表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
外星戦記  作者: 無名の凡夫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/131

第98話 新年度

春、自衛隊員にとって特別な意味を持つ季節。異動、昇任、そして新たな任務の辞令が飛び交うこの日は、隊舎全体が独特の緊張と高揚感に包まれていた。


土井近太郎、角南朱杏の2名が三等陸曹に昇級し、土井は晴れてGASTへ入隊、朱杏はレンジャー試験合格後にGASTへ異動することになる。しかし、GASTは特戦群5中隊の位置づけ。この2人の異動を知る者は関係者のみである。


新年度になりました。段場隼人です。僕は、自候生から自衛官になったので、まだ二等陸士だけど、一般曹候補生として入隊した「兵」は、それぞれ階級が一つあがる。僕が一等陸士になるのは7月になってからだ。


自候生上がりの僕らは、一般曹候補生とは違い、昇進のスピードが遅い。学生時代は、自衛官になることしか考えておらず、その先のキャリアについては考えていなかった。昇任のスピード、その道のりすべてで、僕たち自候生上がりは、大きな差をつけられたことを、この春は嫌というほど突きつけられた。


それでも、グーリエ星人は待ってくれない。新たに入隊した、希望に満ちた新人達――というか、悲壮感が漂っているようにも見えるが…。また、異動で加わった、経験豊かなベテランの隊員達。人の出入りを経て、僕ら第35普通科連隊は組織として再編成され、今日も厳しい訓練を行っている。


訓練の合間、僕は豆小玉三曹に伴われ、連隊長室の前に立っていた。 手には、汗でわずかに湿ったレンジャー志願票と、直近の体力検定結果。基準値ギリギリ、まさに「足切り」の線上にある数字が並んでいる。その差は、数字よりも残酷に、僕の居場所を削っていく。


「失礼します! 第35普通科連隊第2中隊、段場隼人二等陸士。レンジャー訓練の入校請願に参りました!」(隼人)


扉を開けた先、空間連隊長は書類には目もくれず、僕だけを見ていた。その涼やかな眼差しは、僕の心臓の鼓動まで見透かしているようだった。


「段場二士。豆小玉三曹から話は聞いているけれど。……その検定結果で、本気なの?」(空間)


空間連隊長は、僕が差し出した書類に一瞥もくれず、静かに問いかけた。


「今の貴官の数値では、入校初日の選抜試験で脱落するのが目に見えている。それは、貴官の時間を無駄にするだけでなく、貴重な訓練枠を一つ潰すということ。組織としては、より合格の可能性が高い者を送り出すのが筋だと思わない?」(空間)


「……おっしゃる通りです。ですが、僕には時間がないんです。」(隼人)


僕は、震えそうになる拳を握り締め、連隊長から目を逸らさず見つめ返した。


「今のままでは、僕は誰の盾にもなれません。死んでいった仲間たちの背中を追いかけることすらできない。凡庸な僕が、この戦場で力を得るには、地獄を潜り抜けるしかないんです!」(隼人)


空間連隊長は無表情のまま、椅子に深く背を預けた。


「……個人的な復讐や焦りは、真っ先に命を落とす原因になるわよ。教官たちは貴官のようなタイプを一番に、精神から叩き潰しにかかる。それでも行くというの?」(空間)


「……はい! 叩き潰されても、それでも戦う覚悟です!」(隼人)


沈黙が部屋を支配した。横に立つ豆小玉三曹が、一瞬だけ僕を見たような気がした。空間連隊長はゆっくりと立ち上がり、窓の外で訓練に励む隊員たちの姿を見下ろした。


「……現在、わが連隊の戦力回復は急務。けれど、必要なのは ”ただの兵隊” じゃない。理不尽な絶望を前にしても、決して折れない “芯” を持つ者よ。」(空間)


彼女は机に戻ると、万年筆を手に取り、僕の志願票に鋭い筆致でサインを書き込んだ。


「承認するわ。ただし、条件が2つ。」(空間)


「はい!」(隼人)


「1つ。入校日までに全ての検定項目を特級まで引き上げること。1つでも欠ければ、その場で承認は取り消す。特級よ。 “届かせる”んじゃない“ 叩き込む”の。……そして2つ目。」(空間)


空間連隊長は、今日初めて、少しだけ悲しげな、けれど慈愛に満ちた笑みを浮かべた。


「……絶対に、生きて帰ってきなさい。それが、指揮官としての私の命令よ。」(空間)


「無駄死にだけは、許さないわよ。」(空間)


「……了解!!」(隼人)


部屋を出た後、僕は膝の震えを止めることができなかった。 承認は得た。けれど、それは地獄の門の鍵をようやく手に入れたに過ぎない。


「……聞いたか? 特級だぞ、段場。」(豆小玉)


豆小玉三曹が、呆れたように言った。


「明日からは寝る暇もないと思え。……いいな?」(豆小玉)


「了解です!!」(隼人)


僕の、本当の意味での「戦い」が、ここから始まる。 同期たちが次々と高みへ昇っていく中で、僕は僕の泥臭いやり方で、運命を切り拓くと決めたんだ。


僕は、レンジャー試験を受けることが決まったが、豆小玉三曹に言われた「レンジャー訓練の特級基準」をまだクリア出来ていない。それでも、連隊長からの許可を得たので、入校日までにクリアしたいところだ。


レンジャー試験は5月に行われる。第8次首都圏奪還作戦がいつになるのかは分からないが、レンジャーになるその先には、首都圏の奪還、九州の奪還がある。今の僕がレンジャーになるのは現実的に不可能かもしれない。起こす。奇跡じゃなく、結果で。


もう、逃げる理由は一つも残っていなかった。


登場人物紹介

段場だんば 隼人はやと……本編の主人公。彼はレンジャーになれるのか?

空間そらま 瑠衣るい……35普連の新しい連隊長

豆小玉まめこだま 芙琉ぶりゅう……隼人直属の上官

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ