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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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222/261

第220話 沈まぬ司令官

カラーノです。


佐賀関海軍基地内部は、もう原型を失い始めていました。天井配管から漏れ続ける蒸気。途切れた照明。各所で発生している火災。湿った通路には、海水と血液が混ざった水溜まりが広がっています。それでも、敵の抵抗は終わりません。むしろ、司令区画へ近付くほど、敵の動きは統制され始めていました。


「また来る!」(ガーツ)


通路奥から、敵兵達が飛び出してきます。先程までのような、半ば混乱した突撃ではありません。遮蔽物を使い、交互に援護射撃を行いながら、こちらの前進を遅らせてきます。


「……動きが変わったねぇ」(エルメス)


「指揮系統が戻ってる」(BJ)


BJ班長は即座にそう断言しました。


「まだ、上が生きてるな。ここまで統制を戻せる奴は限られる。しかも、基地構造まで利用してやがる」(BJ)


「嫌なタイプだねぇ」(シャーク)


「正面から強いだけじゃないって事ね」(フロリアン)


パァン!


BJ班長の射撃が、前進してきた海軍兵を撃ち倒します。しかし、後続がすぐに負傷兵を引き摺って後退しました。


「撤退も統制されてる……」(カラーノ)


「さっきまでと別物だね」(シャーク)


基地全体は崩れている。それなのに、この区画だけは、まだ“軍隊”として機能していました。その時です。ガコン――という重い音と共に、前方隔壁が閉鎖されました。


「隔壁閉鎖!」(フロリアン)


「ちっ、進路制御されてるぞ!」(BJ)


直後、別通路側から機関銃掃射が飛んできます。


タタタタタン!!


「右警戒!」(シャーク)


私達は即座に遮蔽物へ飛び込みました。敵は、こちらを司令区画直通ルートへ入れさせないように動いています。


「誘導されてる……?」(カラーノ)


「だろうな」(BJ)


BJ班長は、閉鎖された隔壁を睨みながら舌打ちしました。


「基地構造を完全に使ってやがる。まだ司令官は生きてるぞ」(BJ)


その言葉に、空気が少しだけ重くなります。今、私達を相手にしているのは、この巨大基地そのものを動かしている相手でした。




その頃――


司令区画。


赤色警報が鳴り続ける室内で、アオシ・アオトポヴォジュズ海軍大佐は、静かに戦況図を見つめていた。既に、複数区画が黒く沈んでいる。


沿岸砲兵大隊、通信管制班、海中即応隊第2中隊etc…


どれも応答は消失していた。


「隊長、北側通路も突破されます!」(ラックス)


副官であるロザ・ラックス中佐が、焦燥を隠せず報告する。だが、アオトポヴォジュズは動かなかった。


「予想より早いな」(アオトポヴォジュズ)


静かな声だった。その落ち着きが、逆に司令室全体を張り詰めさせる。


「海中側へ後退しましょう!」(ハッジ)


ハッジが叫ぶ。


「このままでは司令区画まで――」(ハッジ)


「ならん」(アオトポヴォジュズ)


短く遮った。


「まだ、基地は生きている」(アオトポヴォジュズ)


彼は、ゆっくりと立ち上がる。その瞬間、司令室の空気が変わった。誰もが理解する。第3領海警備隊司令が、ついに前線へ出るのだと。


アオトポヴォジュズは、静かに軍装の上着を脱いだ。


副官達が息を呑む。代わりに彼が手に取ったのは、黒色の戦闘服だった。海軍士官用の儀礼軍装ではない。実戦用装備。幾度も戦場を潜り抜けた者だけが持つ、擦れ傷だらけの装備だった。無言のまま袖を通し、胸部装備を固定する。その動作には、一切の迷いが無かった。そして最後に、壁際へ立て掛けられていた軍刀と短機関銃を手に取る。


「ラックス、中枢防衛隊を再配置しろ」(アオトポヴォジュズ)


「はっ!」(ラックス)


「ハッジ、残存兵へ伝達。司令区画を放棄する者は処断する」(アオトポヴォジュズ)


「了解しました!」(ハッジ)


命令が飛ぶ。その瞬間から、崩壊しかけていた司令区画防衛線が、再び動き始めた。




再びカラーノです。


沈黙していた防壁砲座が再起動し、閉鎖隔壁が順番に作動する。撤退していた敵兵達も、再び持ち場へ戻り始めていました。


「……凄い」(カラーノ)


思わず口から漏れていました。


部下は討たれ、基地も崩れている。それでも、たった一人の指揮官が前線へ出ただけで、敵兵達の動きが変わっていく。司令官が生きている限り、この基地はまだ死なない。


「敵ながら、大した男ね」(フロリアン)


「敵を褒めてどうする」(BJ)


BJ班長は、小銃を持ち直しました。グーリエ星人を断固として認めない姿勢は変わらずですが、その目は、完全に“強敵を見る目”へ変わっています。


「だが、あいつを殺さねぇ限り、この基地は止まらん」(BJ)


その直後、司令区画方面から、重い警報音が鳴り響きました。まるで、基地そのものが、最後の抵抗を始めたようでした。


その直後、閉鎖されていた前方隔壁が、重い駆動音と共にゆっくり開き始めます。


ガゴン……ガゴン……


「開く?」(シャーク)


「来るぞ」(BJ)


BJ班長の声と同時に、通路奥の照明が一斉に点灯しました。湿った長い直線通路、その最奥へ、敵兵達が整然と並んでいます。


先程までの混乱した兵達ではなく、隊列を維持し、射線を分担し、完全に統制された防衛陣形でした。


そして、その中央――黒い軍装へ海水を滴らせながら、一人の男が静かに立っていました。


「……あいつか」(BJ)


その周囲だけ、空気が違っていました。


歴戦の兵士達が自然と道を空けている。“司令官”ではなく、“戦場の中心”として存在していました。




敵司令は、小さく銃を持ち上げ、直後――


タタタタタン!!


統制された銃撃が、一斉に通路を埋め尽くします。


「散開!!」(BJ)


火花と蒸気が爆ぜる中、私達は遮蔽物へ飛び込みました。ですが――敵の射撃は、今までとは比べ物にならないほど正確でした。


「!!」(アオトポヴォジュズ)


BJ班長が銃弾を避け、敵司令に切りかかります。「ガキィン!」という金属音が響き、鍔迫り合いが展開されます。


「やるな。」(アオトポヴォジュズ)


敵司令官は不敵い笑いました。そして…


「ふん!」(アオトポヴォジュズ)


BJ班長を腕で押し、間合いを取ると、隊列にいた1人の敵兵が班長へ向けて発砲します。


パァン!


「班長!」(カラーノ)


「かすり傷だ。心配いらん。」(BJ)


BJ班長が傷を負う。この事実に私は動揺してしまいました。それほどの敵という事が分かります。


登場人物紹介

カラーノ……GASTピットブル班所属で、本作のヒロイン

BJ……GASTピットブル班の班長

シャーク……GASTピットブル班の副班長

フロリアン……GASTピットブル班所属、大柄で筋骨隆々の体格をしたオネエ

エルメス……GASTピットブル班所属、父は元米海兵のハーフ

ガーツ……GASTピットブル班所属、狙撃の腕に自信有

アオシ・アオトポヴォジュズ……第3領海警備隊の隊長、人魚族

ロザ・ラックス……同副隊長、人魚族

ハル・ハッジ……同司令部所属、リザードマン

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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