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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第214話 意地

カラーノです。私達は敵の海軍基地、外縁部へ到達していました。


正直に言うと、海自の基地に似ていると想像していました。ですが、実際に目の前に広がっていたのは、海へ半分沈み込むように建設された、異様な施設群でした。巨大な海水循環塔。海中へ伸びる搬送レール。海面へ突き出した半水没式ドック。さらに、陸側施設の各所からは絶えず蒸気が噴き出しています。


「加湿装備?」(キーラ)


「水棲種向けだろう」(秋口)


基地全体が海へと繋がっていました。普通の軍港ではありません。あれは“陸へ無理矢理作った海”でした。その時です。私達の無線へ、小さくノイズが走りました。


『……こちら、ファルコン02。聞こえますか……?』(シシリア)


「あ、シシリアさん」(カラーノ)


電子戦部隊――ファルコン班所属のシシリアさんでした。私達と同じ時期にGASTに加入した女性です。相変わらず、自信なさそうな喋り方です。


『い、一応……基地側システムへの侵入に成功しました……。た、多分ですけど……』(シシリア)


「多分って、そんなんじゃ困るんだが…」(ベイケル)


『す、すみません……』(シシリア)


本当に申し訳なさそうな声でした。でも、ピート班長によると、シシリアさんの電子戦能力は非常に高いようです。ただ、本人に全く自覚がありません。


『基地内部の海水循環制御、通信中継、それと……沿岸砲管制にも少し干渉してます……』(シシリア)


「少し?」(ビービ)


『ぜ、全部止めると……敵も気付くので……。誤作動程度に抑えてます……』(シシリア)


ベイケルさんが小さく笑いました。


「十分だ。君は優秀だ」(ベイケル)


『ぁ……ど、どうもです……』(シシリア)


褒められ慣れていないのか、逆に困っているようでした。


『自信を持ちなさい!』(ピート)


ピート班長の叱咤激励が洩れています。


その間にも、基地側では混乱が起き始めていました。沿岸砲の一基が、不自然な方向へ旋回しています。さらに海水循環塔側では警報灯が点滅し、複数の帝国兵が慌ただしく走り回っていました。


「循環ポンプ圧力低下!」

「第三冷却路が応答しません!」

「通信中継が途切れているぞ!」


敵兵達の怒号が夜の基地へ響きます。その様子を双眼鏡で見ていたBJ班長が、小さく呟きました。


『ぁ……で、でも、長時間は無理です……。敵も復旧作業を始めてます……』(シシリア)


「十分だ。穴を開けるには、それで足りる」(BJ)


BJ班長は、静かに小銃を構えます。その隣では、ベイケルさん率いる特戦群1中隊が既に突入準備を終えていました。


「1中隊、侵入開始位置へ移動する」(ベイケル)


「了解」


「ノートン、お前は左警戒」(ベイケル)


「了解っす」(ノートン)


軽口を叩いていた時とは違い、全員の空気が一瞬で変わります。その時でした。海面側ドックから、複数の兵士が駆け上がってきます。


下半身が特徴的で、義足をしている。


「人魚だな」(秋口)


「人魚ですね」(カラーノ)


青白い肌と長い銀髪は、まるで物語の妖精みたいです。ですが、その表情には余裕がありません。呼吸は浅く、義足を支える動きも不安定でした。


「防衛戦へ急げ!」

「循環設備が止まり始めている!」

「早く海水層へ戻せ!」


かなり焦っていました。


私達は、水棲種が陸上活動に制限を持つことは把握しています。ですが、具体的な限界時間までは知りません。それでも、今の様子を見る限り、”長く陸へ縛り付けられる事”が、人魚にとって相当な負担なのは間違いありませんでした。


「成程…海へ戻れなくなるだけでも、かなり消耗する訳か」(秋口)


その直後。


ドオォン!


「突入班、接敵!」

「敵襲! 敵襲!」

「地上部隊だ!」


特戦群1中隊が外周警備線へ接触したのです。敵も即座に応戦します。


「俺達も行くぞ」(BJ)


「了解!」(カラーノ)


目の前の敵は河童族にリザードマン。先ほど見た人魚族よりも遥かに陸戦適正が高く、鋭い動きを見せます。瓦礫とコンテナを使いながら、低姿勢で射撃してきます。


「河童が前に出たわ」(フロリアン)


「奴らは陸戦慣れしてる。油断するな!」(秋口)


銃撃戦が始りました。ですが、その最中でも、基地側の混乱は収まっていません。


『つ、通信妨害拡大中……。敵指揮系統、一部混線してます……』(シシリア)


「よくやった、シシリア。かなり助かってる」(BJ)


『ぁ……は、はい……』(シシリア)


少しだけ、嬉しそうな声でした。


「(班長、口は悪いけど、褒める時は褒めるのよねぇ)」(カラーノ)


その時、沖合で、巨大な爆炎が上がります。炎上していた護衛艦“荒潮(あらしお)”が、なおも主砲射撃を継続していました。艦首を破壊されながら、それでも佐賀関沿岸砲へ砲撃を浴びせ続けています。


「まだ粘っている…」(ガーツ)


「早く避難しないと死んじゃうよ~」(エルメス)


「残念だけど、救命ボートでは水棲種から身を守るのは難しいわ。それに、彼ら……命続く限り、砲撃を止めない気だわ」(フロリアン)


その砲撃のおかげで、敵沿岸部隊の注意は、海側へ引き寄せられました。


荒潮(あらしお)”の主砲が再び火を噴きます。砲身の一部は既に焼け焦げ、艦体も大きく傾いていました。それでも砲撃だけは止まりません。


「海自の覚悟を無駄にするな、絶対墜とすぞ!」(浪城)


BJ班長が、海軍基地中央部を見据えます。


「今だ、沿岸砲と通信施設を潰す」(BJ)


「了解」


「第1中隊は右翼警戒、浪城大隊は中央突破、アマゾネス班は後続支援へ回れ!」(BJ)


「てめぇが命令するんじゃねぇ! だが、俺達に中央突破させるのは良い判断だ!」(浪城)


「任せろ!」(ベイケル)


「了解したわ! 任せて!」(ビービ)


命令と同時に、私達は一斉に動き出しました。燃える海を背にしながら、佐賀関海軍基地内への突入が始まったのです。


登場人物紹介

カラーノ……本作のヒロイン

キーラ……GASTアマゾネス班所属

秋口あきぐち 将光しょうこう……水機団所属

シシリア……GASTファルコン班所属

ピート……GASTファルコン班の班長

BJ……GASTピットブル班の班長

ノートン……特戦群第1中隊所属

フロリアン……GASTピットブル班所属

エルメス……GASTピットブル班所属

ガーツ……GASTピットブル班所属

浪城なみしろ げき……第一空挺団第2普通科大隊長

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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