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外星戦記  作者: 無名の凡夫


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第124話 鋼鉄の足枷

一斉攻撃(アルファ)だ! 突き進め!」(橋本)


橋本中隊長の号令とともに、僕たちは兵站拠点の通路を駆け抜けた。


ヤオさんの読み通り、不意を突かれた敵の初動は鈍い。通路の角から現れた数体の敵兵を、杏南と諏訪陸士長が左右に分かれて正確な射撃で無力化していく。レンジャー訓練で培った、言葉を介さない連携。今の僕と彼女の間には、確実に「戦士」として大きな「差」があった。


「(杏南も諏訪陸士長も凄い。でも、今は2人に嫉妬している場合じゃない。僕は、僕の出来ることをする。)」(隼人)


拠点内部は広大で、積み上げられたコンテナや資材が入り組んだ迷路のようになっている。僕たちはヤオさんの背中を追い、迷うことなくその深部へと食い込んで行った。


「前方、自動機銃(セントリーガン)2基! 伏せろ!」(ヤオ)


ヤオさんの叫びと同時に、通路の天井から無機質な銃口がせり出し火を噴いた。火花が散り、コンクリートの破片が頬を掠める。


「諏訪さん、右をお願い!」(杏南)


「了解だ……排除する」(諏訪)


諏訪陸士長が低姿勢のまま滑り込み、一瞬の隙を突いて特殊なジャミング弾を撃ち込む。機能を停止した機銃の脇を、僕たちは一気になだれ込んだ。


「…。」(高村)


杏南と諏訪の一糸乱れぬ連携を見て、高村は絶句した。


「(また、練度が上がっている。こいつら、どこまで強くなるんだ……)」(高村)


レンジャー試験を無事パスした高村だったが、教官からの厳しい総評が頭から離れなかった。実際、彼らの力を目の当たりにして、自分の実力不足を痛感していた。原隊復帰後も、それに悩む日々だった。


「通信管制室はこの奥だ。」(ヤオ)


ヤオさんの案内でついに、拠点の心臓部である通信管制室の扉見えてきた。ここを叩けば、立川方面の敵防衛網は耳と目を失うはず。


通信監理室の前には、大広間があった。そこでは、僕らがこれまで見てきた「廃墟」も「絶望」もなかった。明るいLED照明に照らされ、床は塵一つなく磨かれていた。パレットに積まれた物資は、自衛隊の補給処よりも整然と管理されている。そして何より僕を戦慄させたのは、壁に貼られた何枚もの図面やポスターだった。


「(全て…日本語で書かれている?)」(隼人)


「アステリム帝国 技術交流・合同研修会のお知らせ」

「参加者:選抜日本人技術者」

「実習内容:対人戦闘用重装甲兵・アイゼン運用補助」


僕の目についたポスターには、こう書かれていた。


「(アステリム帝国ってのは、グーリエ星人の事か? 合同研修会? ここに残された人達も参加するのか? これは強制か? いや、強制なら研修会なんて言わない…。どういうことだ?)」(隼人)


「おい、段場、何ぼさっとしている?」(豆小玉)


豆小玉三曹に呼ばれて僕は、その場から離れた。


「まずはここを破壊する。」(ヤオ)


「爆薬セット。3、2、1……」(バルカン)


轟音とともに敵の物資や通信監理室の重厚な扉が破壊され、僕たちは爆煙とともに内部へ突入…は出来なかった。


「引け! 何かが来る!」(トロ―ジャン)


特戦群の3人は、小銃を構えたまま、周囲の計器類ではなく、さらにその奥にある「搬入用エレベーター」の隔壁を睨んでいる。その時、 拠点の全域にそれまでの警報と共に、腹の底に響くような低い重低音が鳴り響いた。



――ズウゥゥゥン……。


隔壁の向こう側から、巨大な「何か」が近づいてくる圧迫感が伝わってくる。


「ヤオさん、何が来るんですか!?」(隼人)


「……兵站拠点の警備に、こんなものを置いていたのか。プレヤディッチの奴、よほどここを奪われたくなかったらしいな」(ヤオ)


ゆっくりと開いた隔壁の向こうから現れたのは、通常の帝国兵とは比較にならない巨躯。全身を鈍色(にびいろ)の重装甲で包み、右腕には巨大な熱線砲、左腕にはチェーンソーのような近接兵器を備えた、”対人戦闘用重装甲兵「アイゼン」”と言われるロボットだった。


「戦闘用のロボットまでいるなんて…。」(日下部)


「(デカい……。あんなの、89式じゃ抜けないぞ!)」(隼人)


「35普連、下がってろ! こいつは普通に戦っても勝てん!」(ヤオ)


ヤオさんが叫ぶが、アイゼンの右腕が赤く輝き、狙いをこちらへ定める。僕たちの潜入作戦、最初の「壁」が、圧倒的な暴力となって立ち塞がった。アイゼンの右腕から放たれた赤白い閃光が、僕たちがさっきまでいた通路を薙ぎ払った。


「うわあっ!」(日下部)


爆風と熱波で、日下部が吹き飛ばされる。


「日下部! 伏せてろ!」(隼人)


僕は叫びながら、コンテナの陰に身を隠した。アイゼンは重厚な足音を立てて前進してくる。その巨体からは想像もつかないほど、動きに迷いがない。


「35普連は周囲の帝国兵を抑えろ! アイゼンは俺たちがやる!」(ヤオ)


ヤオさんの合図で、トロージャンとバルカンが左右に展開した。特戦群の動きは、まるでアイゼンの死角を縫うかのようだ。


「侵入者を殲滅しろ!」(ハインツ)


「くそ、援軍が来た!」(豆小玉)


「高村、善最! 左右の資材庫から湧いてくる歩兵を仕留めろ! 苫米地と諏訪は遊撃に出ろ!」(橋本)


「了解!」


高村二曹たちは、重装甲兵の出現に動揺しながらも、必死に周囲の歩兵を食い止める。だが、アイゼンの装甲は絶望的だった。僕たちの89式小銃が放つ5.56mm弾は、奴の表面で火花を散らすだけで、傷一つ付けられない。


「硬すぎる……。これじゃ、豆鉄砲だ!」(小城)


「バルカン、HEDP(徹甲擲弾)をぶち込め!」(ヤオ)


ヤオさんの指示で、バルカンさんが隠し持っていた携帯式ロケットランチャーを放つ。轟音とともにアイゼンの胸部が爆発し、黒煙が上がる。


「やったか!?」(世田)


煙が晴れる。しかし、そこに立っていたのは、装甲がわずかに焼け爛れただけの、無傷に近いアイゼンだった。


「……ターゲット、健在。再装填(リロード)を急げ!」(バルカン)


アイゼンの左腕のチェーンソーが、凄まじい回転音を上げ始めた。奴は近くにあった鉄製コンテナを、まるで紙細工のように切り裂き、僕たちが潜んでいる遮蔽物を破壊していく。


「隼人、あいつの足元を狙って! センサーが生きてる!」(杏南)


杏南が叫びながら、正確な狙撃でアイゼンの膝関節にある光学センサーを撃ち抜いた。火花が飛び、アイゼンの動きが一瞬止まる。


「今だ!」 (隼人)


僕は杏南の援護に合わせて、残弾の全てを足首の駆動系に叩き込んだ。だが、奴の自己修復機能なのか、あるいは予備のセンサーが即座に起動したのか、アイゼンは再び右腕の熱線砲をこちらへ向けた。


「(マズい、間に合わない……!)」(隼人)


閃光が走る直前、ヤオさんがアイゼンの頭部に特殊な粘着榴弾を貼り付けた。


「伏せろおおお!」(ヤオ)


凄まじい衝撃波が広間を包み、通信管制室の計器が火を噴いて爆発する。


「……はぁ、はぁ……」(隼人)


立ち込める白煙。アイゼンは膝をつき、機能を停止したように見えた。 しかし、この戦闘で僕たちはあまりにも多くの時間を費やしてしまった。


「ヤオさん、通信機器の破壊、完了しました……けど……」(真堂)


「ああ、わかっている。……招かれざる客を呼んでしまったようだな」(ヤオ)


「あのアイゼン(鉄の塊)に足止めされちまった…クソっ」(バルカン)


拠点の奥、搬入口の警報が再び鳴り響く。 アイゼンという「壁」に手こずっている間に、敵の本隊――多摩川対岸の防衛訓練区にいた援軍が、既にこの拠点を包囲し始めていた。僕たちは、通信を断つことには成功したが、自分たちの退路もまた、失いつつあった。


登場人物紹介

真堂しんどう 卓郎たくろう

生年月日:1998年12月3日 / 出身:東京都

階級:三等陸曹 / 所属:35普連1中隊


段場だんば 隼人はやと……本編の主人公。後輩が出来たことで、少し逞しくなっている。

苫米地とまべち 杏南あんな……本編のヒロイン。高い戦闘能力をもつ

橋本はしもと 紋次もんじ……35普連1中隊の中隊長

ヤオ……特戦群の1人

諏訪すわ 明登めいと……35普連2中隊所属。高い戦闘能力をもつ。

高村たかむら 伸作しんさく……35普連1中隊の悩めるレンジャー隊員

豆小玉まめこだま 芙琉ぶりゅう……隼人直属の上官

バルカン……特戦群の1人

トロ―ジャン……特戦群の1人

日下部くさかべ いつき……隼人と同じ児童養護施設で育った新人

世田せた 直也なおや……35普連1中隊所属

エスリー・ハインツ……大月でも戦ったヒト族。現在は補給線の防衛を託された


対人戦闘用重装甲兵「アイゼン」……所謂戦闘型ロボット。まだ量産体制に入っていないので、補給拠点や整備工場等、限られた場所でしか稼働しない。

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