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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第198話 空から来る者達

カラーノです。


私達は休む間もなく次の配置へ移動していました。敵の対空火器は沈黙しました。ですが、それだけでは空挺降下は出来ません。降下地点の安全確認、通信誘導、風向確認、敵残党の排除。空から降りてくる味方を、生きたまま地面へ降ろすまでが私達の仕事でした。


「誘導班、前へ! 発煙準備!」(ビービ)


「了解!」(カラーノ)


私は岩場上部へ駆け上がります。


秋口曹長が双眼鏡を覗き込みます。


「北側ビル群、まだ敵が残ってるな」(秋口)


「狙撃は?」(BJ)


「散発的です。ただ、降下中を撃たれりゃ十分脅威だ」(秋口)


だから先に潰す。それが先遣隊の役目でした。


ガーツさんが屋上方向へライフルを向けます。


パァン!


数秒遅れて、ビル上部の敵影が崩れ落ちました。


「一つ」(ガーツ)


「まだいるわよぉ」(フロリアン)


別方向から発砲。コンクリート片が砕け散ります。私は即座に岩陰へ滑り込みました。


「南東側、三階!」(カラーノ)


「任せて!」(シリング)


伝川…じゃなかったシリングさんが走ります。銃弾が流れるより先に動いているようでした。


タタタタン!


敵影が窓から消えます。


「今の内だ!」(BJ)


後方で、壱岐三曹がアンテナを展開しました。


「降下誘導信号、送ります!」(壱岐)


ノイズ混じりの通信音。直後、遠方の空から重低音が響き始めます。輸送機でした。


私は思わず空を見上げます。曇天の向こう、灰色の編隊が、海側から接近してきていました。


「来たぞ……」(蛭子)


ビービ班長が発煙筒を引き抜きます。


「発煙投射!」(ビービ)


赤煙が、北九州の空へ広がっていきます。それは、“次の戦場”を呼ぶ目印でした。




「降下開始まで7分!」


海風が強くなっていました。砕けた橋梁、崩れた高架、煙を上げる市街地。その向こうに、小倉の街並みが見えます。ですが、“街”という感じはしませんでした。


建物の上には、見慣れない監視装置。道路脇の標識は、もう人類の文字ではありません。崩壊したビルの間には、グーリエ星人用に増築された居住区画まで見えます。人間の街へ、別の文明が無理やり被さっている。そんな光景でした。


「……本当に住み着いてるんですね」(カラーノ)


「もう占領地じゃない。完全に根を下ろしてる」(BJ)


BJ班長は短く答えました。ですが、その声はいつもより低い。彼の視線は、ずっと市街地へ向けられたままでした。


「班長、小倉よね? ここ…」(フロリアン)


「ああ」(BJ)


それだけでした。普段なら憎まれ口の一つでも返します。ですが今日は違います。岩陰へ座ったまま、BJ班長は無言でマガジンを交換していました。


その横を、第一空挺団の隊員達が通過していきます。空挺降下用の軽装備。ですが、その歩き方だけで分かりました。戦場へ入る前の部隊特有の静けさがあります。


「第一空挺団、前へ!」


怒声と共に、隊員達が集結していきます。先頭を歩いていた男が、こちらへ視線を向けました。


「降下地点確保、ご苦労だったな」(森間)


低い声でした。第一空挺団団長、森間(もりま)護平(ごへい)陸将補。その後ろには、第2、第3普通科大隊の隊員達も続いています。


「弾薬補給急げ! 降下後すぐ前進するぞ!」(浪城)


二等陸佐・浪城(なみしろ)(げき)大隊長。隊員へ怒鳴りながら、自分も弾薬箱を担いでいました。


「相変わらず猪突猛進ですね、あの人……」(秋口)


「止まると死ぬタイプなんでしょ」(コルガン)


「(鮪みたい……)」(シリング)


その時でした。別方向から歩いてきた隊員が、こちらを見て止まります。


「お前、苫米地か?」(塗)


「塗助教?」(カラーノ)


レンジャー課程で助教だった塗二曹でした。塗二曹は、レンジャー素養試験で隼人に目を付けていた助教です。個人的に好きではありませんが、ここは大人の対応をします。


「お前は優秀だったから、空挺団に欲しかったんだがな。」(塗)


「あの時は既にGASTへスカウトされてたんです。今は、カラーノと名乗っています。」(カラーノ)


「そうだったのか」(塗)


「塗二曹、戦地でナンパかい?」


別の声が聞こえてきました。振り返ると、そこにいたのは大綱助教。


「苫米地、角南、伝川…3人もGAST入りか、立派なもんだ。」(大綱)


「いえ、5人です。」(シリング)


「諏訪と万代もいる。別行動だけどな。」(秋口)


「ほう、豊作だな。」(大綱)


「おい、同窓会はそこまでにしろ」(BJ)


「おっと、いけねぇ。そうそう、俺のコードネームはノートンだ。だが、パワーボムは得意じゃない。」(大綱)


「は、はあ…」(カラーノ)


パワーボムの件は分かりませんでしたが、レンジャー課程の時より、ずっと砕けた空気でした。ですが、その目だけは油断なく周囲を見ています。


遠方の空で、輸送機の後部ハッチが開き始めます。黒い影が、次々と空へ放り出されていきます。


「降下開始!」(壱岐)


白い落下傘が、曇天の下で一斉に開きました。その後方では、さらに別の輸送機が旋回しています。


「第2波も来るぞ!」(蛭子)


重装備コンテナでした。


迫撃砲、追加弾薬、通信機材…空から、戦線そのものが降ってきます。


浪城二佐が前方を睨みました。


「進軍開始だ。小倉を取り戻すぞ」(浪城)


その声に、第一空挺団の隊員達が動き始めます。


BJ班長も、ゆっくり立ち上がりました。そして、小倉の市街地を見たまま、小さく呟きます。


「……待ってろ」


誰に向けた言葉だったのか、私は聞きませんでした。


登場人物紹介

カラーノ……本作のヒロイン、本名:苫米地とまべち 杏南あんな

BJ……GASTピットブル班の班長

フロリアン……GASTピットブル班所属

ガーツ……GASTピットブル班所属

ビービ……GASTアマゾネス班の班長

シリング……GASTセイレーン班所属、本名:伝川つたがわ 柚梨ゆずり

コルガン……GASTフォックス班の班長、実は元空挺団

秋口あきぐち 将光しょうこう……第1水陸機動連隊第1中隊所属

壱岐いき たつみ……47普連所属

蛭子えびす 覚司かくし……47普連所属

森間もりま 護平ごへい……第1空挺団の団長

浪城なみしろ げき……第1空挺団第2普通科大隊長

ぬり わたる……第1空挺団第2普通科大隊所属

大綱おおつな おさむ……特戦群1中隊所属、コードネーム「ノートン」

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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