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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第221話 綻び

「(班長…)」(カラーノ)


正直、少し動揺していました。BJ班長が被弾する。そんな光景を、私は見た事がありません。かすり傷とはいえ、班長の左肩からは血が滲んでいます。それでも本人は、何事も無かったかのように前進を続けていました。


タタタタン!!


敵防衛隊の銃撃が、蒸気の漂う通路を切り裂きます。


「カラーノ、右!」(シャーク)


「っ!?」(カラーノ)


慌てて身を伏せる。直前までいた場所へ銃弾が叩き込まれ、背後の配管が破裂しました。完全に反応が遅れていました。


「何やってんの!」(シャーク)


「す、すみません!」(カラーノ)


ですが、意識がどうしても前へ向いてしまいます。視線の先では、BJ班長が先頭で敵防衛線へ圧力を掛け続けていました。


敵司令官、そして、その周囲にいる防衛兵達も、今までとは明らかに質が違います。


「班長、左側面!」(ガーツ)


「見えてる」(BJ)


パァン!


BJ班長の射撃が、遮蔽物から身を出した敵兵を撃ち抜く。ですが、その直後には別方向から反撃が返ってくる。完全な撃ち合いでした。


「……カラーノちゃん」(フロリアン)


「え……?」(カラーノ)


フロリアンさんが、こちらを見ていました。


「アンタ、班長の事ばっか見てるわね」(フロリアン)


「っ……」(カラーノ)


図星でした。


「心配なのは分かる。でも今のアンタ、中途半端よ」(フロリアン)


その声は、いつもの軽い調子ではありません。


「この程度で死ぬ男じゃないわ。だったらアンタがやる事は何?」(フロリアン)


「……戦う事です」(カラーノ)


「違うわねぇ」(フロリアン)


フロリアンは、小銃を構えたまま笑いました。


「班長の援護よ」(フロリアン)


その瞬間、頭が少しだけ冷えました。守られる側じゃない。今の私は、“班長を支える側”としてここにいる。


「行きなさい。アタシ達が横を抑えるわ」(フロリアン)


「シャークちゃん、ガーツちゃん、右通路お願い!」(フロリアン)


「了解!」(シャーク)


「任せろ!」(ガーツ)


フロリアンが制圧射撃を浴びせる。その援護の中、私は小銃を握り直しました。そして――BJ班長のいる前線へ走り出します。


「班長! 援護します!」(カラーノ)


私はBJ班長の隣へ滑り込みながら、小銃を構えました。直後、前方遮蔽物から敵兵が飛び出す。


パァン!


咄嗟に撃つ。敵兵の肩口へ命中し、そのまま後方へ崩れ落ちました。ですが、すぐ別方向から反撃が返ってきます。


「伏せろ!」(BJ)


タタタタン!!


機関銃弾が頭上を薙ぎ払い、背後の壁へ火花を散らしました。


「……っ」(カラーノ)


敵の射線管理が異常に上手い。1つの射点を潰しても、即座に別位置から援護が飛んでくる。


「押し切れないね……」(シャーク)


「司令官が直接動いてるからよ」(フロリアン)


フロリアンさんが、別通路から制圧射撃を続けながら叫びます。


「敵の動きに無駄が無いわ!」(フロリアン)


その時でした。前方通路奥、一瞬だけ、防衛隊が左右へ分かれる。その中央を、黒い軍装の男が静かに横切るのが見えました。


「……!」(カラーノ)


「あれが、司令官…」(カラーノ)


次の瞬間には、周囲の護衛兵達が即座に射線を塞ぎます。


「完全に司令部式の守りだ」(BJ)


BJ班長が低く呟きました。


「完全に護られてる」(ガーツ)


「いえ……違うかも」(カラーノ)


「?」(BJ)


私は、敵防衛線を見つめました。敵兵達は、“司令官を中心”に動いている。だから統制が崩れない。ですが逆に言えば――


「隊長を動かす度に、防衛線が少し薄くなる……」(カラーノ)


「何?」(シャーク)


「さっき、一瞬だけ左側の援護が止まりました。司令官の移動に合わせて、護衛が射線を変えたからです」(カラーノ)


自分でも驚くほど、頭が冴えていました。敵は強い。ですが、“完璧”ではない。司令官を守る動きと、防衛線維持、その両方を同時にやろうとしている。だから僅かな綻びが生まれている。


「……成程な」(BJ)


BJ班長の目が、少し鋭くなりました。


「護衛ごと引き剥がせば、防衛線は崩れるか」(BJ)


「たぶん……」(カラーノ)


その時、再び敵側から統制射撃が飛んできます。


タタタタン!!


ですが今度は、敵の射線が見えていました。私は即座に遮蔽物へ身を滑り込ませます。


「カラーノちゃん、顔変わったわねぇ」(フロリアン)


「え……?」(カラーノ)


「やっと戦場へ戻ってきた顔してるわ」(フロリアン)


その瞬間、前方通路奥で、再び敵司令官の姿が見えました。


黒い軍装。周囲を固める護衛兵。そして、その中央で、アオトポヴォジュズは静かにこちらを見据えています。


まるで、“気付いたか”とでも言うようでした。


「全隊、前進だ」(アオトポヴォジュズ)


低い声が響いた直後、防衛線が一斉に動き始めます。


敵兵達が遮蔽物を乗り換えながら前進し、後方の司令官が射線を整理していく。先程までの防衛戦とは違う。今度は、こちらを押し潰すための前進でした。


「来るぞ!」(BJ)


タタタタン!!


凄まじい制圧射撃が通路を埋め尽くす。


「右側面、押されてる!」(ガーツ)


「下がるな! 射線維持!」(シャーク)


蒸気と硝煙の中、敵防衛隊が距離を詰めてくる。その中央には、敵司令官の姿もありました。


「……班長」(カラーノ)


私は小銃を握り締めながら、敵防衛線を睨みます。


護衛の動き、射線の切り替え、司令官の移動…見えてきた。あの防衛線は、決して崩せない訳じゃない。


「左護衛、また薄くなった……」(カラーノ)


敵司令官が動く度、防衛線には僅かな空白が生まれる。なら――そこを撃ち抜けばいい。


「班長、次に隊長が動いた瞬間、左側が空きます!」(カラーノ)


BJ班長が、小さく口元を吊り上げました。


「ようやく掴んだか」(BJ)


そして次の瞬間、敵司令官直属の防衛隊が、真正面から突撃を開始したのでした。


登場人物紹介

カラーノ……本作のヒロインで、GASTピットブル班所属

BJ……GASTピットブル班の班長で、圧倒的な戦闘力を誇る

シャーク……GASTピットブル班の副班長

フロリアン……GASTピットブル班所属で、リーダーシップも高い

ガーツ……GASTピットブル班所属で、狙撃に自身あり

アオシ・アオトポヴォジュズ……第3領海警備隊隊長

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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