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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第1章 初陣~オペレーション・ギデオン~

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第17話 嵐の前にも嵐

お久しぶりです。段場隼人です。登場するのは、いつ以来でしょうか。登場はしませんでしたが、真面目に任務をこなしていましたよ。




9月22日、この日は真鶴一中に兵站拠点を築くべく、付近の哨戒任務を35普連1中隊が、そして、海上からの敵の上陸に備えて、僕ら2中隊が海沿いを哨戒することになった。


僕らは、国道から海上を警戒していた。グーリエ星人の姿は目視出来ないが、波と潮風の強さが頬を叩く。この波の強さなら、海に落ちると水棲種に襲撃されなくとも命を落としそうだ。哨戒任務にも緊張が走る。


『こちら郷。真鶴岬で交戦中』


無線から、郷三尉の叫びが聞こえた。


『敵多数!』


高機動車の中で空気が凍る。


『2中隊、援軍を送れるか?』(片桐)


「可能です」

※和戸 一暁一等陸尉


「段場、苫米地。出るぞ!」(地頭)


「了解です!」


高機動車は真鶴岬へ向かって走った。車内では誰も喋らない。聞こえるのはエンジン音と、遠くから響く銃声だけだった。


「民間人が遊んでいるなんてことはない。グーリエ星人とみて間違いない。」


そう話す地頭曹長。


「銃声が聞こえますね。」


「ああ、こりゃ、戦闘に入ってるな。」(亜久)


『こちら城山方面、敵と接触!』


『海岸線でも敵を確認!』


『海自より、海中目標多数』


車内に緊張が走る。各地で戦闘が始まった。僕達は弾倉を装填し、降車後すぐに叩けるよう準備をした。国道135号線から、真鶴半島公園線で僕らは高機動車から降り、速足で自然公園まで向かう。銃声も次第に大きくなり、戦場の喧騒が僕らを包み込む。


「内久保士長!」


「向こうには、川田三曹が…。」(杏南)


「もう死んでる…。」(新山)


「行くぞ。これ以上、犠牲者を出すな!」(地頭)


岬が見えてくると、情報小隊とグーリエ星人が戦っていた。相手は、半漁族や河童族のようだ。数では…敵の方が多い…。情報小隊は劣勢…。


「諏訪と段場、苫米地は、怪我人の救護を。残りは戦闘用意だ!」(地頭)


地頭曹長の指示で、僕らは散開し、グーリエ星人へ攻撃を開始する。僕と杏南、諏訪一士は、その隙に怪我人を救護する。


「うう……」


「頑張ってください…。」


僕が救護した七井(なない) 雄二(ゆうじ)二等陸曹は、銃弾が脇腹をかすめただけなのに、肉が抉れている。止血をしているが、血が止まらない。


「段場、諦めるな! 七井二曹も戦っているんだ!」


江鹿一曹の激が飛ぶ。僕も必死で患部を圧迫し、止血を行う。


救護中も、僕の周りでは戦闘が繰り広げられていた。包帯を押さえる僕の横を銃弾が掠めた。土が跳ね、顔に砂が飛ぶ。


「伏せろ!」


江鹿一曹の怒鳴り声が響く。


諏訪一士の姿が視界に入った。悔しがるように地面を叩く。処置していた上官が亡くなったようだ。その奥で、別の隊員が被弾した。すぐに駆け付けたいが、七井二曹を放っておけない。


状況が好転したのは、その後だった。グーリエ星人の叫び声が響き渡った。杏南だった。杏南は倒れていた半漁族の剣を拾うと、ためらいなく踏み込んだ。銀色の閃光が走った。敵の胴体が、斜めにずれて崩れ落ちる。はて、杏南は僕と同じで救護任務だったはずだが?


「すみません、その…成り行きで…」


「いや、上出来だ」


そう答える亜久二曹だったが、顔は引きつっていた。


(何だ、あの戦闘能力…。しかし、苫米地のお陰で助かった。)


「今だ!」


地頭曹長の号令により、敵の隊長と思わしきグーリエ星人に、一斉射撃を行う。


「ぐわああああ」

「撤退、撤退だ!」


生き残ったグーリエ星人たちは、海へ飛び込み、撤退していく。


「ここまでだ。我々は海中に対応できる武器がない。」


「地頭曹長、援軍感謝する。」


「郷三尉、それよりも、怪我人の救護を急ぎましょう。」


僕らは、怪我人の救護と遺体の回収を行った。杏南の驚異的な戦闘力で状況を打開できた。杏南の強さは実戦でも驚異的だった。心なしか上官達も驚いていたように見える。


海中へ逃げたグーリエ星人たちは、海自の新装備、「攻撃・妨害型水中ドローン・剣魚(つるぎうお)や「作戦遂行型小型無人潜水艦・叢雲(むらくも)」が駆逐していったと、その日の夜に知った。僕が救護した七井二曹は、一命はとりとめるも、まだ意識が戻っておらず、余談は許さない。


別の場所では、怪我人が複数出たものの、死者は出なかったとの事だ。僕らが戦った真鶴岬でのみ死者を出してしまった…。


また、この日の21:45、さらに訃報が届く。園山三佐と、榊原三曹、下葛三曹が搬送先の病院で亡くなったとの知らせが入る。


「なんて…ことだ…。」


誰かが震える声で呟いた。僕の胸にも、鉛を流し込まれたような重い痛みが広がった。また仲間が…。


これで35普連の死者は、10名を超えた。同じ釜の飯を食う仲間が、こうも容易く命を落とすのは、何度経験しても辛い。


仲間の死の知らせに、若手隊員たちの間には動揺が広がり、中には声を上げて泣き出す者もいた。しかし、ベテラン隊員たちはただ黙って、静かに耳を傾けていた。その姿は、まるでこの悲劇に慣れ切っているかのようだ。そのうち慣れるなんて言われるが、果たして慣れるのがいいことなのか……。


片桐一佐は、2中隊に対して、粛々と指示を出す。近々、新しい中隊長を本部管理中隊から派遣するが、中隊長の代理は当面、和戸一尉が努める、と。


和戸一尉は普段と変わらぬ口調で指示を出していた。しかし、その声はいつもより僅かに低かった。園山三佐を失った悲しみは、和戸一尉も同じはずだ。それでも誰かが前を向かなければならない。今、その役目を背負っているのは和戸一尉だった。


彼は、僕ら若手隊員の動揺をすべて受け止め、その上で、明日を生き抜くための道を示そうとしている。 和戸一尉の背中が、戦場の厳しい現実に直面し、一回り大きく見えた気がした。僕らは、和戸一尉の背中についていくしかないのだ。彼が僕たちの新たな「中隊長」として、先頭に立つことになる。そのためにも—。


とにかく寝よう。明日も任務は続くのだ。まだまだ序盤で、昨日の小規模戦闘だけで終わるわけがない。休めるうちはとことん休んで、疲労回復に努めないと。




― 2020年9月23日 6:50 ―


遠くで爆発がした。朝食を摂っていた僕らに、緊急の連絡が来た。


「別部隊が、大月で戦闘に入った!?」


食堂の空気が凍りついた。大月――。ここから遠く離れた山間の町だ。


その時の僕らは、まだ知らなかった。この戦いで、多くの仲間を失うことになるとは。

本作に出てくる架空の装備品

攻撃・妨害型水中ドローン・剣魚つるぎうお……先端が鋭く、剣状のため、先端で攻撃も出来る。

作戦遂行型小型無人潜水艦・叢雲むらくも……空母から操縦している無人潜水艦。

電光でんこう……水中ドローン用の魚雷。小型ながらも素早く、電撃的な攻撃をする。

水燕すいえん……小型無人潜水艦用の魚雷。水中を燕のように自在に動き回る。


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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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