体育祭
いよいよ本番。
私達生徒会役員は朝から準備を始めていた。
「この柱どこ置けん?」
「それはー、そのサッカーゴール辺り!」
まずは入場門の設置。大きく、重いため全員で運ぶ。
皆で準備したので意外と早く終わった。
「そしたら開会式前にテントのとこ集合な」
私達はそう言って各教室に戻った。
「怜奈!髪の毛どーする?」
私は梓達のところへ行き、皆で髪の毛をセットしていた。
毎年3年生はヘアセットokで、髪飾りもつけていいことになっている。
「そーだなー、うちはハーフアップのくるりんぱして、そこに髪飾りつけるかな?一応生徒会役員やしそこまで派手目にするのはね笑」
「えー、そうなん?でも似合いそう」
私は自分でいつもセットしているため、ぱぱっとやった。
「怜奈可愛い!いつもと雰囲気違うからモテるよ笑」
「いや、モテても困るよ笑」
「怜奈うちのやって〜」
梓、美鈴、真子のセットは私がやった。
「ありがと!やっぱ怜奈上手」
「ありがと笑」
私達は教室に戻り、朝礼を済ませると運動場へ向かった。
「怜奈どこ行くん?」
「生徒会役員はテントなんです…」
「えー!じゃあ一緒におれんの!?」
「うん、ごめんね。写真撮りにきてね〜」
「絶対来る!」
私はテントに椅子を置き、準備を始める。
基本、体育委員の仕事なのだが、今年は新しい種目がたくさんあるので、ルールをよく分かっている生徒会役員が主に準備することになっていた。
「あら、誰かと思ったら神崎さんやん」
そう声をかけてきたのは副担任の西田先生だった。
「いつもと雰囲気違ったから誰か分からんだわ〜」
「そうですか?」
「うん、より美人さんになるね」
「ありがとうございます」
そう言われるととても嬉しい。
そういえばさっきからいろんな人に見られているような…
「よぉ」
生徒会役員男子がぞろぞろとやってきた。
「先輩今日何か可愛いですね」
「髪型変えたしじゃない?見慣れないんだよ」
「確かに、今日いつもより可愛いな」
中野がそう言うと、優大が何か耳打ちした。
「はいはい、すんません」
そう中野が謝っていた。
開会式を終え、初めに騎馬戦、小綱取りを行う。
どちらの競技も大盛り上がりで、幸いけが人も出なかった。
次に借り物障害物競走だ。
風船を体育祭から持ってきて、それを海斗くんと高木くんに託した。
玉入れ、網潜りのところは体育委員に任せ、借り人の札は、私と優大、中野で担当。
札の回収は和田くんに任せ、スターターは南が行う。
私は待っている間、さっきの耳打ちのことを優大に聞いた。
「ねぇ、さっき開会式始まる前中野に何耳打ちしてたん?」
「あー、あれ?普通にお前のこと可愛いとか言うから、俺より先に言うなって…」
自分が言えなくて他の人に言われたので焼きもちを焼いていたみたいだ。
「そうなんや笑」
「何やって、俺だって可愛いって思っとるし…」
「うん、ありがとう」
そうこう話しているうちに始まった。
1年生、2年生と順調に進み最後に3年生。
私達は3年生のための札を用意していた。
その中の1つに好きな人(気になっている人)が入っている。
まず女子がスタート。男女ともに好きな人カードが入っているため、この中の誰かが引く。
引いたのは彼氏持ちの子。照れながらも彼氏と手を繋いで走る。すると周りから歓声が。
皆次々と笑顔でゴールしていった。
そして最後に男子。
私達は両手に札を持ち、待つ。
この日、風が強かったため置いておくと飛んでいってしまい最終的にこの形になった。
皆次々と札を引いていく。
誰がどの札を取ったかは分からなかった。
すると、その中の1人がこちらに向かってきた。
優大といつも登下校している滝川聖司だ。
「神崎、一緒に走って欲しい」
私はそう言われ、一緒に走り1着でゴールした。
優大達が自分の役目を終え、こちらに走ってきた。
「聖司お題何やったん?」
「内緒」
「そんなこと言わんと教えろまー」
優大がお題の札を取り、開くとすぐに閉じた。
「なんやったん?」
と、中野が聞いても
「いや、普通のお題やった」
「なんやー、好きな人とかやったら面白かったんに」
そう言うと、2人の顔が少し赤くなった気がした。
でも私はそのお題の内容を知っていた。
走っている時、紙がペラっと捲れ、見えたのだ。
『好きな人(気になっている人)』
けど、これは心の内に閉まっておくことにした。
その後の競技も順調に終えて行った。
1番盛りあがったのは先生VS生徒のリレーだった。
皆本気で、終わったあと、皆笑顔だった。
「以上で閉会の挨拶を終わります。この後の片付けは…」
私たちの団は惜しくも2位だったが、楽しかったので良しとした。
皆で片付けをして、最後に大きな入場門が残った。
「これ重いから嫌なんだよなー」
「嫌だけど運ぶよー」
ゆっくり運んでいると急に突風が吹いた。
そのせいで少しバランスを崩し、皆よろけ、その勢いでこちらに倒れてきた。
「あ…」
私が目を瞑ると同時に誰かが私を突き飛ばした。
目を開けるとそれは滝川だった。
私は彼のおかげで下敷きにならずに済んだ。
皆がこちらに駆け寄ってきた。
「大丈夫か!?」
そう言うと手を差し伸べてきた。私はその手を取り立ち上がった。
「うん、大丈夫。ありがとう」
「ちょっとこれはみんなで運ぼう。」
入場門は皆で運ぶことになった。
片付けを終え、私は教室に向かった。
「おー、お疲れ。ってどうした?ズボン汚れとるけど」
「あー、さっき入場門倒れてきちゃって」
「え!?大丈夫やったんか?」
「あ、はい。滝川が突き飛ばして助けてくれたので」
「そうか、無事でよかった」
終礼が終わり、私はチャリ小屋へ向かった。
鍵を挿した時、
「神崎、ちょっと」
と、滝川に声をかけられた。
「あ、さっきはありがとう」
「うん、怪我なかった?」
「お陰様で。ところで何か用あった?」
「あ、うん。ちょっと言いたいことあって」
私は察した。あのことだ、と
「あのさ、俺前から神崎のこと気になってて。けど、優大と付き合っとること知ってて。でも好きってこと神崎に知ってて欲しかったから」
「うん、ありがとう。」
「くそー優大と付き合ってさえなければ告ってんけどな〜。けどもしあいつに泣かされたら言ってや。俺が掻っ攫うから笑」
「うん、分かった笑」
そういうと、滝川は帰って行った。
「聖司と何話しとったん?」
「ん?借り人のお題のこと」
「お前知っとったん?」
「うん、ちらっと見えて」
「それでなんて?」
「付き合って欲しいとは言われんだけど、もし優大に泣かされた時は俺が掻っ攫うから言ってってさ」
「なんか、あいつらしいな。まぁやらんけど」
「ふふ、そっか笑明日も頑張ろうね」
「おぅ」
今年の体育祭はとてもいいものになったと思う。
明日の文化祭も同じように、いや、それ以上に皆に楽しんで貰えたらいいな




