突然の告白 3
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真っ赤な顔で押し黙ってしまったアルバート様は、すごすごとダイニングに戻った。
茫然とするわたしの前で、セオ様が両手を合わせて「ほんとごめん。あとはよろしく」と言うなり逃げるように二階に戻っていく。
……あの方は何をしに来たのかしら?
喉でも乾いたのかもしれないとコーデリアに確認してもらうように言うと、コーデリアが凄みのある笑みを浮かべて「阿呆は放っておきましょう」と言ったので何も言えなくなった。
そしてわたしは……どうしたらいいのかしら?
ダイニングにアルバート様を一人にはできない。ベッドに入れられたことが不満なのか、さっきから「うーっ」「やーっ」と文句を言っているクリスもいるし。
大きな体を小さくたたむようにして椅子に座っているアルバート様に、わたしは緊張しながら近づいた。
聞き間違いでなければ、セオ様はさっき、「告白」という言葉を使った。
これは、掘り下げて聞いていいものなのだろうか。
わたしはまず、クリスが本格的に怒りだす前にベッドから抱き上げると、先ほど自分が座っていた席に戻った。
……アルバート様の顔、真っ赤だわ。
どうしよう。急に恥ずかしくなってきた。
顔が赤いのは伝染するのか、わたしの顔も火照って来る。
だけど、あの「告白」をわたしに都合のいいように解釈して間違っていた場合は恥ずかしすぎるので、ここから先、どうしていいのかわからない。
そもそもわたし、アルバート様と会ったことないし。ないわよね? ……たぶん。
何度かパーティーに顔を出したことはあるが、わたしはずっと壁際に立っていて、誰とも踊ったことがない。
お兄様もわたしの相手なんてしないし、そもそもわたしがパーティーに顔を出していたのだって、お父様が世間体を気にしたからである。
義妹のダフニーばかりパーティーに参加して実子のわたしがまったく顔を出さないのでは、いらぬ噂が立つからだ。
ダフニーは家の外でもわたしのことを悪く言っていたけれど、わたしが表に出なければ逆に自分がわたしを虐げていると思われると懸念したのかもしれない。
お父様やお兄様がいる前でわざとらしく「あたしが嫌いなのはわかるけれど、たまにはお義姉様も参加しましょうよ」などと悲し気に目を伏せるのだ。
はっきり言って、会場で放置されるだけのパーティーになんて参加したくないが、ダフニーが悲しそうな顔をすれば決まってお兄様が「お前は妹にこんな顔をさせて何とも思わないのか!」と怒り出す。
せめて当時はまだ婚約者だったアーロンがいたら違っただろうが、アーロンを誘えば「華やかな場はあまり好きじゃないんだ」と言って断られるのだ。
今思えば、たぶんわたしと参加したくなかっただけだろう。あの頃からアーロンはダフニーと浮気関係にあったのだ。
余計なことを思い出してしまい、憂鬱な気分になってきた。
わたしは冷めた紅茶に口をつけ、アルバート様を見る。
……だから、アルバート様とは今日が初対面だったはず、だけど。
でも、セオ様の口ぶりでは、まるで今日「告白」が行われるのは最初から決まっていたように聞こえた。
ダイニングに気まずい沈黙が落ちて、クリスが「あぅあぅ」と声を上げる。
クリスも妙な空気だと気づいたのかもしれない。
このまま黙っているわけにもいかず、わたしは意を決して口を開いた。
「「あの」」
と、見事にアルバート様の声と重なる。
タイミングの悪さにわたしは嘆きたくなりながら、「お、お先に」とアルバート様を促した。口を開いたはいいが、何を言っていいのかわからないままだったからだ。別に言いたいことがあったわけではない。
アルバート様は赤い顔のまま。
「その、セオ様がおかしなことを言ってすまない。ええっと……」
「だ、だだだ、大丈夫です! あれはきっと、セオ様の冗談だったんでしょうし……」
「……冗談では、ないのだが」
ぽそりと小声でのつぶやきだったが、わたしの耳にはばっちり届いた。
「え⁉」
と思わず声を裏返して訊き返してしまい、「しまった!」と慌てて口をつぐむ。
この場の空気を何とかしたいのならば聞き流しておくべきだった!
アルバート様の顔はまだ赤かったけれど、その目は、まるで獲物を見つけた猛禽類のように鋭くわたしを見つめて来る。
「……好きだったんだ。君が。ずっと」
その迫力に、わたしは反射的にクリスをぎゅっと抱きしめて、クリスに「あうあーっ(たぶん「苦しい」と言いたいのだと思う)」と文句を言われた。
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