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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第219話 まだ、生きている

カラーノです。


佐賀関海軍基地内部は、さらに混乱を深めていました。先程まで激しかった敵の射撃は、確かに弱くなっています。ですが、それは敵が諦めた訳ではありません。むしろ逆でした。崩れ始めた戦線を無理矢理繋ぎ止めようとして、各所で小規模な抵抗が乱発しているのです。湿った通路の奥から、また敵の怒声が響きました。


「また何か叫んでるねぇ」(エルメス)


「今度は分かる?」(シャーク)


「いや、“通信”と“司令”と言っているのは分かった。」(BJ)


その時でした。パパッ――と、基地照明が数回点滅します。


「停電?」(カラーノ)


「違うな。電源系統が死に始めてる」(BJ)


その直後、無線へ別部隊から通信が飛び込みました。


『こちらスパーダ―班。通信棟外縁部へ到達』(ユノラフ)


『内部、かなり混乱してる。警備配置も穴だらけだ』(ユノラフ)


「来たか」(BJ)


シャークが小さく口笛を吹きました。


「敵さん、完全に手が回ってないねぇ」(シャーク)


『通信棟内部へ侵入する。以後、短通信へ移行』(カバナー)


通信が切れました。


「短いねぇ」(エルメス)


「長話する暇はないわ」(フロリアン)




その頃――基地通信管制室では、怒号が飛び交っていた。


「第七中継回線、完全断線!」


「西区画との通信繋がりません!」


「沿岸砲指揮所、応答消失!」


ステフェン・ブナ海軍少尉は、苛立ちを隠さず端末を叩いた。


「復旧を急げ! 司令区画との回線だけでも維持しろ!」(ブナ)


だが、通信兵達の顔には既に焦燥が浮かんでいた。モニターには大量のエラー表示。基地内各所の味方識別信号も、次々と消えていく。そして、その隣では、アルシャーイ・テルム曹長が静かに端末を見つめていた。


「……もう駄目です」(テルム)


「何だと?」(ブナ)


「敵は通信網の構造そのものを理解しています。応急復旧では追いつきません」(テルム)


テルムは、崩れ続ける認証ログを見つめたまま呟いた。


回線遮断、識別信号消失、内部認証の書き換え。どれも場当たり的な妨害ではない。こちらの通信構造を理解した上で、中枢から切り裂いている。


「敵電子戦部隊、相当高度です。こちらの認証網を逆利用しています」(テルム)


他の通信兵達の顔からも、既に余裕は消えていた。


誰もが理解し始めている。この基地は、“外から破壊されている”のではない。内部から、順番に殺されているのだと。


テルムは冷静だった。だからこそ、その声には絶望が混じっていた。


「敵電子戦部隊、相当高度です。こちらの認証網を逆利用しています」(テルム)


脳裏に浮かぶのは、先程から断続的に侵入を繰り返してくる“不気味な電子痕跡”。姿も見えない敵。だが確実に、自分達の中枢へ喰い込んできている。


「……後退を進言します」(テルム)


「馬鹿を言うな!」(ブナ)


ブナは怒鳴った。


「通信棟を失えば基地全体が死ぬ! ここを放棄する気か!?」(ブナ)


「既に半分死んでいます」(テルム)


空気が凍った。ブナの顔が引き攣る。その瞬間だった。照明が落ちた。


「っ!?」(ブナ)


一瞬の暗闇。次の瞬間――


パシュッ。


乾いた消音射撃音。


「が……っ」


通信兵の一人が、額から血を流して倒れた。


「敵襲! 敵襲!」(ブナ)


だが、敵は見えない。暗闇の奥。湿った通路の向こう。そこから、黒装備の隊員達が静かに現れた。


「制圧開始」(テレル)


パシュッ。


また一人倒れる。


「照明を戻せ! 防衛線を――」(ブナ)


ブナが叫びかけた瞬間。背後から伸びた腕が、その喉を掴んだ。


「……っ!?」(ブナ)


短刀が、一瞬で首筋を裂く。血飛沫が制御盤へ散った。ブナは声も出せないまま崩れ落ちる。


「班長、管制室制圧完了」(タック)


テルムは、小さく息を吐いた。


「……やはり来た…」(テルム)


逃げなかった。いや、逃げられないと理解していた。ハイエルフ特有の長耳が、小さく震える。


「でも、最期まで足掻く。……通信兵は、最後まで回線を守るものだから…」(テルム)


テルムは拳銃に手を伸ばす。その瞬間。


パシュッ。


消音弾が、テルムの胸を撃ち抜いた。彼女は端末へ寄り掛かるように崩れ落ちる。そして――基地通信網は、完全に沈黙した。




基地司令区画では、沈黙する端末が増え続けていた。


「第2沿岸重砲大隊、応答途絶!」


「通信管制班、西区画との回線断絶!」


怒号が飛び交う中でも、第3領海警備隊司令、アオシ・アオトポヴォジュズ海軍大佐は、椅子へ深く腰掛けたまま動かなかった。彼は、ゆっくりと作戦盤を見上げる。赤色表示ばかりだった。


沿岸砲兵大隊、海中即応隊、通信管制班etc…


既に複数区画が制圧されている。


「……予想以上だな」(アオトポヴォジュズ)


静かな声だった。だが、側近達の顔には焦燥が浮かんでいる。


「大佐、司令区画防衛隊を下げますか!?」(ロザ・ラックス海軍中佐)


「海中側へ撤退すべきです!」(ハル・ハッジ海軍中尉)


だが、アオトポヴォジュズは首を横へ振った。


「退けば、この基地は終わる」(アオトポヴォジュズ)


短い言葉だった。だが、その場にいた誰も反論できなかった。


既に沿岸砲兵大隊との連絡は途絶。海中即応隊も沈黙。通信管制班からの応答も弱まり始めている。それでも、司令区画だけは辛うじて機能していた。だからこそ、アオトポヴォジュズは席を立たない。司令官が退けば、その瞬間、第3領海警備隊は完全に瓦解する。それを、彼自身が誰より理解していた。


短い言葉だった。しかし、その一言で司令室は静まり返る。彼は理解していた。既に戦況は、防衛戦ではない。“基地機能を何分維持できるか”の段階へ入っている。


「まだ、私は生きている」(アオトポヴォジュズ)


副官のラックスが言葉を失う。アオトポヴォジュズは、ゆっくりと海図から視線を上げた。


「第3領海警備隊は、私が沈むまで終わらん」(アオトポヴォジュズ)


その瞳だけが、静かに燃えていた。


登場人物紹介

アオシ・アオトポヴォジュズ

種族・性別:人魚族の男性

所属・階級:海軍大佐、第3領海警備隊隊長


ロザ・ラックス

種族・性別:人魚族の女性

所属・階級:海軍中佐、第3領海警備隊副隊長


ハル・ハッジ

種族・性別:リザードマンの男性

所属・階級:海軍中尉、第3領海警備隊司令部所属


カラーノ……本作のヒロイン、GASTピットブル班所属

BJ……GASTピットブル班の班長

シャーク……GASTピットブル班の副班長

エルメス……GASTピットブル班所属、アメリカ人とのハーフ

フロリアン……GASTピットブル班所属、大柄で筋骨隆々な体格をしたオネェ

カバナー……GASTスパイダー班の班長

テレル……GASTスパイダー班の副班長

ユノラフ……GASTスパイダー班所属

タック……GASTスパイダー班所属

ステフェン・ブナ……第3領海警備隊・基地通信管制班長

アルシャーイ・テルム……基地通信管制班所属

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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