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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第218話 砲火の果て

カラーノです。


佐賀関海軍基地内部は、もう完全に戦場でした。警報音、蒸気漏れ、銃声、怒号。湿った通路には硝煙が滞留し、足元には海水と血が混ざった水溜まりが広がっています。


それでも敵は止まりません。通路奥から、帝国海軍兵達の怒声が飛び交っていました。


言葉の意味は分かりません。ですが、慌てている事だけは伝わってきます。


「何て言ってるの?」(エルメス)


「分からん!」(シャーク)


「たぶん、“砲塔止まった”とか、その辺だ」(BJ)


「分かるんですか?」(カラーノ)


「単語だけだ。長年殺し合いしてるとな」(BJ)


ベテランは簡単な言葉なら理解しているという噂は本当だったようです。


その時、基地全体が大きく揺れました。


ドゴォォン!!


「うわっ!?」(カラーノ)


天井配管から蒸気が噴き出し、照明が激しく明滅します。


「また爆発!?」(エルメス)


「違うな……重砲だ」(BJ)


BJ班長が、僅かに眉を顰めました。遠くから、低く腹へ響くような砲撃音が続いています。おそらく、まだ沿岸部では戦闘が続いているのでしょう。


「浪城大隊辺りが暴れてるんじゃない?」(シャーク)


「浪城大隊なら、壁ごと吹き飛ばして進んでそうだねぇ」(エルメス)


「あり得る……」(ガーツ)


実際、この基地は広すぎました。


海中ドック区画、沿岸砲台区画、循環制御区画、通信棟…さらに海中側施設まで存在しています。こちらが一つ制圧しても、別区画ではまだ戦闘が続いている。そんな状況でした。


その時、無線へ別部隊から通信が入ります。


『こちらアマゾネス班! 沿岸砲指揮区画を制圧したわ!』(ビービ)


背後では、まだ銃声と爆発音が響いていました。完全制圧とは程遠いようです。


『河童共がしぶといのよ!』(ビービ)


『そっちは?』(ビービ)


「通信棟方面を進行中だ」(BJ)


『了解。なら、そっちへ流れる敵を少し減らしてあげるわ』(ビービ)


直後、遠方で再び爆発音が響きました。


「うわ、絶対また何か壊したよ、あの人達」(シャーク)


「味方ながら怖いわねぇ……」(フロリアン)


ですが、そのおかげか、先程まで激しかった敵側の射撃が、少し弱まっていました。


「敵戦力が分散し始めてるな」(BJ)


「各区画が同時に襲われてるからでしょうか?」(カラーノ)


「ああ。もう基地全体が火事みたいなもんだ。敵も、どこへ兵を回すか決め切れてない」(BJ)


BJ班長はそう言いながら、小銃の弾倉を交換します。


「こうなると、敵は“どこを守るか”を選ばなきゃならん」(BJ)


その声は冷静でした。ですが逆に言えば、それだけ追い詰めているという事でもあります。すると今度は、別方向から新たな怒号が響きました。


意味は分かりません。ですが――


「……あれ、“司令区画”って言ってるな。あと、“隊長”とも言ってる」(BJ)


BJ班長は、通路奥を睨みました。


「ようやく、大物が見えてきたかもな」(BJ)




その頃、沿岸重砲指揮区画では――


「第1沿岸砲兵大隊、後退しています!」


「第3砲撃陣地、敵突入!」


怒号が飛び交う中、マシャーム・ンテス少佐は、血走った目で制御盤を睨み続けていた。


「砲を止めるな!」(ンテス)


「しかし少佐、このままでは――」


「黙れ! 海岸線を抜かれれば終わりだ!」(ンテス)


既に理解していた。基地全体が崩れ始めている。


通信は混乱、循環設備も停止寸前、海中即応隊とも連絡が取れない。だが、それでも沿岸砲だけは生きていた。だからこそ、ンテスは退かなかった。


「海軍は最後まで海を守る!」(ンテス)


その瞬間だった。


ドゴォォン!!


砲撃指揮区画側面の防爆扉が、内側へ吹き飛ぶ。


「なっ――!?」


白煙の中から突入してきたのは、アマゾネス班だった。


「じめじめした場所ねぇ!」(ビービ)


「敵白兵部隊だ!」 


沿岸砲兵達が慌てて短機関銃を構える。だが、距離が近すぎた。キーラが滑り込むように突撃し、敵兵の膝を撃ち抜く。


「ぎゃっ!」


別方向では、スライスが散弾銃を至近距離で叩き込み、砲兵達を吹き飛ばしていた。


砲兵部隊は、本来白兵戦の専門ではない。近接戦へ持ち込まれた時点で、一気に崩れ始めた。


「防衛線を維持しろ!」(ンテス)


ンテス自身も拳銃を抜き、低姿勢で射撃しながら前へ出る。素早い動きで遮蔽物を渡り、ビービへ連射した。


だが。


ガギィン!!


ビービの銃剣が、拳銃ごとンテスの腕を叩き潰す。


「ぐぁぁぁっ!!」(ンテス)


「しぶとい!」(ビービ)


血を吐きながらも、ンテスは倒れなかった。


「海軍は……海を捨てん……! 海を失えば、我々は終わる……!」(ンテス)


その叫びと同時に、彼は最後の手榴弾を抜こうとする。しかし、その前にキーラの銃剣が喉元へ突き刺さった。


ンテスの身体が崩れ落ちる。その瞬間、沿岸砲指揮区画の制御盤が、一斉に沈黙した。


『第2沿岸砲塔、制御不能!』


『砲撃指揮所、応答ありません!』


『少佐殿が――』


帝国海軍兵達の悲鳴のような怒号が、基地内無線へ飛び交う。


「……指揮官を殺られたっぽいねぇ」(エルメス)


「騒ぎ方が完全にそれだな」(BJ)


敵側の射撃密度が、目に見えて落ち始めていました。


登場人物紹介

カラーノ……本作のヒロイン、GASTピットブル班所属

BJ……GASTピットブル班の班長

シャーク……GASTピットブル班の副班長

フロリアン……GASTピットブル班所属

エルメス……GASTピットブル班所属

ガーツ……GASTピットブル班所属

ビービ……GASTアマゾネス班の班長

スライス……GASTアマゾネス班の副班長

キーラ……GASTアマゾネス班所属

マシャーム・ンテス……河童族の海軍少佐、第2沿岸重砲大隊長

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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