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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第3章 九州奪還へ

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第178話 綾瀬 彩乃の憂鬱

引き続き、綾瀬綾乃です。


群長の圧に屈した翌日、早速私はGASTへ合流しました。私には、「シシリア」というコードネームが与えられ、ファルコン班に配属されました。


配属先を見て、驚きました。ファルコン班は2人しかいません。そして、私を見て喜ぶ御2人…。ファルコン班はGAST随一の人手不足の班なんだそうです。快く迎えてくれたのは嬉しいのですが、この業務量は、私1人が加わったとて、人手不足は解消しない気がします。


その事を聞いてみたら……ピート班長はお花摘みに行きました。


とはいえ、早速任務を…と思いきや、私は普通科の皆さんと一緒に訓練だそうです。どうして??




というわけで、訓練場に連行じゃなかった、連れていかれた私は、GASTの皆さんと一緒に訓練をしました。その前に…GASTって変わり者の集まりなんですか?


私を見て、いきなり連絡先を聞いてきたソブラウ、殺気がダダ洩れな人(BJ)――その殺気はグーリエ星人に向けて下さいよ、怖いです――オネエ口調の大柄なおじさん(フロリアン)、休憩時間に男性隊員へエッチなお誘いをしているお姉さん(ビービ)などなど。


そんな個性的な皆さんと、今日は訓練に勤しむとの事…。


「今日は軽めだ。安心しろ」(茶頭)


教官はそう仰いましたが、私はランニングにも、腕立てや腹筋、懸垂も全然ついて行けませんでした。特にきつかったのは、グラップル・ワイヤーを使って立体物に登りながら、ドローンを撃ち落とす訓練です。私は、このグラップル・ワイヤーの操作が苦手で、普通に登ることで精いっぱいでした。何度も、ドローンからの攻撃を受けてしまいました。


「ぜぇぜぇ、はぁはぁ…」(シシリア)


立つこともままならない私に、先輩方は厳しい目を向けます。確かに私は、体力に自信はありません。ですが、4年間厳しい訓練を行った自負はあります。その4年間が無駄だったのかと思う程、GASTの訓練はハードで、隊員の皆さんの能力の高さにただただ驚くばかりです。


「お前は電子戦担当だから、気を落とさなくていい。」(茶頭)


「ただ、前線で命を張っている連中の覚悟を見せたかっただけだ。」(茶頭)


教官はそう言って、私を咎めることはしませんでした。



その日の夜、私の歓迎会を開いてくれました。場所は、駐屯地内にある居酒屋です。


「新人だ、潰すなよー」(コルガン)


コルガン班長が笑いながら言いますが、誰も守る気はなさそうです。


「シシリアさん、連絡先いいですか?」(ソブラウ)


「今じゃないですよね?」(シシリア)


「今でしょ!」(ソブラウ)


即答でした。何なんですかこの人。


「ちょっとアンタ、空気読みなさいよ」(フロリアン)


横から太い腕が伸びて、ソブラウの頭を軽く叩く。軽くのはずなのに、いい音がしました。


「歓迎会なんだから、まずは乾杯よ」(フロリアン)


「いいこと言うじゃないか、フロリアン!」(ビービ)


「当たり前でしょ、こういうのは順番が大事なの」(フロリアン)


グラスが配られる。私の前にも置かれる。


「じゃあ――新入りの無事な配属と、」(シャーク)


シャークさんが一拍置きます。


「明後日からの出撃の成功を祈って」(シャーク)


その言葉で、空気が一瞬だけ静まった。


「――乾杯!!」(シャーク)


「乾杯!」


グラスが触れ合う音が、妙に大きく聞こえました。私は、その言葉を頭の中で繰り返していました。


明後日、出撃。


「九州だっけ?」(シシリア)


思わず口に出してしまう。


「ああ」(茶頭)


短い返答。


「沿岸部の制圧支援。電子戦は、最初からフル稼働だ」(シルビア)


説明はそれだけでした。


「……最初から?」(シシリア)


「上陸前からだ」(シルビア)


それ以上は言わない。誰かが笑っていたはずなのに、気づけばその声は消えていました。ソブラウも、BJ班長も、誰も喋っていない。グラスを持ったまま、動かない。


「まあ、いつも通りだよ」(シャーク)


シャークさんが軽く言う。


「違うだろ」(BJ)


低い声。BJ班長でした。


「今回は数が違う」(BJ)


それだけ言って黙る。その一言で、場の温度が完全に変わりました。


私は、ようやく理解します。この人たちは――本当に行くんだ。そして、何人かは戻ってこない前提で話しています。


「皆で飲めるのは今日で最後かもしれん。たくさん食ってたくさん飲め。」(BJ)


冗談の形をしているが、冗談ではありません。


私はグラスを口に運びます。味がしない――いや、違う。喉が上手く動かない。飲み込むまでに、少し時間がかかりました。


「……」(シシリア)


手の中のグラスが、少しだけ震えていました。怖い、というよりも、実感が追いついてきません。


「シシリア」


呼ばれて顔を上げます。茶頭教官でした。


「お前は後方だ。だが、関係ない」(茶頭)


視線が真っ直ぐ刺さります。


「戦場は全部、繋がってる」(茶頭)


それだけ言って、視線を外す。


会話が再開しますが、ビービ班長は、相変わらず男性隊員を誘惑しています。平時なら、「あの艶やかな身体に飛びつかない人はいないだろう」と、そんな事を思いました。


遺書を声に出して読む人、「死にたくない」と涙ぐむ人、無理に戻したような笑い声。その様子を切なそうに見るモンソン…。


私は再びグラスを口に運びます。やっぱり味は、よく分かりませんでした。


宴は続いています。笑い声も、会話もある。けれど、もうさっきまでのそれとは違っていました。誰もが知っています。明後日、自分たちがどこへ行くのかを。そして、その先に何があるのかを。


私は、グラスを持ったまま動けずにいました。逃げたい――と思います。でも、それ以上に、ここから逃げても、行き先がないことも分かっています。


「……」


視線を上げても、誰もこちらを見ていません。それでも、この場所にいる限り、私はその一員です。まだ実感はないけれど――もう、無関係ではいられません。


登場人物紹介


綾瀬あやせ 彩乃あやの……GASTファルコン班に配属。コードネームは「シシリア」

ピート……GASTファルコン班班長

モンソン……GASTファルコン班所属。優秀なホワイトハッカー

ソブラウ……GASTアルバトロス班所属。カッコいいお姉さんが大好き

BJ……GASTピットブル班の班長、GASTでも最強の実力者

フロリアン……GASTピットブル班所属、大柄で筋骨隆々ながら、オネエ口調で話す

ビービ……GASTアマゾネス班班長、普段は性に奔放なところがある

茶頭ちゃがしら 恋美瑞こみず……特戦群教育隊所属、GASTの教官

コルガン……GASTフォックス班の班長

シャーク……GASTピットブル班の副班長

シルビア……GASTの中隊長

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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