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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第1章 初陣~オペレーション・ギデオン~

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第20話 英雄を餌に

― 2020年9月23日 未明 山梨方面隊 野営地(大月市近郊)―


「はぁ……はぁ……っ……!」


西(にし) 友貴(ともき)陸士長は、倒れ込むように野営地へ飛び込んだ。頭の中で、さっきの光景が何度も蘇る。


――三笠が撃たれた瞬間。

――野木三曹の「行け」という怒鳴り声。


逃げた。自分だけ逃げた。それでも、西は叫んだ。


「菊花山で敵と接触! 野木三曹と三笠士長が交戦、負傷しました!」


西の声が響くと、野営地の空気は一変した。ざわめきが静まり、張り詰めた緊張が漂う。指揮官らしき男が、静かに西に近づいてきた。その男の顔には、この報告が持つ意味を瞬時に理解した、鋭い知性の光が宿っていた。


「西、報告ご苦労。敵の詳細は分かるか?」


第12偵察大隊の大隊長・桐谷(きりたに) 法征(のりと)一等陸佐だ。2年前の道志山塊攻防戦でも戦果を挙げた歴戦の勇士は、西から得た情報で、ある確信を得た。


「3体か。」


「はい。」


「偵察にしては少なすぎる。」


桐谷の目が細くなる。


「暗殺部隊かもな。」


「逃げた西を追わなかったのも説明がつく。奴らの目的は“誰でもいい兵士”じゃない。」


「栫!」


桐谷は、(かこい) 仁星(じんせい)三等陸尉を呼び、何やら耳打ちをした。


「了解しました。」


栫へ指示を出すと桐谷は、門唐(かどから) 栄作(えいさく)陸将補のもとへ向かう。




「敵は暗殺部隊の可能性が高い。」


ざわめきが広がる。


「狙いは?」

別当(べっとう) 強司(つよし)一等陸佐、第31普通科連隊長


「狙うとしたら、道志山塊の功労者だろう。」(桐谷)


空気が重く沈む。別当がすぐに口を開いた。


「ならばなおさら陣形を崩すべきではありません。暗殺部隊の背後に本隊が潜んでいる可能性もある。」


門唐は首を横に振った。


「いや、逆だ。奴らを炙り出す。」


「英雄を――餌にする。」


門唐の声が、会議室に響き渡った。


「それでは功労者を危険に晒します。」


別当は反論するが、門唐も引き下がるつもりはない。


「危険なのは承知だ。だが奴らを放置すれば、こちらは常に首を狙われる。この機会に潰す。」


誰も言葉を発さない。門唐は続けた。


「彼らは我々の中で最も優秀な兵だ。だからこそ――囮にする。」


「安心しろ。奴らは強い。だから囮に使える。」


門唐は全員を見渡す。


「心してかかれ! そして、必ず生きて帰ってこい!」


「了解!」




会議を終え、野営地へ戻る桐谷の下へ、栫がやってくる。


「野木三曹と三笠士長ですが……」


栫は一瞬だけ言葉を切った。


「死亡を確認しました。」


桐谷は目を閉じた。


「……そうか。」


彼らにとって、戦死は避けられない現実だ。しかし、その重みが消えるわけではない。


「……だが、敵の痕跡があり、後を辿ったところ、新たなことが分かりました。敵は少なくとも9体、おそらく3人一組で動いているようです。」


「3人一組か。暗殺対象ごとに班を分けているな。」


「栫、その場所は?」


栫は、地図で敵兵を見つけた場所を指し示す。


「どうします?」


「今は泳がせておけ。我々には優先すべき作戦がある。先ほど、新たな作戦が立案された。それを説明する。」


桐谷は部下を集め、新たな作戦を伝える。


「以上が作戦だ。現在、偵察中の者は後方部隊として動いてもらう。無津呂、お前は残り彼らに伝えろ。」


「はい!」

無津呂(むつろ) 重樹(しげき)二等陸尉


「西、野木や三笠のことで、辛い心情だろうが、これは任務だ。お前も前線部隊に入ってもらう。いいな?」


「了解です。」


西は拳を握り締めた。震えていた指先から、少しずつ力が戻っていく。


「野木三曹と三笠の死、無駄にはしません。」


西の瞳には、もはや後悔の涙はなかった。そこにあったのは、友の命を無駄にしないという、強い決意の光だった。

登場人物紹介

桐谷きりたに 法征のりと

生年月日:1973年4月6日 / 出身:群馬県

階級:一等陸佐 / 役職:第12偵察大隊大隊長

備考:2年前の道志山塊攻防戦でも戦果を挙げた隊員。


門唐かどから 栄作えいさく

生年月日:1967年5月12日 / 出身:岡山県

階級:陸将補 / 役職:山梨方面部隊の最高指揮官

備考:2年前の道志山塊攻防戦でも指揮官として活躍。


別当べっとう 強司つよし

生年月日:1977年9月2日 / 出身:島根県

階級:一等陸佐 / 役職:第31普通科連隊連隊長

備考:2年前の道志山塊攻防戦で戦果を挙げた隊員。

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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