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初恋  作者: rein
第3章〜高校3年生〜
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53話「総体-1日目」

いよいよ最後の大会。


今日は1日目。集合場所は会場。


私は支度をして会場へ向かった。


「おはよう」


行くと場所取りのため後輩達が前の方で陣取っていてその後ろに美鈴達がいた。


「おはよう、寒いね」


6月と言っても朝なので冷える。私にとっては少し好都合ではあった。


美穂には話したが、美鈴たちにはまだ話していない。

どう切り出せばいいか分からないのだ。


「そういえば、怜奈どうやったん?脚」


少しギグっとなった。だけど隠しきれるわけもなく、言うなら今だと思い告白した。


「両足肉離れだって〜困っちゃうよね〜」


「困っちゃうよね〜って…大丈夫なん?」


明るく言って心配かけないようにするつもりが、逆に心配かけてしまった。


「大丈夫!」


「困った時は言ってよね!」


「ありがと!!」



扉が開き一斉に駆けていく。そして基礎打ちタイムが始まった。私は試合前に痛めないように美穂に場所取りを任せた。


基礎打ちも無事終わり後は試合番号がコールされるまで待つだけ。私は今日は団体戦のみだ。


団体メンバーには朝肉離れのことをきちんと話した。だけどそれ以外の人にはまだ言っていない。


皆が知るのは長ズボンを脱いだ時。つまりシングルスで戦う時だ。


『コールします。試合番号5。寺崎高校対、長嶌高校の試合を第6,7コートで行います。選手は第6コートにお集まり下さい』


「よし!行こう!」


「怜奈、スプレーいる?」


真子が心配して聞いてくれた。


「ありがと、一応持っていく!」


私は準備をしてコートへ向かった。


「いよいよだね、今まで頑張ってきた分精一杯頑張ろ!とりあえず一勝!!」


桃華が一言言い、円陣を組む。


「絶対勝つぞー!」


『おー!』


ベタではあるがこれが一番気合が入る。


男子の試合はまだなので上で応援してくれる。


第1ダブルスは桃華と茜。


「2人ともファイト!」


私は2人の背中を叩きコートへ送る。

これが私達のやり方だ。


第1ダブルスは圧勝だった。


続く第2ダブルスは、美穂と後輩の夏美ちゃん。


シングルスは誰を出すかと決める時試合を行い勝ち抜いたのが私だったため自動的にこの2人がダブルスを組み出ることになったのだ。


「行ってこい!」


同様に2人の背中を叩き送り出す。


上からは皆の応援が聞こえる。


少し苦戦はしていたが勝つことが出来た。


後は私が勝てば1回戦突破決定。


「怜奈大丈夫?」


「大丈夫だよ!ただ上に帰ったら怒られそうだけどね笑」


「いつもの怜奈らしいね!行ってこい!」


美穂に送り出される。


コートに立つと上からはざわめきが聞こえる。


「神崎のあの脚なんや!?」


「怜奈どうしたん!?」


でもその対処は男子は優大が。女子は梓が皆に説明をしてくれた。なのですぐにざわめきは収まった。


運良く対戦相手は高校から始めたようだったのでそこまで動かず、勝つことが出来た。


「怜奈、お疲れ!」


「脚大丈夫?」


「ありがと!全然動かんかったから問題なしだよ!」


私たちが休憩している間、男子の試合が始まった。


男子も成長し3-2だったが勝つことが出来た。


「一勝おめでと」


帰ってきた男子達にそう言うと、


「神崎、肉離れのこと聞いた。なんで昨日言ってくれんでんて」


と、中野が言ってきた。すると


『コールします。試合番号13番寺崎高校対、白峰高校の試合を第8,9コートで行います。選手は第8コートにお集まり下さい』


「呼ばれちゃった〜行ってきまーす」


「タイミングのいいコールやな、全く」


2回戦目は1回戦目とは異なり勝ち抜いた高校だ。油断はできない。


オーダーはダブルスの順番を変え、シングルスの順番は変えずいくことにした。


初めに美穂と夏美ちゃん、次に桃華と茜だ。


美穂達は惜しくも負けてしまった。


「ごめん、負けちゃった」


「まだ試合は終わってないよ!応援頑張ろ!!」


私は2人を励ます。2人は桃華達の背中を押した。


桃華達は勝つことが出来た。


私の後に構えているのは、桃華と茜。もし私が負けたとしても後には2人がいる。だけど絶対に任せる気持ちではやらない。


「無理せんといてね!」


「最後くらい無理させてよ!大丈夫だから」


どこにこの自信があったのかは分からない。

だけど行ける気がした。


自信通り勝つことが出来た。


「大丈夫だったね」


「でしょ?脚も問題なし!後は桃華に任せた!」


桃華の相手はキャプテンだったが無事勝つことが出来た。


私達の今の順位は3位。次勝てば2位へ上がることが出来る。


だけどそんなにうまくは行かない。次の対戦相手は優勝候補の韓陽高校。


「勿論勝てれば最高やけど、この高校からは学ぶことがたくさんあると思う。たくさん学んで来い!」


そう先生に言われた。


次の試合はすぐなので下で待機。私たちが試合をしていた時男子も後ろのコートで試合をしていた。


だけど負けてしまったようだ。


『コールします…』


私達の高校が呼ばれた。 コートへ行き相手選手と握手をし、そして皆で円陣を組む。


「負けること考えんと、勝つこと考えよ!そんでたくさん学んでこよ!!」


「勿論!」


「寺崎ファイト!」


『おー!』


第1ダブルスは桃華と茜。相手はやはり強く押されている。そしてあっという間に1セットを取られてしまった。


私は見ていて思ったことを2人に伝える。アドバイスすることは昔から得意で、それでまた皆真剣に聞いてくれる。


2人は頑張ったが負けてしまった。


隣のコートでは美穂達が頑張っている。


次は私の番。ストレッチは入念にしたのできっと大丈夫。


相手は私と同じ3年生。1点でも多くとる。これが私の目標。


「行ってこい!」


そう言われ送り出された。


「よろしくお願いします」


相手と握手を交わし、試合を始める。


最初は相手も慣れておらずミスが多かった。だけど慣れてくるうちにミスが減り点差はどんどん広がっていく。


1セット目は21-10で負けてしまった。


「次が勝負所やね。落ち着いて冷静に」


茜にそう言われコートへ入った。


コートへ立つと向こう側に美穂達の姿が見える。負けてしまったようだ。


自分が負ければそこで負け。


やれるだけのことはやろう。そう思った。


いつもなら選手が移動すると仲間も移動するのだが今大会は移動は禁止なので動くことが出来ない。だから今の状況はとても辛いものだった。


必死にシャトルに食らいつくが11-6と先に半分取られてしまった。後ろから聞こえるのは対戦相手へのエール。圧迫感が半端なかった。


私は落ち着くため深呼吸しながら上を向いた。その時初めて上にいる仲間の姿を見た。男女共に全員集合。大きな声で頑張れ!って声をかけてくれている。


今まで一緒に頑張ってきたチームメイトの想いも背負っているんだ。そう思った。


「怜奈、人が変わったみたい。生き生きしてる」


「確かに。なんでだろ?」


「あいつさっき初めてこっち見たし、多分やけど俺らの声援があいつに届いたんじゃないか?」


私は押しに押しまくり16-14までに迫る。ここからが本当の戦いだ。なのに脚が悲鳴をあげ始めている。


だけどあきらめるわけにはいかない。


私は粘りに粘った。しかし…


「ありがとうございました」


21-18で負けてしまった。


私は整列するため向こうのコートへ向かう。


だけどその途中脚に力が入らなくなり崩れ落ちてしまった。


「怜奈!」


「大丈夫ですか?」


手を差し伸べてくれたのは戦った子だった。


「ありがとうございます」


私は迎えに来てくれた美穂と桃華の手を借り整列する。


「優勝してくださいね!」


私たちは相手に夢を託した。


上へもどると皆が駆けてくる。


「怜奈!」


梓が泣きながら走ってきた。


「崩れ落ちた時めっちゃ心配やったんやよ」


「さっきから泣きっぱなしねん」


そう美鈴が説明してくれた


「ごめんね、大丈夫だよ。もう歩けるから」


「個人戦出れるんか?」


「出るよ、帰りに接骨院寄ってもうちょいきつめに巻いてもらう。最後くらい無理させて」


優大にそう言った。



団体戦の結果、優勝は韓陽高校。流石だ。


今日個人戦がある人達の応援を済まし、私たちは明日に向けて準備をするため、帰る。



接骨院へ寄り帰宅した後、優大にメールを送った。


『明日出れるように手当して貰った!明日も応援よろしくね!うちも応援に駆けつけるから!!』


『ぶっ壊さんといてくれよ?今日俺も少し怖かった。もし今日で最後やったらって。絶対後悔するし、責め続けるやろうなって思った。』


『心配かけてごめんね、でも大丈夫だよ。ちゃんと歩けるし!』


『そういう問題じゃ…でもとにかく元気でよかった。明日も頑張ろうな』


『うん!』


明日はダブルス。必ず一勝する!

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