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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第206話 増援展開

第16機械科歩兵中隊の中隊長、ベン・ラキトゥス大尉は、眠い目を擦りながら、この出撃に何の意味があるのかを考えていた。


上陸を許したとはいえ、敵は少数で、装備が軽装なのは監視ドローンで分かった。ならば、中隊を総動員して動く必要性はなく、第2小隊だけで十分だろうと。ヒアカッペ准将が何を考えているのか分からなかった。


「フォンボス大佐になら、現場の声は聞いてくれた。あの人はお優しいから」(ラキトゥス)


しかし、ヒアカッペ准将直々の命令では、反論することなど出来るわけがない。あの方は、平気な顔で部下を粛清する。サプデイビス海軍少佐は戦死とされているが、ヒアカッペ准将が粛清したともっぱらの噂だ。自分もそうなりたくない一心で、出動中なのだが……


「ふうっ…」(ラキトゥス)


「……私は、ああはなりたくない」(ラキトゥス)


ラキトゥスは窓外の赤色灯を見ながら、静かに息を吐く。


その直後、無線へ怒号が飛び込んだ。


『第2小隊、敵特殊部隊と交戦中! 指揮車両損傷!』


ラキトゥスの目つきが変わる。眠たげだった空気が、一瞬で消え失せた。


「第3小隊はクーヨの援護へ回れ。我々はベリタテウの救援へ向かう」(ラキトゥス)


「はっ!」


部下達が即座に動き始める。ラキトゥスは装甲車両前方の暗闇を睨みながら、低く呟いた。


「少数精鋭、か……なるほど。准将殿が騒ぐ理由は、少し分かってきた」(ラキトゥス)




第16機械科歩兵中隊・中隊火器支援分隊は、崩落した立体駐車場下へ陣地を構築していた。瓦礫と廃車両で射線を制御し、その後方には迫撃砲と携行対装甲火器が並べられている。


アラファル・クーヨ曹長は、タブレット端末へ表示される索敵情報を睨みながら、低く呟いた。


「また監視ドローンが一機消えた。」(クーヨ)


「特殊部隊ですか?」(デイビッジ)


「恐らくな。少数だが、だからこそ厄介だ」(クーヨ)


クーヨはそう言いながら、周囲の部下達へ散開を指示した。密集したままでは、一度の奇襲で火器支援能力を失う。その直後だった。


バシュッ――。


乾いた消音射撃音が響き、屋上警戒へ出ていた兵士の頭部が弾け飛ぶ。


「接敵!」


同時に、別方向から閃光弾が投げ込まれた。白色光が駐車場内部を焼き潰し、数名の兵士が悲鳴を上げながら視界を失う。


しかしクーヨは怯まなかった。


「撃ち返すな。発射炎を見せるな。熱源探知を優先しろ!」(クーヨ)


敵は暗闇へ紛れて接近している。無闇な応射は、逆に位置を晒すだけだった。瓦礫陰へ伏せていたアイブルは、小さく舌打ちした。


「……冷静だな」(アイブル)


「普通の警備隊じゃないですね」(ヒューム)


ハレックが低姿勢のまま照準を合わせる。次の瞬間、対装甲火器へ取り付こうとしていた敵兵の胸部へ、5.56mm弾が連続して突き刺さった。敵兵が倒れる。しかし、その背後から別の兵士が即座に火器を引き継ぐ。


「動きが速いな。」(ハウフ)


「ああ、かなり訓練されている」(ハレック)


直後、敵側迫撃砲が発射された。


ドンッ――。


鈍い射出音の数秒後、着弾が周囲の瓦礫を吹き飛ばす。コンクリート片が雨のように降り注ぎ、ヒュームが咄嗟に頭を庇った。


「位置を読まれた!」(ヒューム)


「違う。牽制射だ。逃がさず包囲するつもりだぞ」(アイブル)


その瞬間、別方向から装甲車両のエンジン音が響き始める。クーヨは暗視装置越しに廃墟奥を睨みながら、静かに命じた。


「クーヨ、援軍に来た。ここからは、俺達に任せろ!」(ペイテル・マケマナ陸軍少尉)


「第3小隊! 援軍、心強い!」(クーヨ)


「敵、増援有り! 機械化歩兵!」(ハウフ)


「ちっ、こんな時に…」(アイブル)




「東側道路、新たな車列を確認。」(サカラ)


暗視装置越しに、複数の赤外線反応が接近してくる。装甲車3両。歩兵多数。先程までの警戒部隊とは規模が違った。


「完全に増援だな」(テレル)


カバナーは崩落した高架柱の陰から、市街地奥を睨んだ。赤色警報灯が次々と点灯し、占領下の小倉が戦闘態勢へ移行していく。


「予想以上に立て直しが早い。中隊規模で動き始めている」(カバナー)


「しぶといですね、あのゴリラ」(タック)


直後、敵装甲車上部の探照灯が一斉に照射された。白色光が瓦礫地帯を掃き、熱源探知装置が周辺を走査する。


「来る!」(ナルクン)


その瞬間、機銃掃射が始まった。大口径弾が高架支柱を削り、コンクリート破片が雨のように降り注ぐ。べリンゴンが転がるように退避しながら、対装甲弾を構えた。


「左車両、止めます」(べリンゴン)


「やれ。ユノラフは右を抑えろ。タック、後ろの歩兵を散らせ」(カバナー)


「了解」


スパイダー班が同時に動く。ユノラフの射撃が先頭歩兵を薙ぎ払い、タックが連射で後続を遮断する。その隙に、べリンゴンが遮蔽物から身を乗り出した。


シュゴォッ――。


発射された対装甲弾が、先頭装甲車側面へ直撃する。


爆炎と共に履帯が吹き飛び、装甲車が大きく車体を傾ける。


「一両停止!」(べリンゴン)


しかし、敵も止まらない。


後続車両が即座に前へ出る。同時に、ベリタテウの怒号が無線越しに響いた。


「包囲を狭めろ!連中を市街地外へ出すな!」(ベリタテウ)


「厄介ですね」(サカラ)


「いや、むしろ好都合だ」(カバナー)


カバナーは高架下の暗闇へ視線を向ける。


「敵は私達を逃がしたくない。つまり、ここに戦力を集め続ける」(カバナー)


数秒後、遠方で重砲撃音が響いた。第1空挺団の前進砲撃だった。


「浪城大隊が動いたな」(テレル)


カバナーは短く笑う。


「なら、私達の役目は十分だ。ここからは、市街地を掻き回してやる」(カバナー)


カバナーは暗視装置越しに、高架下へ集結し始めた敵部隊を確認する。


敵はこちらを逃がすつもりがない。ならば、その間に前線は押し上げられる。


「スパイダー班、移動する。敵指揮系統を引き続き攪乱。市街地を歩き回らせるぞ」(カバナー)


「了解」


次の瞬間、再び探照灯が瓦礫地帯を薙いだ。その白色光を避けるように、スパイダー班の隊員達が闇の中へ散開していく。一方、その様子を遠方から見ていたラキトゥスは、静かに眉を顰めていた。


「……こいつら、出来る…」(ラキトゥス)


小倉市街地は、既に通常の治安戦ではなくなっていた。


登場人物紹介

ベン・ラキトゥス

種族・性別:エルダードワーフの男性

所属・階級:陸軍大尉で、第16機械化歩兵中隊長


ペイテル・マケマナ

種族・性別:エルフの男性

所属・階級:陸軍少尉で、第16機械化歩兵中隊長・第3小隊長


GASTリッチ班

アイブル(副班長)、ヒューム、ハウフ、ハレック


GASTスパイダー班

カバナー(班長)、テレル(副班長)、サカラ、タック、ナルクン、ユノラフ、べリンゴン


アラファル・クーヨ……第8北九州統治軍副群・第16機械科歩兵中隊・中隊火器支援分隊長

ミント・デイビッジ……同所属の一等兵

ピピリ・ベリタテウ……第8北九州統治軍副群・第16機械科歩兵中隊・第2小隊

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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