表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
外星戦記  作者: 無名の凡夫
第1章 初陣~オペレーション・ギデオン~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/261

第21話 あの人達

― 2020年9月23日 未明 山梨県大月市近郊 ―


暗闇の山道を、前衛部隊が静かに進んでいた。足音と装備の擦れる音だけが、夜の森に響く。誰もが理解していた。これは敵本隊との戦闘ではない。暗殺者を炙り出すための行軍だ。


「……本当にこれでいいんですかね?」

津曲(つまがり) 祐樹(ゆうき)二等陸士、第31普通科連隊第1中隊所属


「何がだ?」

大脇(おおわき) 和夫(かずお)一等陸曹、第31普通科連隊第1中隊所属


「戦力を分けて進んでるじゃないですか。敵本隊とぶつかったら……。」


「この作戦の目的は何だ?」


「暗殺者の排除です。」


「そうだ。そのための作戦だ。我々は、その作戦が成功するよう尽力するだけだ」


津曲は、大脇の言葉の重みに息をのんだ。自身は「戦争」という非日常に怯え、作戦の本質から目をそらそうとしていた。しかし、この戦いは自分たちのためだけのものではない。遠い場所で暮らす、自分たちと同じ国民の命もかかっているのだと、初めて腹の底から理解した。


急な作戦変更に、若い隊員たちは落ち着かなかった。全員が覆面を着用している。顔を隠すためだ。しかし、その安心感は逆に不安も生んでいた。


「……隣にいる奴、本当に味方か?」


誰かが冗談めかして呟く。笑う者はいなかった。


「ここで一度、休憩を取る!」


桐谷率いる前進部隊は、小まめに休憩を取り、進軍を遅らせる。目的は敵本隊との戦闘ではなく、暗殺者の炙り出し。そして、隊員の無事を確認することにある。


「……」


「よし、全員確認。異常なし。進むぞ。」


桐谷の号令とともに、隊は再び進み出した。




前衛部隊の後方では、第31普通科連隊第2中隊も警戒を続けていた。


「しかし、ゆっくり進むのも、これはこれで疲れますね。」

徳島(とくしま) 陽平(ようへい)二等陸士、第31普通科連隊第2中隊所属


「まあ、訓練では迅速に動くよう教わってるからな。」

吉森(よしもり) 恵太(けいた)二等陸士、同上


「もう泣き言か? 最近の男どもは軟弱だな。」

※原口 すず三等陸曹、同上


「そ、そんな疲れてませんよ。心外だなぁ、ははは。」(徳島)


「そこ!私語は慎め! ここは戦場だぞ!」

木原(きはら) 冬彦(ふゆひこ)二等陸曹、同上


「すみません!」(吉森)


「まったく、気が緩みすぎだ。飛鳥三尉、あなたの班なのですから、しっかり指導してくださいよ。」


「それは失礼。でも、今はあなたの声の方が大きいわよ。」

飛鳥(あすか) 知子(ともこ)三等陸尉、同上


飛鳥だけは、周囲ではなく風下を見ていた。そして、「ふう」とため息をつき、立ち止まった。


「……ねえ」


誰も気付いていない。だが彼女の鼻がわずかに動いた。


「……木原さん」


「はい?」


「変ね」


「?」


「あなた、誰?」


「!?」


飛鳥の突然の問いに、新人の徳島や吉森は「意味が分からない」という表情をした。目の前にいるのは、上官の木原二曹。飛鳥三尉からすれば、部下にあたる。冗談にしては面白くもない。


「何を言ってるんですか? 31普連2中隊・木原冬彦二等陸曹ですよ、同僚の顔を忘れたのですか?」


「声も仕草もよく真似てる。」


飛鳥はゆっくり言った。


「でもね……人間とは匂いが違う。ゴブリンね。」


その時、木原の顔が歪んだ次の瞬間、側にいた吉森の首を腕で締め上げ、銃口をこめかみに突きつけた。


「動くな!」


「俺は、帝国陸軍特殊作戦部隊、タウリー・ミントゥ上等兵だ!」


「動くな!動いたらこいつの命はない!」


飛鳥は一歩も動かなかった。そして、冷静に言い放つ。


「その人質、意味ないわよ。」


ミントゥが目を細める。


「何?」


「あなた、逃げるつもりでしょ?」


「でも逃げられない。」


「すず!」


「了解!」


原口の腕がしなる。銀色の筒が木原の足元へ転がり、閃光が辺りを包んだ。その瞬間、2発の銃声が森に響いた。


発砲したのは、飛鳥だった。吉森に一発、続いてミントゥに一発。


「ひっ!」


徳島が悲鳴を上げた。


「吉森ッ!」


吉森の体が崩れ落ちる。額の中央に小さな穴が開いていた。誰もが一瞬、言葉を失った。


「……くそっ。」


原口が低く吐き捨てる。徳島は震える手で吉森の肩を掴んだ。


「吉森……飛鳥三尉、どうして?」


その時だった。吉森の頬に、細い“ひび”のようなものが走った。ひびはゆっくりと広がった。まるで乾いた泥が割れるように。


「……?」


徳島が息を呑む。次の瞬間、吉森の顔の皮膚が剥がれ落ちた。下から現れたのは、人間の肌ではなかった。剥がれ落ちたのは皮膚ではなく、精巧に作られた薄い膜だった。緑色の、ざらついた皮膚。そして歪んだ口。ゴブリンだった。徳島の顔から血の気が引いた。


「う、そだろ……」


原口が静かに言った。


「……最初から吉森じゃなかったのよ………本物の吉森は、どこで殺されたんだろうね。」


「こいつの班があと1人どこかにいる。」


「こいつでしょうか?」


そう言って、赤松つらら一等陸士は、戦闘を避けるように横の茂みに隠れていた、もう一体のゴブリンの遺体を引きずって現れた。


「言われた通り、臭いに注意してたら、見つけました。」


「よくできました」


赤松を褒める飛鳥は、どこか嬉しそうだった。


そこに12偵からの報告があった。


『村西三尉が、敵兵3体を発見。戦闘に入りました!』


「援護に行きますか?」


「必要ないわ。」


「え?」


「村西なら勝つ。」


「?」


徳島には、飛鳥の言っている意味が分からなかったが、それは数分後、知る事になる。




―数分後―


「村西三尉の班が戻ってきました!」


村西の班が戻ってきた。村西班は、若い隊員で構成されていた。その中に、西の姿があった。徳島は目を見開く。


「西さん……。」


その顔は昨日までの西とは違っていた。迷いのない、兵士の顔だった。


「若手も育っている。君も精進なさい。」(飛鳥)


「は、はい!」


徳島は、ただ「はい!」と力強く答えることしかできなかった。




「(グーリエ星人、舐めるなよ。俺たちは、いつまでも2年前の亡霊に頼ってはいない。それを分からせてやる。)」(桐谷)

登場人物紹介

大脇おおわき 和夫かずお

生年月日:1980年8月23日 / 出身:東京都出身

階級:一等陸曹 / 所属:31普連隊1中隊

備考:2年前の道志山塊攻防戦で戦果を挙げる。


飛鳥あすか 知子ともこ

生年月日:1984年7月31日 / 出身:大阪府

階級:三等陸尉 / 所属:31普連2中隊

備考:2年前の道志山塊攻防戦で戦果を挙げた。


原口はらぐち すず

生年月日:1997年4月20日 / 出身:兵庫県

階級:三等陸曹 / 所属:31普連2中隊

備考:飛鳥に鍛えられた成長株。女性


赤松あかまつ つらら

生年月日:2001年3月3日 / 出身:奈良県

階級:一等陸士 / 所属:31普連隊2中隊

備考:自候生時代から優秀と言われていた期待の若手隊員。飛鳥の下で急成長。


タウリー・ミントゥ

種族・性別:ゴブリン族の男性

所属・階級:陸軍上等兵、特殊作戦部隊

備考:木原を殺害し変装し、自衛隊内部に潜入するが、飛鳥に見破られる。



グーリエ星に存在する種族

ゴブリン族……ファンタジー物で有名なモンスター。モンスターの中では知性があり、会話が可能。帝国内では市民権がある。手先が器用で、昔は森や洞窟での生活を好んだ。その特性から、自然を相手にする仕事をする者が多い。経験を積み、スキルを上げることで、ホブゴブリン(中位種)、ゴブリンキング(上位種)と進化をする。


※帝国特殊作戦部隊…帝国陸軍により編成されている特殊部隊で、要人暗殺やスパイ行為等を行う。おそらく3人一組で動く。本物の皮膚と遜色ない特殊メイク技術で変装し、少ない情報で本人の声色や癖を真似ることができる。ただし、体格が違いすぎる相手には変装しない。バレるから。殉職した木原や吉森は、ミントゥ他と近い体格だったので狙われた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ