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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第217話 海へ逃げる癖

海中即応隊・海中戦闘大隊第2中隊所属、ナヤ・ナーム兵士長は、通路奥で応戦する敵部隊を睨みつけていた。


敵指揮官らしき男は、自分達を「雑魚」と切り捨て、部下へ掃討を命じている。数ではこちらが勝っている。しかも、ここは基地内部。海軍側の庭だ。


それにも関わらず、あの男は、まるで勝利を疑っていなかった。


「(下等種族特有の無能さか。敵の力量も測れんとはな)」(ナーム)


ナームは鼻を鳴らした。基地機能こそ混乱しているが、白兵戦ならば話は別だ。海中に引きずり込んでやる。そう息巻く。まして相手は陸軍ではない。特殊部隊とはいえ、所詮は陸の兵士。海兵戦で遅れを取る理由はない。


その後方では、キノス・ブン二等兵が緊張した面持ちで銃を握っていた。


濡れた手袋が滑る。敵襲警報、基地各所の爆発、通信断。そして、既に何隊も連絡を絶っている。二等兵である彼にとって、それは十分過ぎる恐怖だった。


「ブン、何を硬くなっている」(ナーム)


「は、はい……ですが、その……敵はもう中央区画まで――」(ブン)


「慌てるな。通路戦は我々が有利だ」(ナーム)


ナームはそう言いながら、ブンへ前進を命じた。


「第2分隊は左通路。第3分隊は上段配管側へ回れ。挟み込むぞ」


「了解!」


ベテラン軍曹の命令が飛ぶ。湿気を帯びた通路へ、兵達が散開する。その直後だった。


パァン!


最後尾を走っていた兵士の頭部が跳ね上がる。


「なっ――」(ナーム)


続けて――


タタタタン!


低い連射音。側面配管裏へ潜んでいた海兵が、胸部へ数発被弾し崩れ落ちた。


「右だ!」(ナーム)


だが、次の瞬間には、別方向から銃撃が飛んでくる。


「ぎゃっ!」(ブン)


「ブン!」(ナーム)


「上だと!?」(ナーム)


ナームは焦っていた。本来なら、こんな湿った通路戦ですら、自分達の領域だった。


海中戦闘大隊は、水圧下での3次元機動を前提に訓練されている。遮蔽物利用、側面移動、死角潜行。海中ならば、陸兵など比較にならない。だが今の彼らは、“海へ戻れない”。


循環設備は不調。海中ドックも混乱している。増援要請も通らない。結果、本来なら海へ引きずり込む側の部隊が、狭い陸上通路へ押し込められていた。



通路奥、コンテナ脇から、褐色のWAC隊員が89式小銃を構えたまま顔を出す。


エルメスだった。


「海兵って、配管好きだよねぇ」(エルメス)


「何……!?」(ナーム)


「あと、遮蔽物使う時、身体半分出てたよ?」(エルメス)


軽い口調だった。だが、射撃は正確だった。


パァン!


今度は、上段配管へ登ろうとした半漁族兵の肩を撃ち抜く。


「ぐわぁ…」


「位置を読まれている? そんな馬鹿な…!」(ナーム)


その時、別方向からシャークも突入してきた。


「エルメス、やるじゃん」(シャーク)


「アタシ達も続くわよ!」(フロリアン)


フロリアンが煙幕弾を転がし、ガーツが通路中央へ制圧射撃を浴びせる。その隙に、エルメスが低姿勢で前進した。


「そこぉ!」(エルメス)


パァン!


ナームの隣にいた兵士が倒れる。


「くっ……散開しろ!」(ナーム)


だが遅い。既に主導権は奪われていた。海中戦闘大隊は、“自分達の戦い方を読まれている”事で混乱していた。その時、エルメスが小さく笑った。


君達(水棲種)ってさ、“海へ逃げる動き”が癖になってるんだよねぇ」(エルメス)


ナームの目が見開かれる。完全に見抜かれていた。


「くそっ…」(ナーム)


「海へ……戻れ……」(ナーム)


パァン。


ナームの身体が崩れ落ちる。湿った通路へ血が広がり、そのまま動かなくなり、そして息絶えた。




「ぐ…」(トシュク)


ダフィット・トシュク海軍中尉は、想定外の苦戦に腹を立てていた。海では敵がいない鯱族。それが、陸では下等生物一匹に歯が立たないでいた。それがトシュクは許せなかった。


「どうした? さっきまでの威勢が無くなってるぞ?」(BJ)


「頑丈なのは腹立つがな」(BJ)


BJは、無理に急所を狙わなかった。肩、脇腹、太腿。確実に動きを鈍らせる場所から順に斬り裂いていく。ダメージは確実にあるが、鍛え上げられた肉体が致命傷を許さない。しかし、トシュクにとって、耐えるのが限界だった。


「(くそ、勝ち筋が見えない。銃弾もかわすとは…化け物め。)」(トシュク)


「下等生物め」と思ったが訂正した。その”下等生物”に手も足も出ない。そんな相手を下等生物と称するのは滑稽極まりない。だが、自分を下等生物とは思わないプライドだけは残っていた。


「(認めよう、こいつは強い)」(トシュク)


「貴様、名は?」(トシュク)


トシュクは、目の前の男を認め、兵士として、いや戦士として最期まで戦う決意をした。冥途への土産として、彼の名前を知りたかった。


「害虫相手に、律儀に名乗る趣味は無ぇよ」(BJ)


BJは小銃に武器を変え、トシュクの傷口を何度も撃った。トシュクは息絶えた。


「制圧完了だ。一応な」(BJ)




「エルメスちゃん、大活躍だったわねぇ。海兵の特徴を掴んでたわ」(フロリアン)


「こう見えて、元米海軍の娘よ!」(エルメス)


「それ、関係ある?」(シャーク)


「ないねぇ」(エルメス)


「無いのかよ……」(ガーツ)


「皆さん凄いです。私は、まだまだですね。」(カラーノ)


「何言ってるの、カラーノちゃんも大活躍だったわよ!」(フロリアン)


「そうそう、あんたがいなかったら、犠牲0は有り得なかったんだから」(シャーク)


「ちゃんと戦ってたんだけどねぇ。描写って難しいよね」(エルメス)


「は、はぁ…」(カラーノ)



「おい、気を抜くな。奴等、次から次へ湧いてくる。」(BJ)


「了解!」


ピットブル班は、再び銃を握りしめ、臨戦態勢に入った。


登場人物紹介

ナヤ・ナーム

種族・性別:半漁族の男性

所属・階級:海軍兵士長、海中即応隊・海中戦闘大隊第2中隊


キノス・ブン

種族・性別:半漁族の男性

所属・階級:海軍二等兵、海中即応隊・海中戦闘大隊第2中隊


カラーノ……本作のヒロイン。GASTピットブル班所属

BJ……GASTピットブル班の班長

シャーク……GASTピットブル班の副班長

フロリアン……大柄で筋骨隆々の体格をしているオネェ

エルメス……アメリカ人と日本人のハーフ。父は元米海軍。成人して母の祖国・日本国籍を選んだ

ガーツ……GASTピットブル班所属

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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