32話「お誘い」
次の日から中野はとてもしつこかった。
今日優大こういうこと言ってたよ。
こんなことしてたよ。と報告してくる。
そしてバド部の男子で遊びに行った時の写真や動画などを送ってくるようになった。
『盗撮しすぎじゃありません?』
『楽しくなってきた笑』
写真を送ってもらって嫌な気はしない。
楽しそうな顔を見るとこっちまで楽しくなるからだ。だけど、最近遊んでいないせいか悲しい気持ちにもなった。
『優大と遊ばんの?』
『そんなに時間ないんやもん』
『俺ら結構遊んどるよ?』
『休日は、あんまり。優大親にまだ言ってないみたいやし休日に行くとバレちゃうし』
『別にバレてもいいと思うけどな』
『それは優大に言ってください』
私も優大にこの間遊んだ時に親に言わないのか聞いてみたのだ。だけど
「親面倒いし嫌や」
そう断られてしまった。
中野と話していると誰かからLI〇Eがきた。
誰だろう?そう思ってトークを見てみると優大だった
『明日俺んち来る?』
突然すぎてびっくりした。カレンダーを見ると明日は平日だ。平日なのに…そう思っていると
『明日創立記念日で休みやん?』
そうだ、明日は高校の創立記念日だ。
私はそのことをすっかり忘れていた。
『忘れてた〜。行ってもいいけど、どうしたん?』
『どうしたんって?』
『いや、優大から誘ってくること滅多にないから』
私から誘うことはあっても優大から誘ってくることは全くなかった。
『まぁ、いいじゃないですか』
『まぁ、いいけど。1時に行けばいい?』
『おう』
私は疑いながら会話をしていたが久しぶりに会えることが嬉しくてたまらなかった。
早く明日にならないかな。そう思っていた。
次の日私は気持ちのいい朝を迎えた。
こんなに気持ちのいい朝を迎えたのはいつぶりだろう。優大と遊ぶ約束をしていなければ二度寝していたところだ。
「今日1時から遊びに行ってくるね」
「分かったよ。あんまり遅くならないでね」
「はーい」
私はお母さんと会話を終えると、服選びに取りかかった。
「もーどうしよー!」
私は1人で叫んでいた。
ただ優大の家に行くだけなのにこんなに服を選ぶのに時間がかかるとは…
私は1番お気に入りの服に決めた。
その後は全く落ち着かなくて、誰かが家にくるわけではないのに、隅々まで自分の部屋を掃除し始めた。
そうしているうちに時間がすぎ、1時前になったので、支度をして家を出た。
ピンポーン
インターホンは何回も押しているけど、この時間が1番苦手だ。相手が出てくる時間はとても緊張する。
「よお。上がって」
「お邪魔します」
私は家に入り優大の部屋に向かった。
部屋に到着すると
「それで、どうしたの?」
「お前怖いの苦手やったっけ?」
いきなりそう聞かれた。
「そんなに好きじゃないかな?」
「よし、鍛えてやろう」
そう言うとスマホをいじりだした。
「今から1時間これを観てもらう」
そう言って優大は再生ボタンを押した。
ホラーのアニメだった。
「本当に怖いの無理なんだけど」
「まぁ、そう言わずに。俺が傍にいるから」
その言葉に私はドキッとした。が、ここで言われても…そう思った。
その1時間私にとっては地獄の時間だった。
突然出てくる女の子、殺されてしまう友人。
怖いというよりグロテスクなアニメだった。
「お疲れ様でし…え?どうしたん?」
「え?何が?」
私はなぜどうしたのか聞かれているのか分からなかった。
「何で泣いとん?そんなに怖かった?」
私は泣いていることに自覚がなかった。
「あれ、なんでだろ。怖かったんかな?緊張が解けただけかも」
「悪い悪い」
そう言いながら抱きしめてきた。
顔が火照るのが分かった。
「落ち着いた?」
「うん」
「実はさ、昨日これ観ようと思って少し観てたんだわ。やけどあまりにも怖くてさ。誰か道連れにしてやろ〜って思って。そしたらお前の顔が浮かんでさ」
「そうだったんだ。可愛いとこあるんだね」
私は笑いながら頭を撫でた。
「やめなさい」
そう言いながら私をベッドに押し倒した。
照れ隠し?そう思った。
優大はキョロキョロしていた。
「どこ見とんw」
「いや〜お前胸ないな〜って思って」
「ちゃんとあるし!」
私は胸が小さいことを気にしていたのでその言葉に少し傷ついた。
「でも俺は小さい方が好きやけどな」
そう言ってくれたので許すことにした。
その後はたくさんのことを話した。
そしてたくさんキスをした。
怖いと言っていた割には積極的だった。
私はこの時優大を好きになってよかったと
改めて実感した。




