第20話 僕達の出番
2020年9月23日
朝、兵站拠点に緊急報告が入った。
「別部隊が、大月で戦闘に入った!?」(隼人)
ざわめきが広がる。小競り合いではない。本格的な戦闘だ。
「マジかよ…」(木山)
木山の顔は青ざめていた。だが、賀井連隊長は動じない。
「作戦は変更なし。」
低い声が拠点に響いた。
「真鶴一中に兵站拠点を構築する。周辺哨戒と住民避難誘導を継続。小田原進出ルート確保を優先しろ。」
「了解!」
「真鶴で戦闘が起きた場合は、片桐一佐の指示で動くように。」(有朋)
「了解しました。」(片桐)
有朋陸将は、これから、山梨方面部隊への対応にも追われて忙しくなる。陸将から指示を受けた片桐連隊長は、真鶴へ向かう部隊へ号令を出す。
「我々も戦闘に入る可能性がある。気を引き締めてかかれ!」(片桐)
「了解!」
「大丈夫かな、大月の部隊…。」(隼人)
僕は思わず、魚見陸士長に声をかけた。
「大丈夫だよ。」
「山梨方面部隊には、道志山塊攻防戦を生き残った、あの人達がいる。簡単にはやられない。」(まひる)
「あの人達…?」(隼人)
「そう。あんたは知らないだろうけど、山梨方面部隊には、2年前の道志山塊攻防戦で生き残ったベテランが多く在籍しているんだ。あの人達は、どんな絶望的な状況でも決して諦めず、常に冷静な判断を下し、不可能と思われた局面を何度も打開してきた。信じるに値する人達だよ。」(まひる)
魚見陸士長の言葉を聞いて、僕は背筋が伸びるのを感じた。僕が今、遠くで起こっている「戦争」に怯えている間にも、僕の知らないところで、そんな「英雄」たちが戦っているのだ。そんな彼らならきっと大丈夫だ。魚見陸士長の目はそう語っているようにも見えた。
僕は自分の身を守ることで精一杯だろう。いや、それどころか、先輩方を心配するのもおこがましい。僕には、まだ彼らのような経験も覚悟もない。それでも、今、僕にできることは、与えられた役目を全うすることだけだ。僕は自分の役目に集中しなくちゃ!
「しかし…。」(隼人)
僕は、ふと隣にいる木山を見た。彼もまた、僕と同じように、戦場の外にいることに安堵と、そしてわずかな焦りを感じているようだった。
「…この感じだと、僕たちの出番は、しばらくお預けになりそうだね。」(隼人)
木山は何も言わず、ただ頷いた。
段場 隼人……本編の主人公
賀井 双一郎……34普連の連隊長
有朋 繁……オペレーション・ギデオンの最高司令官
片桐 初……35普連の連隊長
魚見 まひる(うおみ)……35普連2中隊のムードメーカー
木山 拓哉……隼人の同期。お調子者で小心者




