74話「泊まり①」
「終わらない…」
体育祭まであと3日。
今年は土日を挟んでの本番のため時間はあるのだが、皆朝弱くてなかなかすぐに集まれず、焦っていた。
「先生、学校に泊まりがけでやるのってだめなんすか?」
「学校は無理やなー、生徒だけ残らすっていうのは出来んしなー」
優大がそう聞いたものの案の定だめだった。
すると、突然
「あ、俺ん家大丈夫かも」
そう言ったのは海斗くんだった。
「明日、明後日親旅行でおらんから、なんやったら家でどう?」
その提案にみんな乗った。
「行くけど夜には帰るよ?流石にね…?」
私しか女子がいないため男子しかいない家に泊まるのはちょっとだめだなと思った。
「大丈夫っす、先輩には別の部屋ご用意しますんで、そちらの方で寝ていただければ」
私は悩んだ挙句行くことにした。1人でやっていたら皆と意見がバラバラになったり交流ができない。それなら一緒に作業した方がいいと思った。
「分かった、じゃあ明日…って思ったけどうち海斗くんの家知らない笑」
「俺が連れてくからとりあえず俺の家まで来て」
「分かった。」
そう話して今日はお開きとなった。
次の日、私は先生に借りたUSBメモリーと着替え、手土産などを持ち、優大の家へ向かった。
「じゃあ、行くか」
海斗くんの家に着くともう皆揃っていた。
「なんで今日は皆こんな早いの?」
今は午前9時。ボランティア活動などある時はギリギリに着くくらいに来るのに、今日はやけに早い。
「流石に俺らでもやばいって思ったし、神崎しかパソコン使えんから俺らは他のこと全力でやらんなんって思ったから」
「そかそか、じゃあまぁ、とりあえずうちはプログラム表作るね」
「プログラムってどういうの作るん?」
「それは毎年変わらんげんけど、誰がどの競技に出るかとか、開始時刻とか皆が知りたいことをね」
これが1番大変と言っていいと思う。元々出席番号、名前はインプットされているのだが全て数字を手打ちしなければならない。約600人ほどいるので気が遠くなりそうだ…。
「俺らがやったら1週間かかるな」
「いや、それはないw」
「じゃあ、俺らは借り人競争の札と風船作るかー」
「けど、札はちゃんと読める字じゃないとな」
「この中で1番字上手い人〜?」
誰も手を挙げない。私はその行方を見守りつつ自分の仕事にとりかかった。
「神崎…」
「うち?」
南がそうポロッと言うと皆が頷く。
「いや、まぁ書くだけなら全然いいけどさ、こっちが終わったら」
「すまんな、頼んだ。俺らは考えて紙に書いとこ」
「これって何個くらいいるんけ?」
「各クラス男女1人ずつ出て、全クラス合計18クラスやから…36枚分」
「めっちゃ多いやん」
私は大変だなーと思いながら
「考えるのは頼んだよ?うちは流石にきついよ?何個かなら出せるけどそれ以外は頑張って」
そう打ちながら喋っていると
「よく、打ちながら喋れますね、俺絶対無理っすよw」
「そうやな、お前の場合喋っとる言葉打ちそうやな」
高木くんと和田くんが話していることが面白くて、
「そうならんように気をつけるねw」
そう言うと
「いや、俺さすがにそんなドジしませんよ!」
と、本気で返されてしまった。
それから何時間経っただろう?
「怜奈、ちょっと休憩せんか?目疲れたやろ」
そう言って優大が紅茶を持ってきてくれた。
「ありがと、切り良い所までやったらそっち行くし向こうで待ってて」
私はキリのいいとこまでやると、リビングへ向かった。
「お疲れ、どうけ?」
「あと少しかな?もう30分くらいしたら終わると思うよ」
「はや!まだ13時やよ?もうちょっとゆっくりしてもいいんやぞ?」
私は4時間もパソコンと向き合っていたみたいだ。でもそれなら、と
「いや、あとちょっとやし終わらせてくるわ。その後そっち手伝うし、うちが戻ってくるまで休憩してて」
私はそう言うとまたパソコンと向き合い始めた。
そして30分後、
「出来たよ〜」
「本当に30分で終わらせてきちゃったよ」
「お疲れ、ありがとな。次の作業入る前に昼飯にしよーぜ」
「海斗チャーハン作ってくれたから食べよ?」
海斗くんの作るチャーハンが美味しいと前から聞いていたため、とても楽しみだった。
「あ、美味しい」
「あざす」
「本当や、お店出せるぞ」
「出せんわいね」
お昼ご飯を食べ終わり、また作業に入る。
「どこまでいったん?」
「あと借り人のやつは3つ出したら終わりで、風船はまだ全然。」
私は借り人の案を見せてもらい、
「クラスの会長、裸足の人、好きな人でいいんじゃない?」
「あー、いいね。っていうか出すの早すぎw」
「パッと思いついただけだよ。裸足の人は1人か2人絶対おるしね」
「よし、じゃあ後は風船やな。」
「でもちょっと疲れた」
「明日やっても多分終わると思うよ?体育祭の挨拶とか考えんなん人は頑張らんなんけど」
「大丈夫、終わる」
今日はここまでにし、各々やりたいことを始めた。




