第16話 嵐の前の静けさ
陸上自衛隊 座間駐屯地―――現テリムト参謀支部・座間基地
「全員集まったようだな。」
作戦室に集められた将校たちの中で、私は腕を組んで立っていた。
ごきげんよう、皆さん。私はレイ・カラウスキ、帝国陸軍曹長だ。今日も私は斥候だ。ただし今回は違う。敵情を探るだけでは終わらない。作戦後半では敵の背後へ回り、退路を断つ役目も担う。
「今回は、3個大隊を基幹とし、我が作戦参謀部が統括する。作戦全隊の指揮は私が執るが、現場指揮官には、ペーリ・アイトンダ陸軍大佐を任命する。作戦は2段階だ。」
ゴア准将は地図を指した。
「第1段階。特殊作戦部隊と上空哨戒部隊は先行潜入。敵の指揮系統を切断する。成功した場合、暗号“コユーザ”を送れ。」
「第2段階。第3砲兵大隊が司令部を叩く。第1歩兵大隊は正面突撃、第2歩兵大隊は側面を包囲。上空部隊は背後に回り退路を断つ。」
「これで敵に逃げ場はない。包囲殲滅だ。」
「了解した。」
「出発は、21:30、失敗は許されない。心してかかれ!」
「了解!」
出発まで少し時間がある。今のうちに温かい食事を摂って英気を養いたいものだが、レーションで我慢だ。帝国軍特性のレーションは、栄養満点で味も良いが、ここは地球。数に限りがあるので、支給されるのは1人1本だ。幸い、移動はヘリなので、移動中は仮眠を取らせてもらおう。
「アステリム帝国属領テリムト軍・大月攻略部隊、出撃!」
アイトンダの号令が響いた。
―2020年9月22日 21:30、テリムト参謀支部・座間基地を出発―
…………眠れん……。
よりによって隣がシュグルポッター大尉とは。上官の隣で寝息など立てられるものか。
一方、小田原市某所にて。
「少佐殿、私達で奴らを殲滅させる気で?」
「いや、作戦の本筋は、罠が完成するまでの足止めだよ。ゴア准将は、殲滅させても構わないと仰っていたけど、私達が功を焦って攻めては危険よ。罠が完成するまでに進軍されるわけにはいかない。」
「敵は下等生物です。我々が積極的に攻勢へ出れば、殲滅も可能ではありませんか!」
副官、フェア・アンタスの言葉に、イオクタンは首を振った。
「違う。」
イオクタンは静かに首を振った。
「敵を倒すことが目的ではない。」
「敵を止めることが、この作戦の勝利条件よ。」
「そのために時間を稼ぐの」
「は、はぁ…。」
「納得できない?」
「え、いや、その…。」
「命令全てが納得できるものにはならないわ。大事なのは、作戦の本質を見失わず、私達がすべき最善の策を行うことよ。敵を倒すのも、時間をかけて確実に屠りましょう。」
「了解…しました…。」
アンタスは納得していない。その表情だけで、イオクタンには分かった。命令の意図が末端まで浸透しなければ、戦場では必ず判断のズレが生まれる。部下をどう導くか――それが今の自分に課せられた仕事だった。
登場人物紹介
ファネッタ・イオクタン
種族・性別:エルフの女性
所属・階級:陸軍少佐、予備隊で編成される部隊の指揮官
ペーリ・アイトンダ
種族・性別:鬼人族の男性
所属・階級:陸軍大佐
備考:大月攻略部隊の野戦指揮官を務める。
フェア・アンタス
種族・性別:ハーフエルフの女性
所属・階級:陸軍中尉、予備隊。
備考:イオクタンの副官として、予備隊から招集された。
グーリエ星に存在する種族
鬼人族……前髪生え際に角が生えている。大柄な体格に育つことが多い。男性は角が2本、女性は角が1本生えてくる。角は折れてもまた生えてくる。赤鬼科と青鬼科がいて、赤鬼科は暑さに、青鬼科は寒さに強い。アイトンダは赤鬼科。
尚、豆は好物なので、投げても効果はない。アイトンダは、地球に来てからの酒のつまみは、ピーナッツ→枝豆→柿ピー→ピスタチオのローテになっている。




