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外星戦記  作者: 無名の凡夫


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第14話 隼人が見たもの

僕は、要に今日起きた事を全て話した。


僕らが遭遇したグーリエ星人は、河童の姿をしていた3体で、そのうち1体を江鹿一曹が手榴弾を投げ返して仕留めたこと。残り2体は捕虜として確保したこと。そして、その後に園山中隊長の班が天使族の襲撃を受け、被害が出たこと。


「何だ、それはもう知ってる。」


要のその一言に、僕はむっとした。僕が全身で感じた、手榴弾の爆発と死の予感、江鹿一曹の咄嗟の判断力、そして仲間達が命を懸けていたという、重く確かな現実が、要のたった一言で軽く扱われたような気がした。



―回想―


僕らが、河童型グーリエ星人と戦闘を終え、哨戒任務を再開した時のことだった。


「曹長、園山中隊長の班が、戦闘に入ったようです。」(新山岳(しんやま がく)三等陸曹)


無線が緊張を伝える。僕らは、新崎川沿いから離れ、湯河原の市街地へと向かっていた。すると、上空で何か爆発音がした。


「こちら智川。上空に天使族を視認。ドローンが尽く破壊されている。上空からの攻撃に警戒せよ。」


「天使族…。」(隼人)


僕は、上空を見渡した。視界には、ドローンが破壊される様子と、素早く動く物体が複数。まだはっきりと分からないが、あれが天使族なのか。


「曹長、どうします?」(中西)


地頭曹長は、即座に判断を下す。


「今の装備では、天使族相手だと分が悪い。10高を呼びたいが…。新山は本部に報告し、10高の派遣要請をしろ。そして、中隊長と合流する。」(地頭)


「了解!」


「本部、こちら35普連2中の新山三等陸曹。天使族を視認。10高の派遣を要請する。」


「既に動いている。間もなく向かう。」(賀井)


「了解。」


「よし、我々は中隊長のもとへ急ごう。」(地頭)


その時、北の方角から、空気を震わせるような重い爆発音が響いた。


DOOONG!


「12時の方向から爆発音! 規模からロケット弾相当の火力と思われます。」(理央)


「ロケット弾? 自走発射機が街中にあるということですか?」(隼人)


「いや、奴らはロケット弾相当の火力が出せるマシンガンを持っている。」(地頭)


「そんなものが!?」(隼人)


「それがグーリエ星人の恐ろしさだ。個体としての戦闘能力に、装備の発達。何もかも俺達の上をいく。」(新山)


「つまり、あの攻撃は…。」(杏南)


「グーリエ星人からだ。」(地頭)


第10高射特科大隊が現場へ向かっているという話だが、それはまだ先の話だ。


「上空の天使族がこちらに接近。数は5体、いや、8体!」(まひる)


上を見ると、白い翼を持った人影が5体。そして、その天使族に抱えられている人影が3体。天使族は負傷しているようには見えない。抱えられている3体は、二瓶三曹のドローン攻撃で負傷した斥候部隊だろうか。この天使族は、戦闘ではなく負傷した仲間の救護に来たのか。


敵の様子を見て、僕は悟った。園山中隊長の班は……負けたのだ。


その瞬間、僕の中で何かがぷつりと切れた。仲間が、僕の知らない場所で、こんな恐ろしい敵に蹂躙された。怒りと悲しみ、そして自分では何もできない無力感が混ざり合い、僕の感情を爆発させた。


「あの野郎!」(隼人)


僕は怒りに身を任せ、天使族へ向けて発砲した。地頭曹長から「撃つな!」と制止されたが、構わず討ち続けた。


TATATATANG! TATATATANG!


その瞬間、空を飛ぶ天使族の一人が振り返った。――目が合った。ほんの一瞬だった。だが、その瞳には確かな苛立ちが浮かんでいた。そして、僕らの方向へ警告射撃を行った。


HYUOOO!


DOSHU!


弾は僕らを狙っていなかった。道路の中央を正確に撃ち抜き、爆風だけをこちらに叩きつけた。爆発の際に飛び散った小石が当たり、数名が軽傷を負った。陥没した道路を見て、あれが直撃していたらと思うと、背筋が凍った。


「何やってるんだ、馬鹿者が!」


地頭曹長の怒鳴り声が響く。


「敵をよく見ろ、俺達を見てなかっただろ! お前の発砲で、天使族は初めて俺達を敵と認識した。」(新山)


新山三曹は、目尻から出血していた。小石の破片が当たったようだった。


「状況を思い出して。敵は、負傷兵を抱えていた。怪我人を離脱させることが目的だったんじゃない? それに、私達の装備では、上空の天使族へは分が悪い。ここで攻撃するべきではなかった。」


瑛松二曹は、僕をまっすぐ見つめ、そう諭した。優しい声掛けだったが、その目は冷たく、僕の軽率さを責めていた。


「お前の軽率な行動で戦況が変わり、被害が出るところだった。感情で動くな。感情で動くと、軽率な行動になりがちだ。死者が出なかったのは、幸運だったと言わざるを得ない。それを肝に銘じろ。」


地頭曹長の言葉は、僕に胸に鉛のように重く圧し掛かった。曹長は怒っていたが、その怒りには僕への深い配慮が込められているのを感じた。僕の軽率な行動が、僕自身だけでなく、仲間を危険に晒した。その事実が、僕の心を深く抉った。


――もしあの弾が直撃していたら。仲間を殺したのは、敵ではなく僕だった。


僕は、状況が見えていなかった。敵が僕らを素通りしようとしたのと同様、僕らも園山中隊長の下へ駆けつけるべき状況だったのだ。


「こちら廣嶋。中隊長ほか、5名を発見。うち2名は死亡。」(廣嶋)


…!


2名が死亡…。僕らや10高が駆けつけた時には、戦闘は終わり、すでに2名の仲間が帰らぬ人となったのだ。上空の天使族も見えなくなっていた。


「了解。廣嶋達は、重傷者の処置と周囲の警戒を。今から35普連の衛生小隊と4中隊をそちらに派遣する。地頭の班は、任務を継続しろ。」(有朋繁(ありとも しげる)陸将)


拠点に戻り、死傷者の状態を聞かされ、気が重くなった。重傷者は戦列に戻るどころか、日常生活にも支障が出るほどの重体だ。何より、園山中隊長が戦線を離れるのは、2中隊としても痛手となる。



―現在:湯河原駅裏・兵站拠点―


「その程度で凹んでたら、この戦争じゃ三日も持たないぞ。」


その言葉に、僕は何も言い返せなかった。だが、それは正しいからではない。要は――まだ戦場を知らない。


…とにかく、横になって休みたい。


杏南や他の同期も、僕と同じような気持ちなのだろうか? 同じように疲労と、心の傷を抱えているのだろうか? 僕ら新人は、湯河原で初めて、戦場の洗礼を受けたのだった。

登場人物紹介

新山しんやま がく……1996年10月6日生まれ / 愛知県出身 / 階級は三等陸曹 / 35普連2中隊所属。


有朋ありとも しげる……1964年5月1日生まれ / 東京都出身 / 階級は陸将 / オペレーション・ギデオン(第7次首都圏奪還作戦)最高司令。


段場だんば 隼人はやと……本編の主人公だが、今のところ未熟さしか見せれていない。


地頭じとう 孝之たかゆき……35普連2中隊の頼れるベテラン隊員。


智川ともかわ 義郎よしろう……35普連情報小隊所属。ドローンの操縦に自信あり。


中西なかにし ほたる……35普連2中隊所属。


賀井がい 双一郎そういちろう……34普連の連隊長。


瑛松えいまつ 理央りお……35普連2中隊所属。


苫米地とまべち 杏南あんな……隼人の同期で恋人。


魚見 まひる……35普連2中隊のムードメーカー。


レイ・カラウスキ……帝国陸軍曹長で天使族。隼人の発砲にイラっとして撃ち返した。

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