↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
外星戦記  作者: 無名の凡夫
第2章 成長と挫折

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
161/269

第161話 崩れない中枢②

弾薬庫周辺は、もはや戦場という言葉だけでは括れないほど、原形を失っていた。爆発によって抉られた地面には瓦礫が散乱し、傾いた構造物はいつ崩れてもおかしくない状態にある。燃え続ける残骸からは熱気と煙が絶えず流れ込み、足場を選びながら立つことさえ、ひとつの技術になっていた。


その不安定な地形の中で、両者は一定の距離を保ったまま対峙している。


「正面は切り捨てる。分散して動け」


教授の短い指示を受け、タイガー班は即座に動いた。一直線の撃ち合いをやめ、それぞれが異なる角度から射線を作るように展開していく。正面から押し込むのではなく、弾薬庫周辺の地形そのものを利用して、メンキの行動範囲を削っていく動きだった。


その一方で、メンキは動かなかった。ただ、視線だけがタイガー班の隊員たちを追っている。


(ふむ……)


相手が何を狙っているのか、メンキには見えていた。


距離を詰めることが目的ではない。敵は自分を囲もうとしているわけでもなかった。周囲の構造物と瓦礫を利用し、戦う場所そのものを変えようとしている。


「構造物を使うつもりか」


メンキが独り言のように呟いた、その直後だった。爆発音が弾薬庫周辺に響き渡る。


崩れかけていた壁が撃ち抜かれ、支えを失った構造物が大きく傾いた。次の瞬間、壁面が崩れ落ち、土煙と粉塵が周囲へ一気に広がる。視界が遮られ、先ほどまで見えていた射線がいくつも途切れた。


「視界、分断成功」


ティムールの報告が入る。


「続けろ」


教授の指示に応じ、タイガー班は間を置かずに次の行動へ移った。


別の構造物にも射撃が集中する。弱っていた壁が崩れ、さらに煙が立ち込めた。メンキの周囲には遮蔽物が増え、それに伴って死角も広がっていく。


(……なるほど)


メンキは周囲を見渡した。包囲ではない。拘束だ。


相手は自分を一気に仕留めるのではなく、逃げ道と射線を少しずつ限定している。動けば撃たれる。動かなければ、周囲を削られていく。


「理に適っている。」


わずかに口元が動いた。その瞬間、左側の煙が揺れた。


メンキの反応は速かった。銃口が煙の揺らぎへ向き、ほとんど間を置かずに発砲する。弾丸が煙の中を正確に貫き、隠れていたチェールの身体を掠めた。


「……っ」


浅い傷だった。だが、チェールの動きは止まる。


「まだ見えているか」


教授が問いかける。


「癖でな」


メンキは短く答えた。しかし、その直後には別方向から銃声が響いた。


カンだった。視界を失ったまま、それでも射撃を続けている。自らの目で敵を捉えるのではなく、得られた位置情報を頼りに銃口を向け、一定の射線を維持していた。


「射線、固定」


弾丸はメンキには当たらない。それでも十分だった。その射撃によって、メンキが動ける方向はさらに限定される。


「今だ!」


教授の声と同時に、フランキーとジーナが動いた。


2人は左右から間合いを詰め、煙と瓦礫の間を抜けながら一気に距離を縮めていく。


メンキは一歩だけ後退した。それは、この戦闘が始まってから初めて見せた明確な位置変更だった。


だが、その足元で地面が崩れた。


誘爆によって内部まで脆くなっていた地盤が、荷重に耐えきれず崩落する。メンキの足が沈み込み、ほんの一瞬だけ身体の軸が乱れた。


その一瞬を逃す者はいなかった。


複数の銃口が一斉にメンキへ向けられ、ほぼ同時に弾丸が集中する。


メンキは身を捻った。数発は紙一重でかわしたが、そのすべてを避けることはできなかった。一本の弾丸が脇腹を掠め、衝撃が身体を揺らす。


「……」


息がわずかに乱れた。ほんの一瞬だった。だが、その一瞬の遅れをメンキ自身が理解していた。


「捉えたか」


教授の声が煙の向こうから響く。それでも、傷は浅い。


メンキは崩れた足場から身体を引き起こし、体勢を立て直した。視線は先ほどまで以上に鋭くなっている。


(なるほど……ここまでか)


このまま距離を取って戦い続ければ、少しずつ削られていく。


地形は敵に利用され、射線も制限されている。こちらが動くたびに、その動きを狙われる。ならば、選択肢は一つしかない。


(先に踏み込む側になるしかない)


メンキは銃を構えたまま、前へ出た。


「来い!」


自ら間合いを詰める。


防御を捨て、射撃戦を続けるのではなく、相手の射線が十分に機能する前に距離を潰す。近接戦へ持ち込むための判断だった。


「突っ込んでくる!」


ジーナが叫ぶ。


「構うな、迎え撃て」


教授は動じない。距離が一気に縮まっていく。


銃声が重なり、周囲ではなおも爆発が続いていた。煙に覆われた弾薬庫周辺で、両者が互いの射線を潰しながら前へ出る。


もはや、引き返せない間合いだった。戦場の中心は完全に一点へ収束している。


決着は目前だった。

登場人物紹介

GASTタイガー班

教授:班長

ティムール

フランキー

チェール

ビトー

カン

ジーナ


アレレスチャ・メンキ……テリムト立川基地の司令官

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。