家族ができました 3
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「……子供の夜泣き、怖い」
わたしはぐったりしながら朝を迎えた。
キャスリンが帰るまでご機嫌だったクリスだけど、寝かしつけて二時間でぱちりと目を覚まして、そのあとはギャン泣きだった。
リネットも手伝ってくれて、わたしと二人でクリスをあやして寝かしつけ、でもまた泣いて起きるの繰り返しで……。
リネットと交代で仮眠をとりつつクリスの相手をしていたから、ものすごく寝不足である。
それなのに、わたしと同じだけ夜中起きてクリスの相手をしていたリネットは、わたしが起きる前にキッチンに立ってクリスの離乳食を作っていた。
「慣れない環境だったから仕方がないわ。アシュリーは料理ができる?」
「……そう言えば、やったことがないです」
リネットの隣に立ってみたけれど、料理人がいる家で育ったため、料理をしたことがなかった。
わたし一人なら毎日外食でよくても、クリスがいる以上は離乳食の作り方を覚えなくてはならない。
「リネット、教えてもらってもいいですか?」
「ええ、もちろんよ」
クリスは四度目の夜泣きの後で、二時間前に眠りついて、今は籠の中ですやすやと眠っているらしい。ベッドの上に直接寝かせると転がって落ちるかもしれないためだ。今日の午後、子供用の作付きの小さなベッドを買ってこようと思う。
リネットに離乳食のパン粥の作り方を教えてもらっていると、ぎゃーっという泣き声が聞こえてきた。クリスは泣くときに全力で泣き叫ぶので、あの声が聞こえるとびくりとしてしまう。そのうち慣れるのだろうか。
クリスが寝かされている籠はリネットがダイニングのソファの上に置いていた。
わたしが行くと、クリスが泣きながら這いずって籠から出ようとしていたところだった。
「クリス!」
籠から転がって落ちそうなクリスに慌てて駆け寄ると、クリスを抱え上げる。
抱き上げられたクリスは一瞬きょとんとして、それからまたギャン泣きをはじめた。
……こ、子供怖い。目を離したらダメなやつだわ。
見れば、ソファの横や下に大量のクッションが置かれていたので、籠から脱走したクリスが落ちて怪我をしないようにリネットが置いたのだろうと思われるけれど、クッションがあったとしてもひやりとする。
わたしはできるだけクリスから目を離さないようにしようと決めると、泣きじゃくるクリスを優しくゆすりながらあやす。
昨日の夜泣きのせいで、あやし方も少しは様になったはずなのに、クリスは泣き止まない。
「リネット、おしめですかね?」
「おしめはさっき変えたわよ。たぶんお腹がすいたのね。もうすぐできるわ」
キッチンからリネットののんびりした声がする。
さすが二児の母。赤ん坊がこれだけ泣きじゃくっていても冷静だ。わたしはすでにパニックになりそうなのに。
「ふふふ、新米ママは大変ねえ」
パン粥を運んで来たリネットは、泣きじゃくるクリスを抱えて泣きそうになっているわたしを見て、楽しそうに笑った。
リネットがクリスを見てくれるというので、わたしは彼のためのベッドを探しに家具屋へ向かった。
最初はクリスを連れて買い物に行こうと思ったのだけど、まだおんぶ紐も何も買っていない状態で抱えて行くのは大変だとリネットが言ったのだ。
リネットから子育てに必要な基本のものリストをもらったので、ベッドを購入した後はそれらを買って戻る予定である。
……あ、そう言えば教会にも行かなくちゃ。縁切り状がきちんと処理されているか確認しなくちゃね。
お父様の元にはすでに確認がいっているはずだ。
お父様がきちんと承認してくれたかどうかを確かめておかなくては。
子供用の柵付きベッドを購入して配送手配を頼み、おんぶ紐をはじめとする子育てグッズを買ったあとで、わたしは教会に立ち寄った。
確認すると、お父様はきちんと縁切り状を承認してくれたらしい。
ホッとする反面、これで完全に縁が切れたのだと思うと少しだけ寂しさに似た感情を覚えてしまう。わたしはその感傷を振り払い、リネットとクリスが待っている家に戻った。
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