第12話 天使の襲撃
園山の号令が響き渡り、掃討班は、敵の潜む方角へと一斉に駆け出した。しかし、彼らの決意とは裏腹に、戦場では既に別の局面へと移行していた。
地球の諸君、ごきげんよう。
私の名はレイ・カラウスキ。アステリム帝国陸軍曹長だ。
本来なら、ゆっくり自己紹介でもしてやりたいところだが――残念ながら時間がない。君たちの兵士が、私の部下を撃った。なので、先に一つだけ教えておこう。君たちは、今から天使族と戦う。これは運が悪かったな。
「ブル、デム、ベイルの3人は、陸偵支隊を抱えて離脱しろ。パチェコは3人の援護、私は敵のドローンを落としてから離脱する。」(カラウスキ)
「アボイ少尉に来てもらうのは?」(ブランチェスカ・パチェコ兵士長)
「戦闘を極力避けるよう命じられている。ヘリが来たら、本格的に戦闘になる。自衛隊は続々と湯河原に入った。今戦ったら分が悪い。アボイ少尉に救援を請うなら、戦闘地帯を離れてからだ。」(カラウスキ)
「もっとも、アボイ少尉殿に連絡だけはしておかないとな。」(カラウスキ)
「アボイ少尉殿、レイ・カラウスキです。陸偵支隊の3名が負傷。保護次第、そちらへ連れていきます。病院への搬送をお願いします。」(カラウスキ)
「ああ、はよ連れてこい。」(シモン・アボイ)
「了解しました。」(カラウスキ)
「よし、総員、急いで向かうぞ!」(カラウスキ)
現場に到着すると、自衛隊が陸偵支隊の元へ向かっていた。仲間を救うべく、迅速な動きが求められる。私の実力をお見せしようじゃないか。
「パチェコ、敵ドローンを落とせ! 私は、自衛隊に攻撃する。」(カラウスキ)
「了解です。」(パチェコ)
視認できる限り、ドローンは1機や2機ではない。しかし、パチェコならばやってくれるだろう。彼女も、帝国軍として鍛えられている兵士だ。パチェコがドローンを撃ち落としている間、私は自衛隊に攻撃を仕掛ける。
「こちら二瓶。ドローンが破壊された。おそらく天使族。すぐに代わりのドローンを飛ばすが、それまで上空の警戒を怠るな!」
「了解した。」(廣嶋)
ドローンの破壊音が周囲で響き、廣嶋一曹率いる班員に動揺が広がる。
「さっき、爆発音がしましたね。」(足尾哲也二等陸曹)
「ああ、それだな。この数と装備で天使族と戦うのは得策じゃない。10高に来てもらわんとな…。一度、中隊長へ連絡するか。」(廣嶋)
「廣嶋一曹、天使族を目視できました。5体程いるようです。」(小城聖太二等陸士)
「ああ、俺も確認した。急ぎ中隊長へ連絡する。」(廣嶋)
「中隊長、こちら廣嶋。天使族を確認。10高特の派遣を要請したい。代わりに行ってよろしいか?」(廣嶋)
…
…
「反応がない。戦闘に入ったか?」(廣嶋)
「中隊長からの連絡がないのなら、俺が判断するしかない…。」(廣嶋)
「智川、こちら廣嶋。二瓶のドローンが天使族に撃ち落とされている。援護できないか?」(廣嶋)
「こちら智川、了解。ただちに援護へ向かう。」(智川)
HYUGOOOOOO!
「何だ、今の爆発は?」(足尾)
「中隊長が向かった方角!」(小城)
「小城! 本部へ連絡し、10高の派遣を要請しろ! 他は、中隊長の援護へ向かう!」(廣嶋)
「了解!」
俺は、馬之秋政。俺は今、敵兵を討つべく進軍中だ。敵は3体だが、強大な力を持つグーリエ星人、油断せず、絶対に仕留めてみせる! そう意気込んでみたが、俺たちの状況は、あっさりと一変した。
HYUGOOOOOO!
「RPGだ!伏せろ!」(園山)
次の瞬間、空中で爆発が起きた。一瞬、世界から音が消えた。
DOOOONG!
破片と衝撃波が雨のように降り注ぐ。
「ぎゃあああああああああ」(烏丸、榊原、下葛、田西)
まるで地獄のような悲鳴が聞こえたが、それが誰のものか、考える暇もなかった。被害が甚大なのはその悲鳴の大きさで分かったのだが…。
「中隊長、上空に天使族です。」(馬之秋)
「ぐ…天使族か…。」(園山)
天使族は空を飛べるから、上空への攻撃は小銃では届かない。逆に空から攻撃されると、防ぐのが難しい。さらに目の前の天使族が持っているあの銃。あれで、RPG相当の火力を出したというのか…。こちらの装備では、圧倒的に火力が劣る……。
「曹長! 陸偵支隊3名確保! これより、離脱!」(パチェコ)
「ご苦労! 私も引き上げる!」(カラウスキ)
戦況は最悪だったが、突然、目の前の天使族が引き上げていく。その奥で、負傷した兵を抱えている天使族が3体。あれは、二瓶三曹がドローンで攻撃した3体のはず…。このまま、とどめを刺せず逃してしまうのか…。
「くそ、逃がすか!」(馬之秋)
「よせ!」(園山)
TATATATANG!
弾は空を切った。次の瞬間、上空の天使族と目が合った。天使族は避ける素振りすら見せなかった。ただ、こちらを見下ろしていた。
HYUOOOO!
敵のRPGが一直線に飛んできた。
DOSHUUU!
DOOOOONG!
――しまった。園山中隊長の声が、遠くで聞こえた気がした。それが、俺が最後に聞いた音だった。
敵の放ったRPGが俺に直撃した。視界が真っ白になり、意識が遠のいていく…。上半身が吹き飛んだが、痛みを感じない。これが死か…俺は死ぬのか…これで、俺の人生も終わりか…。
あの時、撃たなければ――中隊長、すみません。
最期の最期に何をやっているんだ、俺は……。ただただ申し訳ない気持ちだ。その、申し訳ない気持ちを抱えたまま、俺は息絶えた。
登場人物紹介
足尾 哲也……1993年6月17日生まれ / 静岡県出身 / 階級は二等陸曹 / 35普連2中隊所属
小城 聖太……2002年1月6日生まれ / 香川県出身 / 階級は二等陸士 / 35普連2中隊所属 / 隼人や杏南とは同期の新人隊員。
廣嶋 史龍……35普連2中隊所属の一等陸曹
二瓶 清宗……35普連情報小隊所属の三等陸曹
智川 義郎……35普連情報小隊所属の三等陸曹
馬之秋 政……35普連2中隊所属の三等陸曹。カラウスキとの戦闘で死亡。享年26歳。
園山 勇将……35普連2中隊の中隊長。カラウスキとの戦闘で負傷。
烏丸 豪……35普連2中隊所属の二等陸曹。
榊原 竜一……35普連2中隊所属の三等陸曹
下葛 ノエル(しもつづら)……35普連2中隊所属の三等陸曹
田西 順太……35普連2中隊所属の陸士長
レイ・カラウスキ……帝国陸軍曹長で、天使族の男性。上空偵察支隊の支隊長として、湯河原に潜入していた。ナルシストない一面を持つが、実力は確か。
カラウスキの部下達
ブランチェスカ・パチェコ……帝国陸軍兵士長で、天使族の女性。
ブル・ティテズ……帝国陸軍一等兵で、天使族の男性。
マドリーヌ・デム……帝国陸軍一等兵で、天使族の女性。
ジャッパー・ベイル……帝国陸軍二等兵で、天使族の男性。
シモン・アボイ……帝国陸軍少尉で、ドワーフ族の男性。ルマパやメッテ等、斥候部隊の移送や、物資の輸送を担当している。ヘリの機長で、輸送部隊の隊長。
グーリエ星に存在する種族
ドワーフ……ファンタジーものでお馴染みの、大きな頭と髭、ずんぐりした体格が特徴の種族。成人は男女ともに髭を生やしている。平均身長は、167cm。確認されている最長身のドワーフは、173cm。種族の特性として、物造りが得意な者が多い。身体は頑丈だが、スピードに欠ける。上位種に「エルダードワーフ」がいる。




