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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第179話 再現性

―2021年9月某日―


臨時の訓練は、3中隊に混ざる形で行われていた。1中隊と2中隊は、まだ戻らない。負傷者の数が、そのまま戦力の空白になっている。その穴を埋めるための再編だった。


整列の列に立ちながら、違和感だけが残る。見慣れた顔が少ない。その代わりに――戻ってきているはずのない人間が、普通に立っている。


「隼人」


横から声がかかる。


同期の小城だ。


「思ったより早く戻れたな」(隼人)


「自分でもそう思う」(小城)


軽く笑っている。その息は、乱れていない。その動きは笑えないほど自然だった。負傷していたはずの身体に、引っかかりがない。


「もう問題ないのか?」(隼人)


「一応な。医務も首ひねってた」(小城)


冗談めかして言うが、内容は軽くない。


「あの状態から、こんなに早く治るのはおかしいってさ」


「……だろうな」(隼人)


否定はしない。似たような光景を見たことがある。あの時も、説明はつかなかった。今回も同じだ。ただ一つ違うのは――目の前で起きている、ということだけだった。走り方も、構えも、崩れていない。むしろ、余計な力が抜けているようにすら見える。


「まあ、動けるからいいだろ」(小城)


「……そうだな」(隼人)


それ以上は踏み込まない。理由が分からない以上、言葉にしても仕方がなかった。


「隼人はどうなんだ?」(小城)


「いつもと変わらず、さ」(隼人)


「記録、出てるって聞いたけど?」(小城)


どこからか伝わっているらしい。


「出る時はな」(隼人)


「毎回じゃない?」(小城)


「安定しない」(隼人)


短く答える。小城は少しだけ考えるようにしてから、頷いた。


「でも、届くんだろ?」


「……ああ」(隼人)


レンジャーの基準。特級の数字。そこに届く時がある。ただ、それが続かない。


「じゃあ、あと少しじゃん」(小城)


「どうだろうな」(隼人)


その“あと少し”が、埋まらない。


「――集合」


号令がかかる。会話はそこで途切れた。



訓練は単純だった。「走る・登る・撃つ」

繰り返しの中で、差だけがはっきりしていく。小城は、崩れない。一定のリズムで、一定の結果を出し続ける。


僕は違う。出る時は出る。だが、その次が続かない。記録は並ぶ。だが、安定しない。


「……」


終了の号令と同時に息を整える。


視界の端で、小城が水を飲んでいる。呼吸は乱れていない。


「段場一士」


呼ばれる。振り返ると、空間連隊長が立っていた。額の包帯が痛々しい。自然と姿勢を正す。


「少しいいかな?」(空間)


「はい」(隼人)


人の少ない場所へ移動する。周囲の音が少し遠くなる。


「記録は確認している」(空間)


「はい」(隼人)


「特級に届いているね」(空間)


事実だった。否定する必要はない。


「ただし、数字は安定していない。課題はそこね。」(空間)


「……はい」(隼人)


その通りだった。


「来年のレンジャーだけど、実施は5月よ」(空間)


時期が示される。半年以上ある。だが、長いとは感じなかった。


「受けるか?」(連隊長)


短い問いだった。考える時間は、あまり長くない。


届く時はある。けど、毎回ではない。


このまま受けるか、それとも、固めるか。


「……今回は、見送ります」(隼人)


空間連隊長はわずかに頷く。驚きはない。想定内の答えだったようだ。


「理由は?」(空間)


「再現性がありません。今の状態で受けても、“運が良ければ通る”だけです。それでは意味がないと判断しました」(隼人)


空間連隊長は短く息を吐いた。


「そうね。」(空間)


それだけだった。そして視線を横へ向ける。


「小城一士」


呼ばれた本人がすぐに来る。


「はい」(小城)


「来年5月のレンジャー、推薦する」(空間)


一瞬だけ、小城の動きが止まる。だが、すぐに戻る。


「……了解しました」(小城)


声は落ち着いている。だが、わずかに硬い。


「準備しておきなさい」(空間)


「はい」(小城)


空間連隊長はそれ以上何も言わず、その場を離れる。短い沈黙が残る。


「……マジか」(小城)


小さく呟く。驚きと、緊張が混ざっていた。


「妥当だろ」(隼人)


自然に言葉が出る。


「隼人は?」(小城)


「今回は見送る。僕はまだ実力不足だ。」(隼人)


「それでも受けると思ったんだけど」(小城)


「僕も成長したのさ。 “前よりは” 、ね」(隼人)


「自分で言うなよ」(小城)


小城は呆れて笑った。


「先に行くわ」(小城)


「おう」(隼人)


小城は軽く手を上げて、その場を離れる。その背中は、迷いなく前を向いていた。


「……」


視線だけで追う。同じ訓練場、同じ空気。だが、立っている位置が、少し違う気がした。


「(最後の記録、特級に届いていた。でも、それが続く保証はどこにもない。これで良かったんだ…)」(隼人)


「ふぅ……」


息を吐く。「悔しい」とは少し違う。納得している。判断も間違っていない。それでも、引っかかるものが残る。


「……次だな」


小さく呟く。誰に聞かせるでもない言葉だった。


登場人物紹介

段場だんば 隼人はやと……本編の主人公

小城こじょう 聖太せいた……隼人の同期

空間そらま 瑠衣るい……35普連の連隊長

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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