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外星戦記  作者: 無名の凡夫


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第122話 陽動作戦

―陸上自衛隊 富士学校―


「陸将、何故35普連を指名したのですか?」(森間護平陸将補:第一空挺団団長)


「精鋭部隊を囮に使うと決めた時、同じく、精鋭がいる部隊が必要だ。そこで35普連の2中隊が浮かんだ。あそこにいる諏訪明登陸士長、苫米地杏南一等陸士の実力は確かだ。他、レンジャー資格を持つ善最二曹、豆小玉三曹、飯田三曹と実力者が控えている。これほどうってつけの隊はない。」(有朋繁陸将:オペレーション・ミネルヴァ最高司令)


「それは納得ですが、35普連は今、連携が最悪です。」(後谷真輔(うしろだに しんすけ)一等陸佐:第10通信大隊大隊長)


「うむ、それが懸念だが…。しかし、諏訪陸士長や、苫米地一等陸士の力が必要だ。部隊を選別する時間もなかった以上、こうするのがベターな選択だったと思っている……最善ではないがな。」(有朋)


「はぁ。(本当に大丈夫だろうか…。2中隊は作戦の遂行を危うくするほどの亀裂が入っていると聞く。この重要作戦で、私情が持ち込まれなければいいが…。)」(後谷)




――秘匿輸送路――


「35普連の1中隊と2中隊だな。」(ヤオ)


「(あの人は……。石橋で会った特戦群の……)」(杏南)


「俺は”ヤオ”と名乗っている。皆もそう呼んで欲しい。」(ヤオ)


「俺は”トロ―ジャン”だ。本名じゃないが、気にしないでくれ。」(トロ―ジャン)


「”バルカン”だ。よろしく。」(バルカン)


「俺達が案内する。この先には、敵の兵站拠点がある。まずは、そこに奇襲を仕掛ける。」(ヤオ)


「了解。よろしく頼む。」(橋本)


「こちら”ヤオ”、フクロウが訪れた。繰り返す、フクロウが訪れた。これより、作戦を開始する。」(ヤオ)


「了解。健闘を祈る。」(モンソン)


僕らは、潜入していた特戦群誘導の下、敵の兵站拠点へ進んでいく。トロ―ジャンと名乗る、特戦群の隊員より渡されたタブレットには、僕らの現在地と敵の拠点までの地図が表示されている。僕らの無線はジャミングされていたが、今ははっきりと聞こえる。GASTの電子戦隊が暗躍しているそうだ。



「あれが敵の兵站拠点の1つだ。正面の警備は厳重だ。裏口から攻める。」(ヤオ)


「それは読まれないか?」(善最)


善最二曹の疑問は最もだ。敵も裏口の警備が手薄だと分かっているからこそ、罠を仕掛けている可能性が高い。ヤオは装甲車の揺れに身を任せながら、落ち着いた声で返した。


「当然だ。だが、敵は裏口に警備兵を2人、監視カメラを1台配置している、という”予想”しか立てていない。正面は文字通り、一歩でも近づけば死ぬ鉄壁の罠だ。裏口は罠ではなく、最小限の防衛だ。」(ヤオ)


「最小限の防衛……」(隼人)


「俺達特戦群がここで10ヶ月も潜伏して情報を得たんだ。それを GASTの電子戦隊が通信ジャミングを解除した今、敵の”予想”の更に裏をかく、確実な突破ルートが導き出されている。お前たちが頼るのは経験からくる勘ではなく、最新の知恵だ。俺たちを信じろ――今はそれしかない。」(ヤオ)


ヤオの眼光は鋭く、その言葉には絶対の自信が込められていた。善最二曹は一瞬ためらうが、無言で頷いた。


「まもなく目的地だ。全員、戦闘配置。」(橋本)


数時間にも及んだ地下の輸送路から、装甲車がゆっくりと地上へと浮上する。外は漆黒の夜。装甲車のハッチが開くと、多摩川沿いの、深い草むらに囲まれた隠蔽ポイントだった。車両のモーター音が止まると、すぐに聞こえてきたのは、微かに遠い多摩川の水の音と、対岸から響く異質な轟音だった。


「(あれが……)」(隼人)


タブレットが示した方向、多摩川を挟んだ対岸の市街地に、巨大な倉庫群のような施設が、無数のサーチライトに照らされていた。その周辺は異様に静かで、まるで時間が止まっているかのようだ。


「あれが敵の兵站拠点だ。そして、その背後一帯が、我々の突破目標であるグーリエ星人の防衛訓練区となる」(ヤオ)


「見張りは、俺達が始末する。皆はここで待機しててくれ。」(ヤオ)


ヤオさんは、そう言うと、特殊な音響防御服に身を包んだトロ―ジャンさんやバルカンさんと共に闇に隠れた。静寂が支配する。数分後、微かな金属音が一度だけ響き、すぐに消えた。そして、しばらくすると、裏口のドア近くで警戒していた見張りのグーリエ星人2体が、音もたてず倒れていた。


「成功。35普連、ついて来い。これより、敵兵站拠点に潜入する。」(ヤオ)


ヤオさんの指示により、僕らは敵兵站拠点の中へ潜入した。中に入った瞬間、内部のグーリエ星人たちがこちらを振り向いた。サイレンは鳴っていないが、彼らの甲高い警戒音がフロア全体に響き渡る。


「侵入者だ!」


「敵に気付かれた!」(高村)


「想定内だ!」(ヤオ)


ヤオさんは動じなかった。それどころか、彼の表情はわずかに笑っているように見えた。


「ここは兵站拠点であり、補給物資が最優先だ。我々の目的は、敵の通信網を破壊すること。侵入が知られた時点で、敵は補給の防衛か、通信の確保か、優先順位を迷う。その一瞬の迷いが、我々の時間だ。橋本中隊長、一斉攻撃(アルファ)で突破する!」(ヤオ)




一方、その頃…。


――山梨県北都留郡 小菅村――


「48普連、34普連、35普連、配置に着いたか?」(有朋)


「こちら34普連、所定の配置についた。」(長岡徳人(ながおか のりと)一等陸佐:34普連隊長)


「こちら35普連、問題ない。いつでも行ける。」(空間瑠衣:35普連隊長)


「48普連、うちの隊は、あばれたくてウズウズしてる!」(西泉一平(にしいずみ いっぺい)一等陸佐:48普連隊長)


「士気が高いのは良い事だ。しくじらないよう頼むぞ。」(別当)


「任せとけ!」(西泉)


「では、砲撃を開始する。ターゲットは、立川駐屯地及び立川広域防災基地全域…」(恩嶋景利(いつくしま かげとし)一等陸佐:第2高射特科群 群長)


「3……2……1……」


「撃て!」(恩嶋)


ひゅ~~~~


ズドォン!


ズドドドドォン


ドドドドオン!




――立川駐屯地(現テリムト立川基地)――


「大佐殿、敵より砲撃です! 着弾数は推定の3倍!」(アイトンダ)


「そんなもの分かっているわ! この火力は一体どういうことだ!?」(アレレスチャ・メンキ陸軍大佐)


「くっ…予想より早いではないか! 西側からの主力攻勢をここまで無視していたというのか!?」(メンキ)


「対空砲を用意しろ! 全弾は無理でも、可能な限り迎撃する!」(コーリー・エスギュ陸軍中尉)


「敵襲! 複数の建物が崩落!」


「もう、ここまで来たというのか!? 迎撃態勢に入れ!」(メンキ)


「歩兵科で迎え撃て! 予備戦力を全て西側方面へ集中させろ!」(メンキ)




――立川広域防災基地内(名称そのまま)――


「ここは、西東京防災の要だ! 何としても死守するぞ! 全火力を西の山側に向かわせろ!」(タイタン・アインツ陸軍中佐)


「アインツ中佐殿! 火薬庫から引火! 弾薬がほぼ使い物になりません!」(タタ・エルム陸軍軍曹)


「く…援軍の要請はしてるな?」(アインツ)


「はっ! 急ぎ送ると返信がきていました!」(アル・ミルカー)


「援軍が来るまで何としても耐えるぞ!」(アインツ)


「エレクトラオ! 貴様は、小隊を率いて敵の砲撃部隊を潰せ!」(アインツ)


「中佐殿! 敵が迫っている今、隊を分けるのは得策ではありません!」(アル・ミルカー)


「それでもやらねばならん! 敵の砲弾を止めないと意味がない! 」(アインツ)


「了解しました! 必ず、敵の砲撃部隊を仕留めてきます!」(エレクトラオ)




「敵襲! ぐわっ!」


「そんな…もう敵がそこに……」


「びびるな! 敵が来たら戦うだけだ!」


「ぐわっ!」


「兵士長! うわああああ」


「(ここの敵は油断しすぎね。こんな簡単に入り込めるなんて、まるで“待ち伏せの準備“でもしているみたい。)」(ビービ)


「班長、罠では? あまりにも簡単に潜入できるのは、不自然です…。」(ティト)


「(油断してるようにしか見えなかったけど…。そうね、私達が油断したら意味がない。警戒を最大限に高めて。)」(ビービ)


「うん、気を引き締めていこう。」(ビービ)


「班長、こちらに敵が向かっています。1個分隊規模かと。」(イリー)


「OK、無闇な戦闘は避けて、通信指令室へ急ぎましょう。」(ビービ)


「了解!」(一同)


「(不自然なのは、街並みが綺麗なことよ。それに、グーリエ星人が人間と共存しているようにも見える…。ここは、本当に軍事基地なの?)」(ビービ)




――小菅村(作戦本部)――


「陸将、各普連隊の潜入部隊が、ターゲットの敷地内に潜入成功した模様! 指令室への到達を確認!」(別当)


「よし! このまま、敵指揮系統に混乱を与え続けろ!」(有朋)


登場人物紹介

後谷うしろだに 真輔しんすけ

生年月日:1973年4月3日 / 出身:愛知県

階級:一等陸佐 / 役職:第10通信大隊大隊長


トロ―ジャン……特戦群の隊員。ヤオと共に、オペレーション・ギデオン(第7次首都圏奪還作戦)時に、テリムト内へ潜入していた。


バルカン……特戦群の隊員。ヤオと共に、オペレーション・ギデオン時にテリムト内へ潜入していた。


長岡ながおか 徳人のりと

生年月日:1972年8月21日 / 出身:長崎県

階級:一等陸佐 / 役職:34普連連隊長

備考:賀井双一郎前連隊長の殉職を受け、就任した。


西泉にしいずみ 一平いっぺい

生年月日:1978年3月16日 / 出身:鹿児島県

階級:一等陸佐 / 役職:48普連連隊長

備考:31普連連隊長、別当強司とは同期


恩嶋いつくしま 景利かげとし

生年月日:1968年12月9日 / 出身:神奈川県

階級:一等陸佐 / 役職:第2高射特科群 群長


ビービ:GAST「アマゾネス班」班長


ティト:GAST「アマゾネス班」所属


イリー:GAST「アマゾネス班」所属


アレレスチャ・メンキ

種族・階級:天使族の女性

所属・階級:陸軍大佐、テリムト立川基地の司令


コーリー・エスギュ

種族・性別:犬型獣人族の男性

所属・階級:陸軍中尉、テリムト立川基地に駐在している砲兵科の尉官


タイタン・アインツ

種族・性別:ドワーフ族の男性

所属・階級:陸軍中佐、立川基地の次席指揮官

備考:立川基地の次席指揮官はアイトンダだったけど、アインツと交代になった


タタ・エルム

種族・性別:エルダードワーフの男性

所属・階級:陸軍軍曹、立川広域防災基地で弾薬庫の管理をしていた


段場だんば 隼人はやと……本編の主人公

苫米地とまべち 杏南あんな……隼人の同期で恋人

有朋ありとも しげる……オペレーション・ミネルヴァ(第8次首都圏奪還作戦)の最高司令

森間もりま 護平ごへい……第一空挺団の団長

ヤオ……特戦群の隊員。テリムト内に潜入していた

モンソン……GASTの電子戦隊

橋本はしもと 紋次もんじ……35普連1中隊の中隊長

善最よしも 大河たいが……35普連2中隊所属

高村たかむら 伸作しんさく……35普連1中隊所属

空間そらま 瑠衣るい……35普連の連隊長

別当べっとう 強司つよし……31普連の連隊長

シス・アル・ミルカー……狐型獣人族の陸軍少佐

ペーリ・アイトンダ……鬼人族の陸軍中佐

ユーミン・エレクトラオ……ダークエルフの陸軍少尉

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