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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第215話 海を失う者達

基地中央制御棟では、警報音が絶え間なく鳴り響いていた。


「第三沿岸砲塔、制御応答なし!」

「冷却循環路圧力低下!」

「通信中継塔、外部回線断続!」


怒号が飛び交う中、第3領海警備隊第2沿岸重砲大隊長、マシャーム・ンテス海軍少佐は、濡れた軍帽を乱暴に脱ぎ捨てた。河童族特有の深緑色の皮膚には煤が付着し、右頬には破片で切れた傷跡が走っている。


「沿岸砲を止めるな。海側が崩れれば、この基地は終わるぞ」(ンテス)


「ですが、管制系統が――」


「手動へ切り替えろ!」(ンテス)


ンテスは若きオペレーターに怒鳴り返す。


「海軍は陸軍とは違う。海を失えば逃げ場はない。ここで止める」(ンテス)



その頃、基地地下区画では、第12海洋整備中隊主任技師、コルカ・オウェル海軍大尉が、循環制御盤へ半ば覆い被さるように端末操作を続けていた。長い銀髪は、湿気で肌へ張り付き、人魚族用義足の関節部からは、駆動湯が僅かに漏れている。


「第3ポンプ再起動! 海水濃度を維持して!」(オウェル)


「駄目です、制御が戻りません!」


若い整備兵の悲鳴に近い声へ、オウェルは苛立ちを隠さず振り返った。


「戻らないんじゃない、戻すの! この基地は海水循環が止まったら終わるのよ!」(オウェル)


彼女は理解していた。ここは単なる港ではない。水棲種が長時間陸上活動を行うための、“生命維持施設”そのものだった。循環塔停止は、そのまま基地機能停止へ直結する。


さらに海中側では、別の混乱が起きていた。


「海中ドックへ敵侵入反応!」

「上陸部隊です!」


報告を受け、第2中隊長ダフィット・トシュク海軍中尉は、静かに牙を剥いた。鯱型獣人族特有の大型体躯。濡れた黒色戦闘装備の下では、筋肉が獣のように隆起している。


「数は?」(トシュク)


「不明。ただ、地上部隊と連携しています」


「……陸の兵隊か」(トシュク)


トシュクは小さく鼻を鳴らした。


「ならば海へ引き摺り込め。我々の庭で戦わせろ」(トシュク)


背後では、水中戦装備を着用した海中即応隊員達が、無言で銛銃と短機関銃を確認していた。



その一方、基地通信管制室。


薄青色のモニターには、大量のエラー表示が浮かび上がっている。


「また回線が飛んだ!?」(ステフェン・ブナ海軍少尉)

※基地通信管制班長


「違います、内部認証を書き換えられてます!」


通信兵達が混乱する中、アルシャーイ・テルム海軍曹長は、表示盤を睨み続けていた。ハイエルフ特有の長耳が僅かに震える。


「……外部侵入ではありません」(テルム)


「何だど?」(ブナ)


「こちらの認証網を理解した上で潜っている。相手、相当慣れていますね」(テルム)


テルムは高速で端末を操作しながら、小さく息を吐いた。


「嫌な相手ね……」(テルム)


その瞬間だった。基地西側通路で爆発が起きる。


ドゴォン!!


照明が明滅し、天井配管から火花が散った。


「西区画接敵!」

「地上部隊侵入!」


怒号が飛び交う。


そして――暗い通路奥から、自衛隊員達が突入してきた。


先頭を走るBJ班長が、低く叫ぶ。


「止まるな! 通信棟を落とせ!」


その直後、双方の銃口が一斉に火を噴いた。



基地中央通路では、既に激しい銃撃戦が始まっていた。海兵達がコンテナ陰から応戦し、特戦群隊員達が低姿勢のまま突き進む。湿った通路へ薬莢が散乱し、海水混じりの床へ血が流れていく。


その最中だった。基地全域の照明が、一瞬だけ暗転する。


「――っ!?」(オウェル)


地下制御室の表示盤へ、大量の赤色警告が浮かび上がった。


《循環補助系統停止》

《外部通信網切断》

《沿岸砲管制遅延発生》


オウェルの表情から、初めて余裕が消える。


「まさか……中枢回線まで入られたの……?」(オウェル)


その頃、通信管制室でも、テルムが静かに顔を上げていた。


「……駄目ね」(テルム)


「テルム!?」(ブナ)


「相手、通信妨害じゃない。基地そのものを殺しに来てる」(テルム)


遠くで、再び爆発音が響く。


ドゴォォン!!


揺れる基地天井から、海水が雨のように降り注いだ。その光景を見上げながら、ンテス少佐はゆっくりと歯を食い縛る。


「……海を奪われるぞ」(ンテス)


佐賀関海軍基地は今、初めて“陥落”という現実へ直面し始めていた。


登場人物紹介

マシャーム・ンテス

種族・性別:河童族の男性

所属・階級:海軍少佐、第3領海警備隊 第2沿岸重砲大隊長


コルカ・オウェル

種族・性別:人魚族の女性

所属・階級:海軍大尉、第12海洋警備隊 主任技師


ダフィット・トシュク

種族・性別:鯱族の男性

所属・階級:海軍中尉、海中即応隊 海中戦闘大隊 第2中隊長


ステフェン・ブナ

種族・性別:エルフの男性

所属・階級:海軍少尉、基地通信管制班長


アルシャーイ・テルム

種族・性別:ハイエルフの女性

所属・階級:海軍曹長、基地通信管制班所属


BJ……GASTピットブル班班長


※グーリエ星に存在する種族

鯱族……鯱のような見た目と性能がある種族。水中での動きは人魚族をも凌ぐ。陸では専用の義足が必要。陸では20時間程しか活動出来ず、動きも鈍くなる。

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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