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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第194話 点と線

カラーノです。銃声の質が変わり始めています。先ほどまでの敵は、押し返されながら撃っていました。射線も散り、制圧として成立していない。ですが、今聞こえている音は違います。間隔が整理されています。撃つ者と、移動する者が分かれている。発砲位置も固定されていません。


「……立て直してきました」(カラーノ)


私が言うと、BJ班長が岩場の向こうを睨みました。


「指揮系統が戻ったな。ようやく“軍隊”らしくなった。」(BJ)


それは、私も感じていました。敵は混乱から回復し始めています。場当たり的な動きではありません。後方に、射撃を管理している個体がいます。


「厄介ですか?」(カラーノ)


「害虫が群れ方を思い出しただけだ。だが、その状態が一番面倒なのは確かだな。統制が戻ると、撃たれる前に次が出てくる。そういう連中だ」(BJ)




岩場後方、第3領海警備隊上陸阻止大隊臨時指揮所。


「何をやっている!」(サプデイビス)


怒声が狭い指揮所へ響いた。サプデイビスは双眼鏡を机へ叩き置く。


視線の先では、敵が既に岩場地帯を抜けつつあった。海岸へ上がっただけの点ではない。各侵入部隊が繋がり始め、内陸側へ戦線を伸ばしている。その時点で、上陸阻止としては失敗に近かった。


「海上阻止線は維持していました。ですが、敵の揚陸速度が予測を超えています」(メンケント)


副官メンケントは、感情を混ぜずに答えた。


「言い訳を聞いているんじゃない! 敵を海へ落とせと言っている!」(サプデイビス)


「……」(メンケント)


その間にも、遠方で銃声が響く。メンケントは地図へ視線を落とした。怒鳴っても戦線は戻らない。必要なのは再編だった。


「対空支援分隊を前進配置します」(メンケント)


「何?」(サプデイビス)


「敵は、岩場の接続地帯を使って前進しています。なら、そこへ火力を集中させます」(メンケント)


「……海上の上陸阻止隊は?」(サプデイビス)


「第100と101小隊が敵の背後を突いていますが、状況は芳しくありません。」(メンケント)


淡々とした報告だった。


「ならばそれで行け。上陸を許した分を取り返せ。」(サプデイビス)


メンケントは短く頷く。


「対空支援分隊、前へ。岩場中央を優先砲撃。敵通路を分断しろ」(メンケント)


無線手が即座に復唱した。その瞬間から、敵の射撃が変わり始める。




前方300、岩場上部。


私はスコープの倍率を一段階上げます。敵影は完全には露出していません。ですが、射撃の流れから位置は追えます。撃っているのは前列です。後列は移動している。さらに、その後ろに別の個体がいる。直接撃っていない。ですが、射線の切り替えが妙に早い。


「観測役がいます」(カラーノ)


「だろうな」(BJ)


BJ班長は即答しました。


「撃ってる奴と、戦場を見てる奴が分かれてる。統制が戻ってる証拠だ」(BJ)


前方で閃光、直後、岩肌の一部が吹き飛びました。


「くっ…」(フロリアン)


「危なかったぁ…」(エルメス)


「直撃したら死んでたね。」(ガーツ)


轟音そのものは大きくありません。ですが、破片の飛び方が異常です。削れた岩片が散弾のように周囲へ飛散し、足場を叩きます。


「対空火器か……」(秋口)


秋口曹長は、吹き飛んだ岩肌を見たまま続けました。


「榴弾じゃない。速度で削ってる。航空目標用の高初速弾だ」(秋口)


再び閃光が走ります。次の瞬間、岩場の縁が抉れました。爆発より先に破壊が来る。砕けた破片が鋭く散り、周囲の岩肌を叩きます。


「なるほどね……対空砲を対地転用してるわけ」(フロリアン)


私は再び照準を覗き込みます。砲座は完全固定式ではありません。半埋設型です。岩場を削り、その中へ直接据え付けています。砲身後部には大型冷却ユニット。左右に給弾役。周囲には護衛射手。単純な防空陣地ではありません。


「近づかせる前に削る気だな。岩場に貼り付かせて、順番に潰す配置だ」(秋口)


「だろうな。」


「スパイダー班、前へ。観測役を探せ」(ビービ)


「了解」(カバナー)


「セイレーン、フォックス。敵射手を抑える。対空火器周辺を優先だ」(ビービ)


「任せて」(ローレライ)


パァン!


「狙撃手だ!」


「入れ替われ!」


「(相変わらず、見事な腕だ…くそったれ)」(ジミー)


対空火器付近の敵兵が崩れ落ちます。ですが、次の瞬間には別の個体が同じ位置へ滑り込んでいました。


「交代が早い……」(カラーノ)


「予備動作が出来てるな。完全に立て直されたわけじゃないが、頭は回り始めてる」(秋口)


その時、敵側から怒声が響きました。


「砲座を止めるな! 通路を維持させるな!」


言っている事は分かりませんでしたが、怒鳴り方で敵も余裕を失っているのが分かります。


「随分焦ってるね~」(シャーク)


「当然だ。上陸を許した時点で、あいつらは失敗してる」(BJ)


ですが、敵も諦めてはいません。岩場側の射撃密度がさらに増します。完全な制圧ではありません。ですが、進軍を止めるには十分な火力です。私は一度だけ呼吸を整えました。敵は強い。ですが、崩せない構造ではありません。むしろ今なら見えています。


どこで射線を管理し、どこで補給し、どこを維持しようとしているのか。


秋口曹長が、岩場右側を指差しました。


「あそこだ」(秋口)


視線を動かします。砲座右下、一見すると死角です。ですが、人の流れがあります。弾薬搬送、冷却交換、護衛も薄い。


「補給路……」(カラーノ)


「そうだ。あそこを切れば、砲は沈黙する。ようやく、壊し方が見えてきたな。」(秋口)


BJ班長がライフルを担ぎ直しました。ビービ班長が即座に命令を飛ばします。


「ピットブル班、水機団、右側面から浸透。対空火器を破壊する」(ビービ)


「了解」(BJ)


「了解した」(秋口)


BJ班長が先に動きました。岩場の陰を蹴り、射線の切れ目へ滑り込みます。水機団も即座に続く。動きが速い。互いに細かな確認をしていない。それでも噛み合っています。


「援護します」(カラーノ)


私は照準を補給路へ固定しました。敵も、こちらも、もう止まれません。


砲座後方では、給弾兵が新しい弾薬箱を運び込んでいます。冷却蒸気、怒声、射撃指示。敵は、まだ機能している。ならば先に断つ。補給を、射線、指揮を。その全てを繋いでいる“線”を。


「……撃ちます」(カラーノ)


引き金を絞りました。


登場人物紹介

カラーノ……GASTピットブル班所属で、本作のヒロイン

BJ……GASTピットブルは班長

フロリアン……GASTピットブル班所属。オネエ口調で話す大柄な隊員

エルメス……GASTピットブル班所属

ガーツ……GASTピットブル班所属。狙撃の腕には自信あり

シャーク……GASTピットブル班の副班長

秋口 将光……第1水陸機動連隊第1中隊所属の陸曹長

ビービ……GASTアマゾネス班の班長。

ローレライ……GASTセイレーン班班長で、GASTナンバー1の狙撃手

カバナー……GASTスパイダー班の班長

ジミー……GASTフォックス班所属で、GASTナンバー2の狙撃手。ローレライに対抗意識を持っている

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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