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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第191話 通路は残った

カラーノです。


私達の上陸後に起きた壇之浦での戦闘が一段落したあとも、現場は止まりませんでした。射撃の頻度は落ちていますが、完全に途切れたわけではありません。断続的な音に合わせて、各員が最低限の姿勢制御だけを行い、作業は継続されています。


私は一度だけ、中央区画へ視線を向けました。


――消失。


それだけで十分でした。確認は終わりです。視界から外し、残存構造へ意識を移します。


現在の通路幅は維持可能。負荷は両端に偏っていますが、補強が入れば通行には耐えられるはずです。完全ではありませんが、“通す”という目的には届いています。


「通路、維持できています」(カラーノ)


「……ああ、成立だ」(BJ)


短い応答でした。評価は一致しています。中央を失った影響は大きいですが、全体崩壊は回避されています。判断としては妥当です。むしろ、あのタイミングで切らなければ、全損の可能性が高かった。


私は周囲の配置を再確認しました。射線、遮蔽物、退避動線。先ほどまでとは構造が変わっています。つまり、同じ立ち位置は使えません。



「ピットブル、全員いるな?」(BJ)


「ええ、誰も欠けることなく上陸できたわ。」(フロリアン)


「アマゾネス、脱落なし。」(ビービ)

「タイガー、同じく。」(教授)

「リッチは、ウェイドが負傷した」(ネイマン)

「セイレーン、脱落者なし」(ローレライ)

「フォックス、同じく脱落者はいない。」(コルガン)


「スパイダー、プラングリーが海に落ちた。おそらく、もう死んでいる」(カバナー)

「……」(タック)


カバナー班長の横で俯くタックさん。プラングリーさんは、タックさんを庇って海に落ちてしまいました。その自責の念に囚われているのでしょう。


「47普連は……生き残っている方が少ないかな…」(シャーク)

「だが、彼らがいなければ、俺達も上陸できたか分からん。大きく貢献してくれた。それは忘れるな。」(BJ)


「もちろん、分かってるよ!」(シャーク)



私は一度だけ、視線を巡らせました。


各班の報告は簡潔でしたが、内容は十分です。損耗は出ていますが、機能は維持されています。つまり、作戦は継続可能です。


タックさんの様子も視界に入りました。ですが、声はかけません。今この場で必要なのは慰めではなく、配置の維持です。感情の処理は、任務の外で行うべきものだと判断しました。


遠くで、再び一発だけ乾いた音が響きました。誰も振り返りません。その音は、もはや新しい情報ではないからです。壇之浦は終わっていませんが、今の私達にとっては「処理済みの領域」でした。


「アイアン班の状況は?」(BJ)


「……班長は搬送中だ。意識はないが、生きてる」(ガジ)


短い報告でしたが、それで十分でした。周囲の空気がわずかに引き締まります。タハ班長が離脱した以上、アイアン班の指揮はガジさんに移っています。


「構築は続行できるか?」(BJ)


「できる。中央は落としたが、両端で持たせてる。補強を入れれば通行は維持できる」(ガジ)


事実の列挙だけでした。ですが、その中に迷いはありません。判断はすでに終わっている、という言い方でした。


コーカーさんが一歩だけ前に出ます。


「海側はまだ残ってる。さっきの連中、完全に引いたわけじゃない」(コーカー)


「分かってる。だが、追うな」(ガジ)


即答でした。


「ここは通すための場所だ。潰す場所じゃない。外に出れば、また同じ形になる」(ガジ)


コーカーさんは一瞬だけ視線を海に向け、それから小さく頷きました。


「……了解。じゃあ、残りは近づけさせないようにするだけだな」(コーカー)


「それでいい」(ガジ)


役割分担はそこで確定しました。戦闘部隊は排除ではなく“接近阻止”。施設科は構築の継続。無理に広げない。維持に徹する。私はそのやり取りを聞きながら、改めて現在の構造を頭の中で組み直しました。


中央がない以上、敵が取り付ける位置は限定されます。つまり、防ぐべき線も絞られる。広く見る必要はありません。狭く、確実に押さえるべきです。


「右側の支点、敵が寄りやすいです。水流で寄せられています」(カラーノ)


「見えてる。そこは任せる」(BJ)


「了解です」(カラーノ)


照準を合わせ、呼吸を整えます。撃つべき位置は明確です。迷う要素はありません。


「スサノオ、搬送ルート確保できるか?」(ガジ)


「問題ない。ここから先は任せて」(ヨネ)


「頼む」(ガジ)


それだけで会話は終わりました。


無駄がありません。それぞれが、自分の役割の範囲で必要なことだけを行っています。結果として、全体が機能しています。私は小さく息を吐き、再び前方へ意識を集中させました。


この構造は不完全です。ですが、成立しています。――そして戦場では、その状態こそが最も長く続きます。


ビービ班長が一歩だけ前に出ました。誰かを見たわけではありません。ですが、その動きだけで、周囲の視線が自然に集まります。


「――ここまでで“通した”。次は“通し続ける”ための作業に入るよ」(ビービ)


「タック、気落ちする気持ちも分かるが、ここは戦場だ。私達にはまだ任務が残っている。」(カバナー)


「分かってます。班長、あいつ(プラングリー)の分まで、アタシがやってやりますよ。」(タック)


タックさんは一度だけ顔を上げ、海ではなく足場の縁を見ました。そこにもう誰もいないことを確認すると、ゆっくりと銃を構え直します。



「対空装備を潰す。ここを通した以上、空が閉じていれば意味がない」(ビービ)


私は簡易地図に印を付けました。守るだけでは足りません。この通路は“通すためのもの”であって、“守るためのもの”ではないからです。次の段階へ進めなければ、この構造自体が無意味になります。


「……いい。そこから潰す」(BJ)


指示は短く、それで十分でした。作戦は、もう次の段階に入っています。


登場人物紹介

タック……GASTスパーダ―班の隊員。プラングリーを死なせた事を気にしている

カラーノ……本作のヒロイン。

BJ……GASTピットブル班の班長

シャーク……GASTピットブル班の副班長

教授……GASTタイガー班の班長

ネイマン……GASTリッチ班の班長

ビービ……GASTアマゾネス班の班長

カバナー……GASTスパイダー班の班長

コルガン……GASTフォックス班の班長

ローレライ……GASTフォックス班の班長


プラグリー:本名:帳坪ちょうつぼ ひらく

生年月日:1994年7月17日 / 出身:東京都

階級:三等陸曹 / 所属:GASTスパイダー班

備考:九州上陸の際、海へ転落し、水棲種により討たれる

享年:27歳

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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