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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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213/261

第211話 気付いた時には

カラーノです。無事、敵の機械化歩兵部隊を撃退しました。しかし、その代償として、浪城大隊から5名の死傷者を出し、リッチ班のヒュームさんが、左腕を欠損する重傷を負ってしまいました。


戦闘終了後の旧小倉南区は、奇妙な静けさに包まれていました。つい数十分前まで、迫撃砲と機関銃弾が飛び交っていたとは思えません。崩れた立体駐車場の周囲では、燃え尽きた装甲車両から黒煙が上がり続け、瓦礫の隙間では衛生隊が負傷者搬送を行っていました。


浪城大隊の隊員達も、無言のまま弾薬確認と警戒を続けています。誰も油断していませんでした。戦闘終了直後が最も危険だからです。


実際、GASTの皆さんも、戦闘後とは思えないほど静かでした。特にリッチ班の空気は重かったです。


ヒュームさんは、応急処置を受けながら、一言も弱音を吐きませんでした。ただ、失った左腕の断面を見つめる目だけが、妙に静かだったのを覚えています。


アイブルさん達も、無理に励ますような事は言いませんでした。普通科なら、「大丈夫です」「また戦えます」と声を掛けていたと思います。でも、GASTの人達は違いました。失ったものを、簡単な言葉で誤魔化さない。


だからこそ余計に、あの沈黙が重かったです。


ですが…それでも、誰もヒュームさんへ「もう終わりだ」とは言いませんでした。GASTは、そういう部隊ではないのでしょう。



戦闘終了から十数分後、後方司令部から暗号通信が入ります。発信元は、GAST電子戦部隊――ファルコン班。


九州へは上陸していませんが、ファルコン班は、後方から帝国軍通信網への侵入を続けていました。


「こちらファルコン02。鹵獲端末と傍受通信の照合が終わった」(モンソン)


通信越しに聞こえてきた声に緊張を感じます。まるで徹夜明けの技術者みたいな声です。


「敵陸軍基地の位置を特定。若松区鴨生田四丁目周辺。大規模司令部施設の可能性が高い」(モンソン)


その瞬間、周囲の空気が変わりました。浪城大隊司令部でも、地図担当隊員達が即座に座標照合を始めます。


そして、ファルコン班の報告は、それだけでは終わりませんでした。


「あと、海軍側も割れた。佐賀関方面に大規模港湾基地あり。艦艇補給と揚陸拠点を兼ねてる」(モンソン)


九州北部全域へ広がっていた敵戦力の輪郭が、ようやく見え始めたのです。




―北九州統治軍 陸軍基地―


コンクリート壁面へ投影された戦況図には、小倉南区一帯の戦闘記録が赤色表示されていた。失われた車両、途絶した通信、撃破地点。更新される度に、被害表示が少しずつ増えていく。


重苦しい沈黙の中、最初に口を開いたのは、第3領海警備隊・上陸阻止大隊副大隊長、シュノン・メンケント海軍大尉だった。


「海岸線防衛は破綻しました」


彼女は悔しさを押し殺した声で続ける。


「敵が橋梁工作や海上陽動を行う事自体は想定していました。しかし、制圧速度が異常でした。対空陣地沈黙から空挺降下までが早すぎます」(メンケント)


「上陸阻止部隊を上回るスピードか。」(フォンボス)


「にわかに信じがたいが…これまでは、上陸を許すことはなかった。」(マイサム・ヤバタノボシ陸軍中佐)

※マコンベリムト作戦参謀部 陸軍担当長


北海道(ガム)を奪った連中だ。テリムトを放棄した以上、次に来るなら九州(ここ)しかない」(ヒアカッペ)


「私も大したことないと思っていましたが、連中はかなりの手練れでした。」(ラキトゥス)


ラキトゥスは戦況図へ視線を落とす。


「装甲車を狙う優先順位、熱源探知への対処、移動速度。あれは偶然ではない。こちらの戦い方を理解した上で、潰しに来ています」(ラキトゥス)


「連中、益々練度が上がってるな」(ヤバタノボシ)


「街の様子はどうだ?」(ヒアカッペ)


「非戦闘員への被害は軽微でした」(コスジェカ・エウクリッズ陸軍中佐)

※第8北九州統治軍・第41市街地警戒連隊長


「軽微?」(ヤバタノボシ)


「被害が0ではない、ということだな」(ヒアカッペ)


「ええ、子どもの遺体もありました」(エウクリッズ)


「…何てことを。これでは、我々が守っていると言えない…」(フォンボス)


「敵は特殊部隊を先行投入しています。しかし、投入規模は少数です」(ヤバタノボシ)


「橋梁を失った状態で、大規模投入は困難だからだろう」(ヒアカッペ)


ラキトゥスが戦況図へ視線を向けた。


「連中は固定索と鉤縄を使用して進入しています。橋梁上では遮蔽物が存在せず、こちらの火力へ一方的に晒される。通常なら、あの方法は消耗が大きすぎて成立しません」(ラキトゥス)


「海上側も同様でした」(メンケント)


彼女は悔しさを押し殺しながら続ける。


「陽動部隊で沿岸火器や我々上陸阻止大隊を引き付け、その隙に上陸しています。しかし、大隊と固定砲台による迎撃で、相当数を失っているはずです」


「それでも上陸したか」(フォンボス)


「はい。損耗を許容した上で、強行しています」(メンケント)


室内へ短い沈黙が落ちた。


無謀ではない。理解した上で、なお踏み込んできている。その事実が逆に不気味だった。


「まずは、対空装備を取り戻す。そうすれば、敵は援軍を呼べなくなる。門司に援軍を派兵しましょう。」(ヤバタノボシ)


「うむ…」(ヒアカッペ)


その時だった。


司令室後方の非常灯が、一瞬だけ明滅する。誰かが異変へ気付くより先に、室内後方の暗闇から低い声が響いた。


「情報提供、ありがとう」


全員の視線が一斉に向く。そこには、黒い戦闘服を纏った男が立っていた。誰一人として、扉の開閉を見ていない。外周警備からの警報も無かった。まるで、最初からそこにいたかのようだった。


「誰だ!?」(ヤバタノボシ)


護衛兵が反射的に銃口を向ける。しかし、その瞬間には、男の姿が消えていた。


「――ッ!?」


ヒアカッペが腰の拳銃へ手を伸ばす。だが、それより早く。銀色の刃が、喉元を横一文字に裂いた。


血飛沫が戦況図へ散る。ヒアカッペは目を見開いたまま数歩よろめき、その場へ崩れ落ちた。室内が凍り付く。北九州統治軍長――ガストン・ヒアカッペが、たった一撃で絶命したのだ。


「馬鹿な……!」(ラキトゥス)


護衛兵達が一斉に発砲する。しかし、黒い男は既に照明の死角へ滑り込んでいた。弾丸はコンクリート壁を砕くだけに終わる。その直後、非常灯が完全に落ちた。


登場人物紹介

マイサム・ヤバタノボシ

種族・性別:リザードマンの男性

所属・階級:陸軍中佐、マコンベリムト作戦参謀部 陸軍担当長


コスジェカ・エウクリッズ

種族・性別:ダークエルフの女性

所属・階級:陸軍中佐、第8北九州統治軍・第41市街地警戒連隊長


ステッラ・フォンボス……ヒアカッペの副官

シュノン・メンケント……第3領海警備隊上陸阻止大隊・副大隊長

ベン・ラキトゥス……第8北九州統治軍・第16機械化歩兵中隊長


※帝国軍は、占領している九州を「マコンベリムト」、北海道(奪還済)を「ガム」と称しています。

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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