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彼岸よ、ララバイ!  作者: 湯ノ村
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盤上の踊り子

 一時とはいえ、既存のタイトルをほしいままにし、将棋界を牛耳った男として伝説に名を残す、夭折の天才棋士が居た。異名は、「悪魔に魂を売った男」だ。下卑た週刊誌の巻頭を飾る表題に相応しい、侮辱とも取れる名を冠したきっかけは、研究仲間からの証言からだった。


 まったくの無名だった彼が二十三歳のとある日を境に序・中・終盤、隙のないタイトルホルダー級の棋力を身に付けたと、彼の強さの秘訣を訊かれた際に口を揃えてそう答え、横には彼の口癖を抜粋して並べられた。「ぼくは強くない」、本来なら謙遜の意を唱えた言葉だが、異名を助長した。弟子を取らないことでも有名だった彼には、たった一人だけ弟子がいた。これは、取材を通して親密になった在る記者しか知らない事実である。


 彼が亡くなったあと、その弟子は頭角を現し、成人を迎える前に、三つのタイトルを奪取した。天才棋士の喪失で暗い影を落としていた将棋界を新たに引っ張っていく逸材だった。しかし、二十三歳の若さで唐突に引退を申し出る。連盟の猛烈な反対を受けて尚、引退を取り下げることはなかった。あらゆる噂が立ったが、どれもこれも見当違い甚だしく、あまつさえ人格攻撃に出る者すらいた。私が思うのは、師匠から弟子へ、なんらかの伝達があったとしか言えない。それは指南や、心の在り方を踏襲するような単純なものではなく、もっと薄暗い、まさに彼の異名を借りなければならないような事なのかもしれない。

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