91話「バイト先で」
「怜奈帰ろー」
授業が終わり、美鈴が教室に来た。
「ごめん、今日バイトねん」
「そーなんかー、分かった。頑張って!」
「ありがとう」
私は支度をして、バイト先に向かった。
今日は人が少ないせいか、着くと皆バタバタしていた。
「あ、神崎さん。ごめん、すぐ入れる?」
「大丈夫です。準備してきます」
私はすぐ準備をし、中に入った。
今の時間帯ピーク時ではないはずなのだが、今日は雨のせいか忙しかった。
少し落ち着き、
「ごめんね、まだ時間あったのに入ってもらっちゃって」
「大丈夫ですよ、少し早くついちゃったなって思ってたところだったので」
19時を過ぎた頃、私と10個上の南さんと2人だけになってしまった。
私は南さんが少し苦手だった。
何故なら、南さんはサボり癖がありすぐどこかに行ってしまうのだ。
いつもなら他に1人か2人いるのだが、今日は私と南さんしかいない。ここで抜けられると少し不安になる。
しかし、私の予感は的中。
「ちょっと、ごみ捨て行ってくるね」
「え、でもごみ捨てはあと1時間後ですよ」
「まぁ、いいじゃない。暇だし」
そう言って出ていってしまった。
南さんはごみ捨てと言ってサボりに行く。
長い時は1時間帰ってこない時がある。
私は1人で、前陳や、品出し、揚げ物などの準備をしていた。
全部終わってしまい、暇になっていた頃、仕事を終えたサラリーマンや部活が終わった学生たちが次々とやってきた。
私は、仕事に慣れたものの、まだ1人きりで仕事をしたことがなかったため、とても不安だった。
幸い、レジに行列がつくことはなかったが、コーヒーを入れたり、注文の品を用意したりなどを1人でやりくりするのは大変だった。
そのお客さんの中に常連さんがいた。
「あれ、今日神崎さん1人なの?」
「いえ、南さんがいるんですけど今ゴミ回収で外に」
「そうなの?見かけなかったけど…」
やっぱりサボりか…
「あー、じゃあもしかしたら裏にいるのかもしれないです。」
「そうなんだね、大変だろうけど頑張って」
「はい、ありがとうございます」
流石にお客さんにあの人はサボりです。とは言えなかったため裏にいると言った。勿論嘘ではない。いつも南さんは裏でサボっているからだ。
20時前になり、ようやく落ち着いた。
私は空になった揚げ物コーナーを埋めるため、揚げている時だった。
「お願いします」
と、レジの方から声が聞こえたので、向かうと
「あれ、優大。珍しいね」
「怜奈か、1人?」
「うん、先輩1人サボりで裏にいる。もう大変だったんだよ?」
私は優大に大変だったことを話した。
「うわー、お疲れさんやな。でもようやったな?俺やったら無理やわ。1時間も1人でたくさんの人の対応するの」
「まぁね、でも今日は20時で上がりだし、もうすぐ交代の人くるからそれまで頑張る」
「そうなんか、じゃあ頑張れ」
「うん、ありがとう」
20時になり、代わりの人が来たため、私は裏に行き支度をして出た。
自転車を置いてある所に行くと、
「お疲れ」
「え、なんでおるん?帰ったんじゃなかったん?」
優大が待っていてくれた。
「帰ろうと思ってんけど、20時までもうちょっとやったし暗いから送ってこうかなって思って」
「そうなん?ありがとう」
「これ、さっき買ったし飲んで。寒いやろ」
そう言って優大がくれたのは、温かいココアだった。
「ありがとう、温かい」
私たちは話しながら帰った。
次の日、私は店長に褒められた。
いきなりで驚いたのだが、昨日来てくれた常連さんが、サボっている南さんを見つけ、私が1人で接待していたことを店長に話したらしい。
「常連さんが話してくれなかったら南さんがサボっていたことや、神崎さんが1人で頑張ってたこと知らないままだったよ。ごめんね、ありがとう。南さんにはキツく言っておいたから」
「いえ、1人は大変でしたけど良い体験が出来たと思います」
「本当、神崎さんいい子やわ。じゃあ今日もよろしくね」
私は昨日も今日も褒められ嬉しかった。
昨日以上に今日も頑張ろうと思った。




