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外星戦記  作者: 無名の凡夫


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第123話 噛み合わぬ部隊

――立川広域防災基地 某所――


「敵が動揺している今、一気に叩け!」(空間)


「援軍が来る前に落とすぞ!」(和戸)


「我々は建物内に侵入する。通信機器の破壊、敵司令を討つ!」(ビービ)


「了解!」(一同)




私は、角南朱杏。コードネームは「キーラ」。レンジャー試験をパスした私は今、「Gourie Alien Special Tactics Unit」、通称GASTの一員となった。GASTは、対グーリエ星人のエキスパート集団の事。


私が配属された「アマゾネス班」は、奇しくもオペレーション・ギデオン(第7次首都圏奪還作戦)で、私を助けてくれた班だ。そして、私が行っている任務は、かつて所属していた35普連と合同。なんて偶然なんだろうか。


しかし35普連はオペレーション・ギデオン以降、関係性がギクシャクしている。原因が一つではなく、複数の火種が燻り、そして爆発していった。私はそう視ているのだが、その一つが、4中隊の運天要一等陸士。彼は、英雄になりたいと常に語っており、前線で戦うことにプライオリティーを感じている。


後方支援には文句を言い、戦う事を恐れる隊員を見下す。オペレーション・ギデオンでも、自分勝手な行動をして仲間を死なせている。本人にその自覚はないが、彼の不用意な発砲が、房拭二曹、由馬三曹、田島二士の死、そして羽毛一士の重傷を招いた。(羽毛一士は後に死亡している)


縁の下の力持ちだった厚巳三曹も、運天の不遜な態度がきっかけで退官している。そんな彼の不用意な発言で、3中隊と揉めた。空間連隊長が仲裁に入るものの、連隊長の言葉は何も響いておらず、関係性は悪いまま。彼を連れてきて大丈夫なのだろうか…。




俺は運天要だ。今回の首都圏奪還作戦、オペレーション・ミネルヴァ(第8次首都圏奪還作戦)では、俺も前線で戦える事になった。まあ、囮部隊の方で、主力部隊ではないのは不服だが、敵を大勢倒せば、俺の功績を嫌でも認めるだろう。オペレーション・ギデオンでは後れを取ったが、この戦いで一都三県を奪還し、英雄になる!


「要さん、私達の班はこちらですよ!」(東野)


「ちっ…。」(要)


不満なのは、俺が配属された班長がこの東野千花(あずまの せんか)二曹ってことだ。自衛官とは思えぬ、おっとりした雰囲気に、お嬢様口調――実際に東野グループという大手企業の元社長令嬢という肩書きで、完全に場違いとしか思えないスペックの持ち主だ。こんな奴が前線にいて、大丈夫なのだろうかと、不安で仕方がない。


「千花さん、あいつ、何か生意気ですよね…。」(神梨(かみなし)アンジェリカ陸士長)


「そんなこと言ってはいけません。同じ仲間同士、団結しなければ勝てる戦も勝てなくなります。」(千花)


「千花さんは優しすぎますよ、あいつは問題児じゃないですか、もっとビシっと言ってやらないと!」(青山奈都(あおやま なつ)陸士長)


「千花の腰巾着め…。」(要)


女というのは、徒党を組んで気に入らない奴を貶めようとするから厄介だ。せっかく口煩かった角南が異動でいなくなったのに…。あいつ等の陰湿な言動に惑わされず、この任務を遂行したいものだ。しかし、あの班長、求心力だけはあるみたいだ。同じ班の連中は、あいつに言いくるめられている。


「千花さん、前方に敵!」(奈都)


奈都の報告と共に、旧庁舎の曲がり角から敵兵が3体現れた。


「アンジェ、左翼から! 奈都、右翼! 要さん、中央の建物で足止めを!」(千花)


東野班は迅速に配置につく。千花は、敵の動きに合わせて三方向からの集中射撃を指示した。この状況なら、連携で確実に仕留められる。しかし、要は千花の指示を無視した。


「――今だろ、こういう時に前に出るのが“英雄”だろうが!」(要)


要は指示された中央の建物に張り付くどころか、無防備な通路に飛び出し、サブマシンガンを乱射しながら突撃した。彼の目的は、敵を数で上回り、功績を独り占めすることだった。


「きゃっ! 運天、下がれ!」(奈都)


「千花さんに従え!隊列を崩すな!」(アンジェリカ)


要の突発的な行動により、アンジェと奈都の射線が遮られてしまう。その一瞬の隙を突き、中央の帝国兵が反撃に出た。


――タタタッ!


「ぐわあっ」(要)


弾丸が右肩を抉り、鈍い衝撃が全身を貫いた。彼は派手な被弾アクションで地面に転がる。


「くそっ、運が悪ぃ!」(要)


そして、最悪の事態が起こる。要が突撃した通路の奥から、増援の足音が聞こえたのだ。彼の無茶な発砲音が、近くに待機していた敵部隊を呼び込んでしまった。


「増援です! 4体以上、こちらに向かってきます!」(アンジェ)


「(予想通り…。彼は常に味方を危険に晒す。)」(キーラ)


「(…あの敵は、あそこに潜んでいたのかも…増援が早い。)」(キーラ)


「班長、すみません!」(キーラ)


「仕方ない、あなたは残って35普連のサポートを!」(ビービ)


キーラは冷静に状況を分析し、行動に移る。


「千花さん! 私が前方の敵を制圧します! アンジェと奈津は、倒れた運天を援護しつつ、増援に備えて!」(キーラ)


「ありがとうございます! 奈都、要さんを壁に! アンジェは後方に注意を!」(千花)


千花は瞬時に指示を修正し、冷静にハンドガンを構えた。彼女は要の失態への不満を一切見せず、ただ目の前の危機を乗り越えることだけに集中している。


キーラは、帝国兵の動きを読み、正確な二点射で敵3体を瞬時に無力化した。その間に奈都が要を安全な壁際に引きずり込む。


「まったく、大迷惑だ!」(奈都)


「うるせぇ! 早く援護しろ!」(要)


増援の帝国兵4体が角を曲がって現れる。しかし、彼らが視たのは、すでに制圧された3体の仲間と、万全の態勢で待ち構える東野班の姿だった。


――タタタタン!


東野班とキーラの集中射撃が火を吹き、増援部隊も瞬く間に崩壊した。


「……全滅を確認しました。」(矢作流(やざく ながれ)三等陸曹)


「しかし、久方が……」(矢作)


「…っ。そんな、真さんが…」(千花)


辺りに静寂が戻る。東野班の連携と、キーラの正確な射撃により、危うく危機を乗り切った。しかし、この一連の動きの中、久方真(ひさかた まこと)陸士長が戦死。班員たちの心に深い溝を残した。


「要さん、先ほどは隊列を乱さないよう、注意いたしましたよね? ご自分の身だけでなく、他の隊員の命も危険に晒す行為です。現に、真さんは命を落としました!」(千花)


千花は、おっとりとした口調ながらも、明確に要を非難した。


「なんだと!? 俺はあの時、お前たちがちんたらしてたから、チャンスを逃がすまいと動いたんだ! 結局、俺のおかげで敵の増援も誘い出せたじゃないか!」(要)


「何を言ってるんだ! お前が無茶をしたせいで、久方は……」(猪狩翔夢炉(いかり とむろ)三等陸曹)


「(彼には何を言っても通じないのでしょうか…)」(千花)


「翔夢炉さん、もうよしましょう。」(千花)


千花は猪狩を制し、深いため息をつく。


「ともかく、今は作戦を優先します。 私達は外の敵を討ちましょう。」(千花)


「ちっ…」(要)


要は舌打ちをしたものの、それ以上反論しなかった。東野班は重い空気の中、哨戒を続ける。


「(彼は、自分が運が良かっただけだと理解していない。功績を焦り、隊列を乱し、結果として、また死者を出した。いつか、この独善的な行動は、取り返しのつかない結果を招く。)」(キーラ)


キーラは要の背中を見つめながら、今後の作戦の危うさを感じていた。


「(きっと……また同じことが起きる)」(キーラ)


※登場人物紹介

東野あずまの 千花せんか

生年月日:1994年2月11日 / 出身:東京都

階級:二等陸曹 / 所属:35普連3中隊

備考:大手企業である「東野グループ」の”元”社長令嬢。両親がグーリエ星人に殺害され、それを機に大学を中退し、自衛官を志す。普段はおっとりしているが、スイッチが入ると早口になる。自衛館としては優秀で人望もある。


青山あおやま 奈都なつ

生年月日:2000年11月20日 / 出身:静岡県

階級:陸士長 / 所属:35普連3中隊

備考:千花を尊敬している


神梨 アンジェリカ(かみなし)

生年月日:2000年6月27日 / 出身:静岡県

階級:陸士長 / 所属:35普連3中隊

備考:奈都とは幼馴染み


矢作やざく ながれ

生年月日:1997年6月23日 / 出身:愛知県

階級:三等陸曹 / 所属:35普連3中隊

備考:千花の班に配属される。


猪狩いかり 翔夢炉とむろ

生年月日:1995年11月20日 / 出身:三重県

階級:三等陸曹 / 所属:35普連4中隊

備考:千花の班に配属される。今年度から4中隊に異動で加わった


久方ひさかた まこと

生年月日:2001年3月11日 / 出身:長野県

階級:陸士長 / 所属:35普連3中隊

享年:20歳


角南すなみ 朱杏しゅあん……GASTアマゾネス班所属でコードネームは「キーラ」

空間そらま 瑠衣るい……35普連の連隊長

和戸わこ 一暁かずあき……35普連4中隊の中隊長


※35普連4中隊と5中隊は、部隊が再編されましたが、それでも人数が少ないので、3中隊と合同で班を組んでいる設定です。

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