出たわけだ」(浪城)


浪城大隊長は静かに言います。


「だから今の自衛隊は、昔ほど甘くない」(浪城)


「お前の言っている事は正しい。だが、俺達はその”正しさ”で何度も痛い目を見てきた」(浪城)


「……」(カラーノ)


私はふと、隼人の事を思い出しました。隼人は両親をグーリエ星人に殺されている。「仇を討つ」と何度も口にしていたことも。彼のグーリエ星人に対する憎悪は凄まじく、大事な人を奪われた辛さをひしひしと感じました。逆に私は――自衛官になって、お世話になった先輩や、訓練を共に頑張った同期を失う辛さを味わいました。グーリエ星人が憎いのは事実です。ですが、ただ感情だけの殺意を持つことはありませんでした。私の考えは甘いのでしょうか、それとも普通なのでしょうか?


「殺すことに反対はしない」(コルガン)


「同じく…」(ローレライ)


「奪われた領土を取り戻し、これ以上の被害を出さないためだ」(カバナー)


班長達も同意しています。その時、グーリエ星人の一人が、私達に話しかけてきました。


「……日本語が分かる」


私は思わずそちらを見ます。大柄な体格の男です。両手を拘束され、顔には殴打の痕が残っている。


「話せるの?」(カラーノ)


「少しな」


男は小さく頷きました。


「ウルホ・ウムトラだ。マコンベリムト第3領海警備基地の調理担当責任者をしていた」


「調理担当……?」(カラーノ)


私は思わず聞き返していた。軍人ではない。少なくとも戦闘要員ではなさそうです。


「毎日3000食以上作っていた」(ウムトラ)


男はどこか諦めたような顔で続けます。


「兵士用、整備員用、病棟用。忙しかったぞ」(ウムトラ)


「……」


「俺は銃も撃てん」(ウムトラ)


ウルホは苦笑した。


「包丁なら使えるがな」(ウムトラ)


周囲が静まり返ります。私にとっては、初めて聞く種類の話でした。今まで撃ってきた敵、殺してきた敵。その誰もが最初から兵士だった訳ではない。


炊事兵もいる、整備兵もいる、事務官もいる、家族持ちもいる――当然の話でした。


「だったら何故、ここへ来たんですか?」(カラーノ)


ウムトラは少し考えた後、答えた。


「命令だからだ」(ウムトラ)


「それだけですか?」(カラーノ)


「それだけだ」(ウムトラ)


即答でした。


「俺は将軍じゃない。政治家でもない。戦争を始めたのは俺じゃない。だが、始まった以上は従った。それが俺の仕事だった」(ウムトラ)


私は言葉を失った。するとウムトラは視線を落とし、小さく笑います。


「情けない話だな。今は死にたくないと思っている。」(ウムトラ) 


「妻もいる。息子も娘もいる……故郷に帰りたい」(ウムトラ)


その声は震えていました。


「頼む、助けてくれ! 何でもする! 料理だって作る! 掃除でも荷運びでもする! だから――」


ウムトラは頭を地面へ擦り付けた。


「死にたくない」


浪城大隊長は黙っています。ビービ班長も何も言いません。ローレライ班長も、コルガン班長も。誰一人として口を開きませんでした。


その沈黙を破ったのはBJ班長でした。ウムトラの頭を踏みつけ、言いました。


「豚が人語を喋ってるんじゃねぇ。豚はブヒブヒ鳴いとけばいいんだよ」(BJ)


「俺達にも家族はいた」(BJ)


ウムトラの身体が震える。


「守りたい相手もいた」(BJ)


「帰りたい家もあった」(BJ)


BJ班長の声は冷たかった。怒鳴りもしない。感情をぶつけもしない。ただ事実を述べている。


「お前達はそれを焼いた」


「殺した」


「奪った」


「俺達は忘れてねぇ」


ウムトラは何も言えない。


「助けてくれ、か」


BJ班長は小さく鼻で笑った。


「今さら遅ぇよ」


「うぎゃあああああああああああああああああああああ」(ウムトラ)


BJ班長は、何の躊躇いもなくウムトラの頭部に刀を突きさします。


「班長!?」(カラーノ)


「ようやく、豚らしくなったな。」(BJ)


BJ班長が、ウムトラにとどめを刺そうとした時…


「待て」(浪城)


浪城大隊長が、班長を止めました。


登場人物紹介

ウルホ・ウムトラ

種族・性別:オーガ族の男性

所属:マコンベリムト第3領海警備基地の調理担当責任者 ※非戦闘員

備考:妻はヒト族で、息子・娘が母親に似て可愛くて仕方ない。朝と夜に家族とTV通話するのがルーティン


ファス……GASTセイレーン班所属

カラーノ……本作のヒロイン、GASTピットブル班所属

BJ……GASTピットブル班の班長、冷徹な性格をしている

キーラ……GASTアマゾネス班所属、グーリエ星人に父と弟を殺された過去を持つ

浪城なみしろ げき……第一空挺団 第2普通科大隊長

コルガン……GASTフォックス班の班長

ローレライ……GASTセイレーン班の班長

カバナー……GASTスパイダー班の班長


※グーリエ星人学者脱走事件

2009年、北海道にてグーリエ星人(後に科学者だったことが判明)を捕らえることに成功するが、その1か月後、その科学者が収容所から脱走。警備員や民間人等、多くの犠牲者を出した。

この事件で、グーリエ星人は非戦闘員でも高い戦闘能力を持っている事が判明する。

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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