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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第201話 燃える街の中で

生後6ヶ月頃に「ひまわり園」の前に捨てられていた。名前と生まれた日が書かれたメモもあり、乳児の名前は「春日部(かすかべ) 寛治(ひろはる)」だと分かった。寛治少年が、その事を知ったのは8歳の時。ある中年の女性職員が、同じ年くらいの女性職員に話していた。デリケートな話題を、大きな声で喋る無神経さは、少年の心に大きな傷を残し、後の人格を形成する一端となった。決して明るい性格とは言えない、寛治少年。施設内でも、彼は孤立していく。


そんな寛治少年に手を差し伸べたのは、年上の少年、名を、「鯉頭(こいがしら) 颯馬(そうま)」と言う。孤立していく寛治少年を気にかけ、お節介を焼く。寛治少年には、それが鬱陶しくて仕方がなかった。


ある日、苛々が頂点に達した寛治少年は、颯馬を突き飛ばした。颯馬も寛治の態度に怒り、2人は喧嘩になった。慌てて止めようとする、職員や周りの子ども達だったが、とある新人職員は、周りに見届けるよう進言する。その職員の名は、今沢(いまさわ) 摩千佳(まちか)。元自衛官で、女性ながら筋骨隆々とした体格をしている。その体格から、小さい子どもには怖がられていることが悩みだった。


喧嘩は、颯馬の圧勝だった。寛治少年は、颯馬に手も足も出ず、マウントポジションから殴られそうになった所で、摩千佳が止めた。完敗だった。しかし、お互いが溜まっていた感情を爆発させたことで、不思議と2人は仲良くなった。


颯馬は、休日になると近所の公民館へ出かけていた。ある時、寛治少年も誘われ、一緒に公民館へ向かった。そこでは、地元の建設会社がボランティアで護身術を教えていた。聡馬が強いのは、ここで心身を鍛えて貰っていたからだった。聡馬は喧嘩をした事を叱られていたが、寛治少年が喧嘩相手だと知られると、一緒に叱られた。だが、悪い気はしなかった。


それから休日になると、2人はこの公民館で鍛えてもらっていた。気が付けば、摩千佳が引率してくれるようになった。2人は摩千佳の事が大好きだった。


寛治少年は、自衛官を辞めた理由を摩千佳に聞いてみた。摩千佳は、「怪我して訓練について行けなくなった」と話した。確かに歩き方が少し変だった。それが、怪我の影響だと分かった寛治少年は、歩き方をいじることはしなかった。


寛治少年は、この2人に心を開いていた。颯馬とは友人と呼べる仲になった。ある時、寛治少年は、摩千佳に「ガチムチ姐さん」というあだ名を着けた。颯馬は、寛治少年を窘めたが、摩千佳は笑って受け入れた。摩千佳を怖がっていた小さい子ども達も、徐々に慣れてきた時だった。


寛治少年は、将来自衛官になりたいと思っていた。それは、摩千佳の影響だった。摩千佳から聞いた自衛官時代のエピソードを聞き、素直にカッコいいと思ったからだ。摩千佳は、「自衛隊は厳しいぞ?」と脅すように話しても、寛治少年には関係なかった。怪我をして辞めたにも関わらず、自衛官時代に「後悔がない」と話す摩千佳を見て、自衛官に憧れを抱く。




2年後の2000年、その時が訪れた。


熊本県が謎の勢力によって侵攻を受け、甚大な被害が出た。九州全土では、すぐに避難勧告が出て、本州に避難することになった。しかし…その勢力の進軍スピードは想定を遥かに上回るものだった。


夜の住宅街が燃えていた。赤く染まった道路の向こうで、誰かの泣き声と銃声が重なる。寛治少年は、瓦礫の陰で震えていた。目の前には、倒れた施設職員達、友人達、そして――颯馬と摩千佳。


2人は寛治少年の目の前で殺された。グーリエ星人の銃撃を2人から庇った摩千佳。寛治少年を逃がそうと、僅か11歳の颯馬が、グーリエ星人に立ち向かい、そして殺された。11歳の子どもが丸腰で勝てる相手ではない。


「……っ、ぁ……」


声が出ない。血の匂いだけが、喉へ張り付いていた。その時。


「生存者確認!」


女の人の声、迷彩服の隊員達が、炎の向こうから走って来る。先頭にいた女性隊員が、寛治を見つけた。


「子どもだ!」


彼女は即座に駆け寄りが、その直後…


ドゴォン!!


近くの建物が吹き飛ぶ。


「敵接近!」


「撤退急げ!」


隊員達が叫ぶ。それでも、その女性隊員だけは寛治の前へ膝をつく。


「……立てるか?」


寛治少年は声が出ない。視線だけが、颯馬や摩千佳の遺体へ向いていた。女性隊員も、その視線を追う。そして、ほんの一瞬だけ表情が止まった。


「……摩千佳」


同期の名前だった。彼女は数秒だけ黙る。だが、次の瞬間には、感情を押し殺していた。


「摩千佳が守った命だ。無駄にするな」


返事はない。それでも彼女は寛治少年を抱き上げ、そのまま炎の街を走り始めた。


「行くぞ」


その背後で、小倉の街が燃えていた。


その瞬間、背後で建物が爆発する。熱風が吹き抜け、火の粉が夜空へ舞い上がった。女性隊員は振り返らない。ただ前だけを見て走る。燃え上がる小倉の街を背に、寛治少年は初めて、自分の世界が終わった事を理解した。


登場人物紹介

春日部かすかべ 寛治ひろはる


鯉頭こいがしら 颯馬そうま

生年月日:1988年4月9日 / 出身:福岡県

備考:寛治の友人。寛治をグーリエ星人から守ろうとして殺される。

享年:12歳


今沢いまさわ 摩千佳まちか

生年月日:1973年10月28日 / 出身:山口県

備考:寛治少年が育った児童養護施設の職員。グーリエ星人襲撃の際に命を落とす

享年:27歳

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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