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外星戦記  作者: 無名の凡夫
第1章 初陣~オペレーション・ギデオン~

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第11話 吐き出す現実

運天 要だ。俺は今、熱海市にいる。俺の所属する35普連4中隊の任務は、住民の避難誘導なので、後続部隊として湯河原へ向かっている。


途中、2中隊に小規模戦闘があったと報告があった。その後に、後続部隊も兵站拠点へ進むよう命令が下ったので、安全は確保されたのだろう。現在時刻は、17:20。もう夕方だ。


「はあ、やっとか。」


抑えきれない苛立ちが、思わず口から漏れた。 同期の隼人や苫米地が前線で戦っているというのに、俺は後方でひたすら待機するだけ。俺が夢見たのは、TVで見た、戦地で窮地を救ってきた、あの英雄たちだ。焦りと嫉妬が、ドロドロとした泥水のように心を濁らせていく。割り切ったつもりでいたが、不満というか、モヤモヤが収まらない。移動中も、同じ隊の同期に愚痴ってしまう。


「うるさい!」


「何だと!? あ、すみません。」


上官相手に反抗的な態度を取ってしまい、思わず謝ったが、イライラが収まったわけではなかった。


「自衛官なら、与えられた任務を全うするだけ。それに、任務の内容に上下はない。どれも大事な任務だから。それとも、あなたは任務の重要性を理解していないの?」


「……。」


そう俺を諭すのは、角南(すなみ) 朱杏(しゅあん)陸士長。2期先輩にあたる。角南陸士長の言う事が理解できないわけではないんだが…。それでも、前線で戦い、俺は皆の英雄になりたい、その気持ちが抑えられない。


「お言葉ですが先輩、前線で戦うよう命令された連中には、びびってる奴もいました。でも、俺はびびってない! なら、そういう奴に代わって俺が前線に立ってもいいじゃないですか?」


「今から私達が行くのは戦場よ。私達の任務は、避難誘導だけど、敵と遭遇したら戦うことになる。そのために所持か許可されている。」


角南陸士長は、そう言って俺の小銃を指す。


彼女の言葉はまるで、ひび割れたレコードのように聞こえた。何を言っているのかは理解できるが、心には何も響いてこない。


「あなたは戦地へ行くのは、これが初めてなんでしょう? 戦場の恐ろしさを知らない。ここで命を落としたら、誰かの英雄になる前に、ただの番号札になるだけよ。最初に派遣された時は、生きて戻ってくるだけで十分よ。」


「先輩は、まだ陸士長なのに戦闘経験が豊富なんですね。言葉に重みを感じます。まるで、何でも知っているようだ。」


「……。(戦場は、英雄なんて作らない。それが分からないのね)」


俺はそう言ってやった。どうせ、この先輩も臆病者で、戦場がどれ程のものか知らないのだろう。俺は、そう思っていた。


俺達が移動中、また2中隊が小規模戦闘に入ったと無線で連絡がきた。俺も、援軍として駆けつけたい気分だ。




ー17:45 後続部隊、兵站拠点へー


拠点となっている湯河原駅裏では、慌ただしく動いていた。グーリエ星人を捕縛したことや、死傷者が出たことを知る。


湯河原駅裏では、簡易テントが並び、臨時の指揮所が作られていた。その奥で、怒鳴り声が聞こえる。


「もう一度聞く。部隊規模は?」


縛られたグーリエ星人が、血を吐きながら笑った。グーリエ星人は河童のような姿をしていた。


「……知らんな。天使様が気まぐれで遊びに来ただけだ。」


「遊びだと?」


尋問していた賀井一佐の拳が机を叩いた。


「貴様らの“遊び”で、こっちは2人死んだ!」


グーリエ星人は笑ったままだった。


「それが戦争だろう、下等生物よ。」


「部隊規模は?」


「知らんな。」


「指揮官は?」


「知らんな。」


「目的は?」


「知らんな。」


俺はテントの外から、それを見ていた。捕虜は笑っていた。賀井一佐は怒鳴っていた。どっちの顔も、テレビでは見たことがない。


急遽、35普連の衛生小隊が死傷者の回収と現場処理をすべく、現場へ向かう事となった。また、周囲の安全確保のため、衛生小隊には4中隊が警戒部隊として同行した。


死傷者が出た。俺は、死者が出たことに動揺していた。死んだのは誰だ? 同期の誰かじゃないのか? 木山か? 隼人か? まさか苫米地が!?


現場は、壮絶な状況となっていた。一刻を争う状況だ。その壮絶な光景を前に、俺は固唾を飲んだ。空気は、熱い血だまりと、硝煙、そして鉄が焼けるような異様な匂いで満ちていた。どこかで、誰かがずっと呻いている。地面に散らばる瓦礫と赤黒い染み。俺がここまで見てきた訓練映像とは、何もかもが違っていた。


死者2名、重傷者4名。損傷が激しく、一見して誰か分からない遺体は、認識票で馬之秋三曹だと分かった。田西陸士長は、胴体はくっついていたが、顔が潰れていて、とても遺族に見せられるものではない。


生存者も、戦線への復帰どころか、日常生活にも支障をきたす重傷だ。烏丸二曹は両目を失明し、榊原三曹は、内臓の損傷が激しく一刻を争う。下葛三曹は、手足に欠損がある。3人とも意識不明だ。園山三佐は意識こそあるも、出血量が多い。


死んだのが同期じゃなかったことに、安堵の息が漏れた。その瞬間、自分の顔を殴りたくなった。誰かの死を喜ぶのか、俺は…。だが、その直後、強い吐き気と、胃が締め付けられるような、言い知れぬ感情が込み上げてきた。


誰かの命が失われたことに変わりはない。そして、その死が、戦場という現実を否応なく突きつけてくる。俺は絶対にそうならない。そう心に刻む。


重傷者の搬送、遺体の回収、現場の消毒を終えると、時間は19:00を過ぎていた。辺りはすっかり闇に包まれ、冷たい潮風が吹き付ける。疲労困憊の俺は、仲間たちが集まる仮設テントへと足を引きずった。そこで、同期のアイツを見つける。


「隼人!」


声に出すと奴は振り返った。顔は埃で汚れ、憔悴しているが、確かに隼人だ。無事だったことに安堵しつつも、目の前の現実が重くのしかかる。


「お前ら、一体何があったんだ?」


隼人はすぐには答えなかった。しばらくして、ぽつりと言った。


「……天使だ。」


隼人は、それ以上何も言わなかった。

登場人物紹介

角南すなみ 朱杏しゅあん……1996年1月25日生まれ / 北海道出身 / 階級は陸士長 / 35普連4中隊に所属。2007年に、北海道が侵略された際、祖母・母とともに本州へ逃れる。その際に、父と弟を亡くす。

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ミリタリー SF ファンタジー 自衛隊 戦争
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