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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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202/261

第200話 残された看板

カラーノです。


現在、警報音が、小倉中へ響いています。敵に見つかった証拠です。


「全隊、前進継続! 停滞するな!」(浪城)


第一空挺団は止まりません。むしろ速度を上げていました。敵に警戒された以上、足を止めた方が危険だからです。私達は市街地内部へ入り込んでいきます。


「上空にドローンが増えたね。あのモニターも多分、本部に通じてる。ピート班長、敵の電波をジャミング出来る?」(ローレライ)


「やってるけど、敵も手強い。全然、尻尾を見せない。」(ピート)


「そう。撃ち落とせそうなら、墜としたいけど、位置がバレる…。困ったね。」(ローレライ)


「最善は尽くすから、何とか耐えて。」(ピート)


「了解」(ローレライ)



異星文字へ塗り替えられた看板。見たこともないデザインの自動車のような物、その横を、見慣れない装甲輸送車が走り抜けていきます。生活と軍事が、無理やり混ざっていました。


「左警戒!」(シャーク)


路地奥で動いた影へ、空挺団員達が即座に銃口を向けます。ですが現れたのは、武器を持たない小柄なグーリエ星人でした。ホビット族という小柄な種族だと座学で学びました。


灰色の外套に荷物袋、こちらを見るなり、悲鳴のような声を上げて建物内へ逃げ込んでいきます。


「……非戦闘員でしょうか?」(カラーノ)


パァン!


「な?」(カラーノ)


非戦闘員に見えたホビット族のグーリエ星人を、BJ班長は何の躊躇もなく撃ちました。


「班長、非戦闘員だったらどうするんですか?」(カラーノ)


「非戦闘員だろうと害虫だ。害虫は駆除する。何だ? お前は、部屋に湧いた害虫に手厚い支援をするのか?」(BJ)


「ミネルヴァ(オペレーション・ミネルヴァ、第8次首都圏奪還作戦)で非戦闘員を殺したことが問題になりました。グーリエ星人でも非戦闘員は撃たないほうが…」(カラーノ)


「甘いな。侵略者に情けは無用だ。非戦闘員だろうが、駆除の対象だ。」(BJ)


その直後です。建物の中から出てきたグーリエ星人が私達に襲い掛かってきます。先ほど、BJ班長が撃ったホビット族の家族でしょうか? 目に涙を浮かべています。「弾の無駄だ」と、BJ班長は帯刀していた日本刀で、そのグーリエ星人数名を切り刻みます。泣き喚き、命乞いをする子どもにも容赦ありませんでした。


この人は、グーリエ星人に対する憎悪が強すぎる。この人も、家族をグーリエ星人に奪われたのでしょうか?


しかし、それを懸念している時間はありません。その直後、遠方で発砲音が響きました。


タタタタン!


「北側接敵!」(塗)


「先行班、押し込め!」(浪城)


空挺団の一部が、交差点方向へ走ります。市街地全体が、既に起き始めていました。


建物の窓が閉まり、街路照明が赤色へ切り替わる。道路上では、自動車が次々停止し始めています。避難なのか、封鎖なのか、それすら分かりません。ですが一つだけ分かる事がありました。


信号が変わり、車両が止まる。監視灯が赤へ切り替わる。避難誘導まで始まっていました。




第8北九州統治軍、市街地警戒管制室。


赤色警報灯が、薄暗い室内を断続的に照らしていた。


壁面モニターには、市街地各所の監視映像が映し出されている。交差点、道路、高架、監視塔。その1つに、進軍する自衛隊の姿が映っていた。


「第3警戒中隊より入電!」(マルカ・チタウィン陸軍曹長)


通信兵が声を張り上げる。


「敵空挺部隊、市街地南西区域へ侵入! 巡回第12支隊壊滅、第18支隊後退中!」(チタウィン)


室内の空気が変わる。その中央で、1人の大柄な獣人が腕を組んでいる。分厚い軍装の上からでも分かるほどの巨体。肩章には、准将位を示す金属章。


ガストン・ヒアカッペ陸軍准将。第8北九州統治軍司令官その人だ。


「空挺戦力、か」(ヒアカッペ)


低い声で呟く。


「はい。対空部隊沈黙後、即座に降下を開始したものと思われます」(ステッラ・フォンボス陸軍大佐)


「規模は?」(ヒアカッペ)


「推定一個大隊規模。詳細不明」(フォンボス)


ヒアカッペは、数秒だけ黙って映像を見る。


画面内では、空偵隊員達が遮蔽物を使いながら前進している。統率は崩れていない。侵入直後にも関わらず、既に建物制圧を始めていた。


「……練度が高いな」(ヒアカッペ)


「ですが、所詮は軽装空挺です。市街地へ閉じ込めれば――」(フォンボス)


「違う」(ヒアカッペ)


ヒアカッペ准将が遮ります。


「これは偵察ではない。奪還作戦だ」(ヒアカッペ)


室内が静まり返る。


「南部警戒線へ増援を回せ。機動歩兵連隊を前進配置。監視塔群は熱源索敵を優先しろ」(ヒアカッペ)


「了解!」


命令が飛び交う。その時、一枚の監視映像へヒアカッペ准将の視線が止まった。そこに映っていたのは、小倉南区方面へ進む部隊。


「……南へ向かっている?」(ヒアカッペ)


准将は僅かに目を細める。


「何を狙っている?」(ヒアカッペ)





カラーノです。私達は、その頃には更に南側区画へ進んでいました。


市街地中心部から少し離れた場所。崩壊した住宅街へ入っています。


「この辺、妙に古い建物が残ってますね」(シリング)


「再開発から外れたんだろ」(秋口)


BJ班長だけは、何も答えませんでした。ですが、その歩く速度が少しだけ落ちている。私は、それに気付きました。


私達は、崩れた住宅街を進んでいました。高層区画から外れたせいか、周囲には古い日本家屋も残っています。外壁へ異星文字の塗装こそ増えていましたが、道路形状や公園の配置には、まだ“日本”の名残がありました。その途中でした。BJ班長の足が、不意に止まります。


「……班長?」(カラーノ)


視線の先には、半壊した建物がありました。


焼け落ちた外壁、崩れた門柱、そして、錆び付いたまま残っている古い看板。


『児童養護施設 ひまわり園』


私は息を呑みました。BJ班長は、何も言いません。ただ、その建物を見たまま、握った小銃へ静かに力を込めていました。


登場人物紹介

ガストン・ヒアカッペ

種族・性別:熊型獣人族の男性

所属・階級:陸軍准将で、第8北九州統治軍長


マルカ・チタウィン

種族・性別:エルフの女性

所属・階級:陸軍曹長で、第8北九州統治軍通信監視隊所属


ステッラ・フォンボス

種族・性別:天使族の女性

所属・階級:ヒアカッペの副官


カラーノ……本作のヒロイン

BJ……GASTピットブ班の班長

シャーク……GASTピットブル班の副班長

ローレライ……GASTセイレーン班の班長

シリング……GASTセイレーン班所属

ピート……GASTファルコン班の班長

浪城なみしろ げき……第1空挺団第2普通科大隊長

ぬり わたる……同 所属

秋口あきぐち 将光しょうこう……第1水陸機動連隊第1中隊所属

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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