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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第180話 正しい行動

病室の天井は白かった。無機質で、清潔で、何も残らない色だ。


「……暇だな」


益子武朗は、そう呟いた。腕には包帯、脇腹にも固定具。動けないわけではないが、戦場には戻れない。それだけの状態だった。


扉の前には、腕章を付けた隊員が一人立っていた。見慣れない装備。だが、立ち方で分かる。警務隊だ。



軽いノックが一度。


間を置かずに、扉が開いた。


「失礼する」


先に入ってきたのは、腕章の男だった。廊下に立っていた隊員とは別だ。階級章が目に入る。三等陸佐。その後ろから、もう1人。見慣れた顔だった。


「……連隊長」


益子は上半身を少しだけ起こす。空間は、特に表情を変えないまま、ベッドの横に置かれた椅子に腰を下ろした。


もう1人――月城駈門(つきしろ くもん)三等陸佐は、立ったままだった。手元の端末に一度だけ視線を落とし、それから益子を見る。


「第103地区警務隊、月城だ」


名乗りは簡潔だった。


「これより、オペレーション・ミネルヴァにおける行動について、確認を行う」(月城)


事務的な声。感情は乗っていない。


「……はい」(益子)


返事は軽い。いつもと変わらない調子だった。月城は一歩だけ距離を詰める。


「貴様は、指定された補給拠点において、武装勢力への攻撃を実施した。間違いないな?」


「はい」(益子)


「同地点に、我々が守るべき日本国民が含まれていた可能性がある」(月城)


「それを認識していたか?」(月城)


益子は、少しだけ考えるように視線を上げる。


「……いたかもしれません」(益子)


曖昧な言い方だった。


「思う、ではなく事実で答えろ」(益子)


即座に返される。


「確認したか、していないか」(月城)


「事実かと聞かれたら、分かりません。」(益子)


「それに確認なんて、あの状況じゃ出来ませんよ」(益子)


「グーリエ星人と日本人が共存してるなんて、誰が想像出来ましたか? あれは想定外の事でしょう?」(益子)


月城は一度だけ益子の顔を見てから、端末に視線を落とした。


「では次だ」


視線を上げる。


「貴様は、その攻撃の最中、笑っていたという証言がある」(月城)


空気が、わずかに変わる。益子は一瞬だけ眉を動かした。


「……そうなんですか?」(益子)


本気で分からない、という顔だった。


「自覚はないか?」(月城)


「ないですね」(益子)


あっさりと返す。


「そんな余裕、なかったと思いますけど?」(益子)


月城はしばらく益子を見ていたが、追及はしない。


「了解した」(月城)


短く言って、視線を横へ流す。空間連隊長が、初めて口を開いた。


「益子士長」


声は低いが、よく通る。


「はい」


「貴官は、あの場で何をしていた?」


問いは単純だった。益子は迷わない。


「任務の遂行です」


即答だった。


「補給線の破壊と、抵抗勢力の排除」(益子)


言葉を並べる。教範通りの答え。空間はそれを否定しない。


「結果は?」(空間)


「達成しています」(益子)


「過程は?」(空間)


「必要な行動でした。」(益子)


即答だった。空間はそれ以上踏み込まない。


「そう…」(空間)


それだけだった。否定も、肯定もない。沈黙が落ちる。月城が端末を閉じる。


「本日の確認は以上とする」(月城)


事務的に告げる。


「今後、追加の聴取を行う可能性がある。指示には従え」(月城)


「了解」(益子)


益子は軽く返事をする。緊張はない。2人は立ち上がり、そのまま扉へ向かう。開ける直前、空間が足を止めた。振り返らないまま、言う。


「益子士長」


「はい」


「貴官は、“正しいことをした”と思っているか?」(空間)


ほんの一瞬、初めて言葉に詰まる。確かに間があった。


「……はい」(益子)


それでも、答えは変わらなかった。空間は何も言わず、扉を開けた。2人が出ていく。扉が閉まり、再び、静寂が戻る。


足音が遠ざかり、完全に音が消えた後、益子はゆっくりと息を吐いた。


「……」


天井は、相変わらず白い。何も映らない。さっきの問いだけが、わずかに残っている。


――正しかったか?


「……」


少しだけ考える。だが、すぐに終わる。


「……まあ、いいか」


小さく呟く。


「結果は出してるしな」


それだけで十分だった。視線を天井に戻す。


「……やっぱ、暇だな」


同じ言葉が、もう一度落ちた。


登場人物紹介

月城つきしろ 駈門くもん

生年月日:1969年3月20日 / 出身:佐賀県

階級:三等陸佐 / 所属:第103地区警務隊


益子ますこ 武朗たけろう……35普連2中隊の問題児

空間そらま 瑠衣るい……35普連の連隊長

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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